74 / 240
ボーンネルの開国譚2
二章 第三十六話 破壊の悪魔
しおりを挟む
「へリアルッ!!」
ヘリアルの胸には風が通るほどの大きな穴が開き、大量の血とともに地面に倒れ込んだ。
辛い後悔の念が込められたその瞳にはもう光が差すことはなく、ただ純粋な涙が静かにヘリアルの頬を伝わる。
次の瞬間、ジン達の目の前に翼をはためかせて何者かが地面に着地した。そして冷たく見下すような瞳と嘲笑うかのように口角を上げたその顔は倒れ込んだヘリアルのことをじっと見つめた。
「哀れなものだな、無駄な感情に弄ばれた龍人族のものよ」
直感的に危険を感じ取ったレイはレグルスを構えてその者へ向かって背中から全力で振りかざした。
「ッ—!?」
しかしその者は高速で振りかざされたレグルスを最も簡単に受け止めると、先を掴んで軽々とレイごと遠くに投げ飛ばした。
「レイお姉ちゃんッ!!」
空中を舞ったレイは器用に体を捻って体制を立て直し、レグルスを地面に突き刺しなんとか受け身を取った。
「大丈夫だ。ジン、私の後ろに」
レイはジンの前に立って再びレグルスを握り完全な警戒体制で敵を観察する。
「お前は誰だ」
その者は背中から黒い翼を生やし、鋭い牙を見せてニタリと笑みを浮かべた。
「我が名はイルマーダ、最強たる破壊の悪魔である。ひれ伏すがよい、下等な種族である人の子よ」
「ジンが下等な種族だと? ぬかせ下劣な悪魔が」
「フッ、生意気な人間だ。だが妙だな、予想よりも刈り取れる魂の量が少ないようだ」
その時、再びジンの頭の中に魔力波が伝わってきた。
(ジン様、予想通りこちらにもかなりの量の敵が出現いたしました。どうやら敵幹部の一人が裏でつながっていたようです)
(ありがとう、さすがゼグトスだね。避難は大丈夫?)
(はい、問題ありません。しかし私の作成したジン様専用の特殊防御結界領域を避難に使ってしまいました。
エルムさん達は引き続きここで警護をしております。急ぎ最優先で新たな領域を作成したしますが、少しの間ジン様が危険にさらされてしまいます。どうか未熟な私をお許しくださいませ)
((特殊防御結界領域? 何それ、すごい初耳))
(だ、大丈夫だからエルム達のことを頼むね、気をつけて)
一階ではアイルベルによって操られた兵士たちを鎮静化させた後、すぐに続いて大量の悪魔達が召喚されていた。
悪魔達は最低でもBランクほどの実力を持っており、生き残った百鬼閣の兵士たちも苦戦を強いられていた。
「こりゃあ予想以上だな」
そして同じくクレース達とトキワ達は合流し、無尽蔵に湧いてくる目の前の悪魔達と戦っていた。
しかしそこにいた怪我人などはゼグトスの転移魔法で移動したため、奇跡的に未だ被害はなかったのだ。
「かなりの魔力を溜め込んでたようだ。軽く数万はいるか」
「魔物に乗り移ってる悪魔もイル」
その場には悪魔とともに先程二階三階にいたリザードマンやゴブリンたちが乗り移られたことにより敵対し襲ってきていた。
「悪魔以外は殺さないようにシナイト」
「クソッ、おめえはヘリアルのことも裏切ってたってわけか」
この大量の悪魔を召喚したのは他でもないアイルベルであった。アイルベルはいつの間にか黒いツノを生やし手が四本に増え悪魔の姿に変化していた。その状態でのアイルベルは先程までとの魔力量とは比べ物にならないほどに増加し、激しい闘気を放っていた。
「ようやく気づきましたか。私の主はイルマーダ様だけです。誇り高き悪魔族が下等な種族などの下につくわけないでしょう。まあ騙されるあなた方も相当な愚か者ですがね」
「なんだとッ!」
しかしその言葉を聞いてゼグトスは不敵な笑みを浮かべた。
「本当に騙されていらっしゃるのは一体どちらなのでしょうかね」
その言葉を聞き、アイルベルは若干イラついたような顔でゼグトスを睨んだ。
「····まあ、適当なことを言うだけなら簡単ですが、それでは何も変わりませんよ。負け惜しみはやめなさい。それに悪魔を召喚したのはここだけではありません。他の場所にも大量に送り込みましたから今頃愚か者どもは一掃されているでしょう」
その言葉を聞いてトキワはある人物に魔力波を繋いだ。
(ガルミューラ、聞こえるか? そっちは無事か?)
(ッ!? お、お前かなんだこれは)
(まあ詳しい話は後だ。今そっちに悪魔族の奴らが向かってるか?)
