ボーンネル 〜辺境からの英雄譚〜

ふーみ

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ボーンネルの開国譚3

三章 第三話 三つの決まりごと

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(あれ、何だか腕が痺れて······上に誰か乗ってる? それに、何だかいい匂いがする)

目を瞑りながらお腹の上に乗っている何かを触るともっちりとした優しい肌の感触が手に伝わってきた。

「えへへ、くすぐったいよジン。でももっとやってぇ」

ジンにほっぺたを触られ気持ちよさそうにしながらパールはゆっくりと目を覚ました。

(ぷにぷにしてて気持ちいい)

その気持ちよさにしばらくぷにぷにしていると顔のすぐ近くまでパールの笑顔が近づいてきた。

「ジン、おはよう。だーいすき」

「おはようパール」

パールはジンのほっぺたにチュッとキスをすると満足げな笑顔で再び胸に顔を埋めて目を瞑った。

(クレースが腕に抱きついてたのか)

ジンの右腕を抱き枕のようにしてクレースは幸せそうな顔で眠っていた。

(それにしても、昨日はいつ家に戻ったんだろ。確か花火が上がってレイと一緒にいてそれで閻魁が変な踊りをしてて、それでその後は······まあいいや。とりあえず起きないと······)

するとそのタイミングで隣で眠っていたレイとクレースが目を覚ました。

「ジンおはよう」

「すまないジン、腕が痺れたか?」

「おはよう。うんうん、もう大丈夫起きよっか、ガルおいで」

顔を洗って支度をすると一度外に出てみた。外には飲み疲れてそのまま眠ってしまった傭兵たちやヒュード族がその場にいたが辺りはゴミも散らかっておらず綺麗な状態だった。

(あれ、もう片付けは終わってる。ボルがやってくれたのかな、私多分何もしてないや)

すると隣にレイが来て何かを思い出したように顔を赤らめた。

「お酒に弱い一面があるなんてな、可愛かったぞジン」

「えっ! 私昨日はアップルジュースしか······」

「いや、途中で私のお酒と入れ替わってしまってな、すまない」

「そうだったんだ、だから何も覚えて······その私変なことしてない?」

「大丈夫だ。クレースが抱きかかえながら湯船に浸かっていたのだが、気持ちよさそうな顔でそのままお風呂で眠っていたぞ」

「そ、そうだったんだ。ごめんね迷惑かけちゃって」

「いいや、寧ろ逆だ」

時間が経つにつれて次第に皆が起きてきた。

「そういえばジン、一度総合室で改めて顔合わせをしておくか。このままだと何だか締まりがないからな」

「わかった、そうするね」

そしてその後、集会所にはエルフや剛人族の代表に加えて傭兵集団を代表してバンブルとナリーゼという名前の傭兵二人が、ヒュード族を代表してガルミューラが、そしてギルバルドが呼ばれ話をすることにした。

「昨日はごめんなさい、私後片付けもしないで先に帰っちゃったみたいで」

「大丈夫ダヨ。楽しかったまたヤロウ」

「それでボルさんの主様、今日はどのようなご用件で?」

ナリーゼは腰を低くしてそう聞いた。

「ああ、普通にジンでいいよ。昨日は宴の場だったけど改めて挨拶しておこうかなって。改めて、私はジン。これからよろしくね。その、気軽に接してくれていいからね。それに無理に私のいうことを聞く必要もないしある程度のルールを守ってくれたら大丈夫だからみんなで楽しく暮らそ」

「いいえジン様、俺たち傭兵はボルさんだけでなく貴方様にも服従を誓ったのです、一度はドン底だった俺たちに居場所を与えてくれて本当に感謝します。ぜひなんなりとご命令ください」

そう言ってバンブルとナリーゼは深々と頭を下げた。

「ああ、我らヒュード族もそのつもりだ。これからよろしく頼む、我が主よ」

「俺もその、この国の防衛に命を懸けるつもりだ。それと機械兵の更なる進化を、必ず役に立ってみせる」

(ま、まあいいか)

「それとここで守って欲しいルールは大きく三つ。一つは絶対に仲間に手を出さない、それと差別もしないこと。二つ目は悩み事を一人で抱えずに仲間に相談すること、それとみんな頑張って働いてくれてるけど無理はしないこと、つまり自分を大事にすること。この三つだけはきちんと守って欲しい」

その言葉を聞いて皆はうんうんと大きく頷いた。

「じゃあ取り敢えずこの後しばらくは建設と農作業を中心にやってもらおうかな、結構食料が足りないと思うからみんな頑張ろうね。私からは以上だよ」

「では、建設はボルとエルダンを中心に農作業はインフォルとエルフたちを中心に頼む」

「「了解」」

そして引き続き皆は作業に取り掛かるため外に出ていった。

「あとは······」

「龍人族と骸族のニ種族をどうするかだな」

「そうだな、勝手に王を名乗っても暴動が起きるやもしれん。無視するわけにはいかんな」

「あっ、そういえば百鬼閣に骸族の人がいなかった? もしかしたらいい情報がもらえるかもしれない」

「クシャルドか、確かに骸族として長く生きるあいつならば何か知ってるかもしれないな。だが····あれからあいつがどうしているのかは分からない」

「その人ならわたしがケガをなおしてたときにマーキングしたよ」

「おっ、やるなパール。それでヤツは今どこにいる?」

「えっとね、ちょっと待って······」

目を閉じて集中するパールはクシャルドの気配を感じ取ったがすぐに首を傾げて不思議そうな顔をした。

「どうしたのパール?」

「すぐ近くにいる」

するとそこにコンコンッとドアがノックされる音が聞こえた。

「まさか······」

「その問題、この私にお任せください」

クシャルドは話を聞いていたようで自信満々の顔とともに部屋へと入ってきた。

「お前、いつの間にここに来てたんだ」

「敵である私たちを見捨てることなく、救ってくださった貴方様方のことを私を忘れることができませんでした。どうか身勝手な私をお許しくださいませ。幸いここボーンネルにいる骸族のものは私の言うことならば何でも聞きます故、全てこの私にお任せくださいませ。その代わり······」

「その代わり?」

クシャルドは大きく息を吸うと次の瞬間、頭蓋骨が粉々になりそうな勢いで額を地面に叩きつけた。

「私を、貴方様の配下に加えて頂きたいッ!!」

骨にヒビが入ったような音とともにクシャルドは額を地面に擦り付け百点満点の土下座をしてみせた。そこにはすでに誇りというものなどなく、クシャルドはただジンの声を待っていた。

「そんなしなくても大丈夫。助かるよ、よろしくねクシャルド」

それを聞いてクシャルドはパアッと顔を輝かせた。

「ありがたき幸せ!」

「パールがやったんだね、えらいえらい」

「えへへぇ」

すると再びドアが開き何かを手にもつボルが入ってきた。

「どうしたボル。なんだそれは」

「ジン宛に手紙がキテル。どれも関わったことのない国ばっかりカラ。ちょっと怪しいかも、でも毒は塗ってナカッタヨ」

「えっ、私何かしたっけ」

不思議に思いつつもその大量の手紙を開けてみることにした。
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