(ああ、今は他の集落にいるのだが凶暴化した魔物が攻め込んできた。悪魔が取り憑いているということか)
(そういうことだ、頼むぜ。気をつけてくれよ)
(······了解した)
「お姉ちゃん、どうしたの? 嬉しそうだけど」
「····何も無い。どうやらこいつらには悪魔族が取り憑いているようだ。······ん? 誰だアイツは」
するとガルミューラ達のいる元へと誰かが飛んできた。
「やっぱりこうなったか」
その人物はガルミューラ達の目の前に降り立ち辺りを見渡した。
「安心していいよ。今はもう、僕は君たちの味方さ」
数百年ぶりに鬼の社から出たベインは警戒するヒュード族の目の前に姿を現したのだ。
ヘリアルの胸には風が通るほどの大きな穴が開き、大量の血とともに地面に倒れ込んだ。
辛い後悔の念が込められたその瞳にはもう光が差すことはなく、ただ純粋な涙が静かにヘリアルの頬を伝わる。
次の瞬間、ジン達の目の前に翼をはためかせて何者かが地面に着地した。そして冷たく見下すような瞳と嘲笑うかのように口角を上げたその顔は倒れ込んだヘリアルのことをじっと見つめた。
「哀れなものだな、無駄な感情に弄ばれた龍人族のものよ」
直感的に危険を感じ取ったレイはレグルスを構えてその者へ向かって背中から全力で振りかざした。
「ッ—!?」
しかしその者は高速で振りかざされたレグルスを最も簡単に受け止めると、先を掴んで軽々とレイごと遠くに投げ飛ばした。
「レイお姉ちゃんッ!!」
空中を舞ったレイは器用に体を捻って体制を立て直し、レグルスを地面に突き刺しなんとか受け身を取った。
「大丈夫だ。ジン、私の後ろに」
レイはジンの前に立って再びレグルスを握り完全な警戒体制で敵を観察する。
「お前は誰だ」
その者は背中から黒い翼を生やし、鋭い牙を見せてニタリと笑みを浮かべた。
「我が名はイルマーダ、最強たる破壊の悪魔である。ひれ伏すがよい、下等な種族である人の子よ」
「ジンが下等な種族だと? ぬかせ下劣な悪魔が」
「フッ、生意気な人間だ。だが妙だな、予想よりも刈り取れる魂の量が少ないようだ」
その時、再びジンの頭の中に魔力波が伝わってきた。
(ジン様、予想通りこちらにもかなりの量の敵が出現いたしました。どうやら敵幹部の一人が裏でつながっていたようです)
(ありがとう、さすがゼグトスだね。避難は大丈夫?)
(はい、問題ありません。しかし私の作成したジン様専用の特殊防御結界領域を避難に使ってしまいました。
エルムさん達は引き続きここで警護をしております。急ぎ最優先で新たな領域を作成したしますが、少しの間ジン様が危険にさらされてしまいます。どうか未熟な私をお許しくださいませ)
((特殊防御結界領域? 何それ、すごい初耳))
(だ、大丈夫だからエルム達のことを頼むね、気をつけて)
一階ではアイルベルによって操られた兵士たちを鎮静化させた後、すぐに続いて大量の悪魔達が召喚されていた。
悪魔達は最低でもBランクほどの実力を持っており、生き残った百鬼閣の兵士たちも苦戦を強いられていた。
「こりゃあ予想以上だな」
そして同じくクレース達とトキワ達は合流し、無尽蔵に湧いてくる目の前の悪魔達と戦っていた。
しかしそこにいた怪我人などはゼグトスの転移魔法で移動したため、奇跡的に未だ被害はなかったのだ。
「かなりの魔力を溜め込んでたようだ。軽く数万はいるか」
「魔物に乗り移ってる悪魔もイル」
その場には悪魔とともに先程二階三階にいたリザードマンやゴブリンたちが乗り移られたことにより敵対し襲ってきていた。
「悪魔以外は殺さないようにシナイト」
「クソッ、おめえはヘリアルのことも裏切ってたってわけか」
この大量の悪魔を召喚したのは他でもないアイルベルであった。アイルベルはいつの間にか黒いツノを生やし手が四本に増え悪魔の姿に変化していた。その状態でのアイルベルは先程までとの魔力量とは比べ物にならないほどに増加し、激しい闘気を放っていた。
「ようやく気づきましたか。私の主はイルマーダ様だけです。誇り高き悪魔族が下等な種族などの下につくわけないでしょう。まあ騙されるあなた方も相当な愚か者ですがね」
「なんだとッ!」
しかしその言葉を聞いてゼグトスは不敵な笑みを浮かべた。
「本当に騙されていらっしゃるのは一体どちらなのでしょうかね」
その言葉を聞き、アイルベルは若干イラついたような顔でゼグトスを睨んだ。
「····まあ、適当なことを言うだけなら簡単ですが、それでは何も変わりませんよ。負け惜しみはやめなさい。それに悪魔を召喚したのはここだけではありません。他の場所にも大量に送り込みましたから今頃愚か者どもは一掃されているでしょう」
その言葉を聞いてトキワはある人物に魔力波を繋いだ。
(ガルミューラ、聞こえるか? そっちは無事か?)
(ッ!? お、お前かなんだこれは)
(まあ詳しい話は後だ。今そっちに悪魔族の奴らが向かってるか?)
(ああ、今は他の集落にいるのだが凶暴化した魔物が攻め込んできた。悪魔が取り憑いているということか)
(そういうことだ、頼むぜ。気をつけてくれよ)
(······了解した)
「お姉ちゃん、どうしたの? 嬉しそうだけど」
「····何も無い。どうやらこいつらには悪魔族が取り憑いているようだ。······ん? 誰だアイツは」
するとガルミューラ達のいる元へと誰かが飛んできた。
「やっぱりこうなったか」
その人物はガルミューラ達の目の前に降り立ち辺りを見渡した。
「安心していいよ。今はもう、僕は君たちの味方さ」
数百年ぶりに鬼の社から出たベインは警戒するヒュード族の目の前に姿を現したのだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います
こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!===
ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。
でも別に最強なんて目指さない。
それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。
フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。
これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。
チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。
交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。
そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。
その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。
だが、それが不幸の始まりだった。
世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。
彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。
さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。
金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。
面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。
本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる