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中央教会編
四章 第三話 戦力増強
しおりを挟む中央教会の戦力は剣帝だけではない。アルベリオン一族やスタンダート一族出身の騎士を中心として中央教会では騎士団が構成されている。その中でも剣帝直々にその実力を認められた八人は「八雲朱傘やぐもしゅがさ」と呼ばれ、騎士団の中でもずば抜けた実力を持っている。その八人には序列がつけられており、序列八位と序列一位の間ではかなりの差があると言われている。
剣帝直々に任命されたということもあり、司聖教よりも位は低いものの発言力としては同等であり、中でも序列一位のものは司聖教も命令することができない立場にある。
「知ってるか、ミルファ? ロンダートの野郎、小国でボコボコにされて帰ってきたらしいぜ。流石のスタンダート一族様だな」
「黙りなさいバルバダ。アイツはスタンダートの恥晒しだ。一緒にするな」
そう話すのは序列八位のバルバダというものと序列六位のミルファというものだった。バルバダはアルベリオン出身であり、ミルファはスタンダート出身なのだ。
「剣帝様は気にしてねえみたいだが、どうも司聖教の奴らが裏でコソコソやっているみたいだぜ」
「私たちは言われたことに従えばいい。ロンダートの奴が恥をかこうが関係ないわ」
「まあそうだな。司聖教の奴らの命令に従うのは癪だが、戦争は好きだぜ。最近暇だったからな」
「物騒なことは言わないでおきなさい。私たちはあくまでも民を守る騎士なのよ」
「分かったよ」
すると慌てた様子で一人の騎士がバルバダたちの元まで近づいてきた。
「バルバダ様、ミルファ様、外部に凶暴化した魔物が多数出現いたしました! 騎士が対応に向かいましたが苦戦しております! キャレル様率いる騎士団が向かいましたが厳しい模様です。お力をお貸しください!」
「ったく、俺より一つ上のくせにそこら辺の魔物に手こずってんじゃねえよ」
「私も行くわ」
(よいよい、実に順調だ)
外へ向かう二人の背には不敵な笑みを浮かべる姿があった。その人物たちは二人が出ていくのを確認するとある場所へと向かっていった。
「ボルさん、俺たちのことを鍛えてくれるなんて本当に感謝するぜ。それで俺たちはここで何をやればいいんだ?」
ボルは傭兵たちを連れて龍の里近くの比較的ランクの高い凶暴な魔物が多くいる場所へときていた。
しかし傭兵たちは全員でおよそ五十人ほどおり、その中にはてだれの者も多くAランクほどの魔物ならば造作ないのだ。
「ジンは王になったけど、その分これから危険に晒されることも多くナル。そしてボクは何よりもジンの命を一番に考エル。だから一つ確認してオキタイ。君たちは、これからどんな敵と戦うことになってもジンのために命を懸ける覚悟はできテル?」
ジンが聞いていれば怒られそうな内容だが、ボルの顔は至って真剣だった。
そんなボルの言葉を聞いて傭兵たちは一斉に跪く。
「当然でございます。我ら傭兵はこの命が尽きる時まで我らが王を守る傭兵として働かせていただきます。全員、もうとっくに死ぬ覚悟などできております」
「······ワカッタ。でもボクが誰も死なせない、そのためにも君たちには死ぬ思いでこれから鍛えてモラウ。
もう一度聞くけど、覚悟はデキテル?」
呑み込まれそうなボルの瞳にバンブルたちはゴクリと息を飲んだが、気合いでそれを押し殺した。
「「ハッ!!」」
その頃、そんなことが起こっていることはつゆ知らずジンは集会所の自室でゆっくりとレイの入れた紅茶を飲んでいた。
「おいしいよ、このアップルティー。ありがとうね、レイ」
「そうか、それはよかった」
「そういえばレイ、最近よく魔物を狩りにいってるみたいだけどどうしたの?」
「······その、今の私ではジンを守るほどの力は備わっていない。それに意思のある武器を持っているがその能力も最大限に活かせていない」
「そんなに無理しなくていいのに。自分のことを一番大切にする、それがルールだよ」
「分かっている。分かっているが、ただそれだけは守れない。私にとって何よりも大切なのはジンなんだ。だから、強くなりたい」
「レイ、だったら私が鍛えてやる」
そう言って現れたのはクレースだった。
「クレース、でもそんなに強くなっても······どこかの国と戦いなんてするわけでもないし」
「······分かった。私からもお願いする」
「まあ備えというものは必要だ。レイが望んでいるからそれくらいはしても構わないだろう。それにトキワもリンギルとエルダンに修行をつけているらしい」
「分かった、でも無理はだめだよ」
こうして各々が戦力の増強に向けて修行を開始していったのだ。
「ジン、りんご。くれ」
「はいどうぞ。ブレンドちょっと大きくなった?」
「うぃ」
最近のブレンドの移動手段はガルの背中の上だ。どうやら自分の一歩があまりにも小さいことに気づいたようでブレンドにとって長距離を移動する時はほとんどの場合声を上げてガルのことを呼ぶ。
そしてその後ガルとブレンドを連れて最近日課となっているパールとの魔法の特訓をすることにした。
「はいパール。そろそろ始めるよ」
「わかった、はじめる」
抱きかかえていたパールを下ろすとゼグトスに作ってもらった海の上の特殊な空間にいった。パールの魔力は間違えると辺り一帯を消しとばしてしまう可能性があるためみんながいない場所でやっているのだ。
「最近、もうちょっとうまくできるようになった」
そう言ってパールは自分の右手に白い光を出した。
「うん、上手くなってるよ。一回百鬼閣で使ったんだっけ?」
「うん、クレースにはじきとばしてもらったら上手くできた」
クシャルドが言うにはパールのこの魔法は女神だけが使うことのできるかなり珍しい魔法のようなのだ。それを刀で弾き返すクレースもすごいが、そんなすごい魔法ができるなんて思わなかった。
今日は初めて教える防御魔法だ。しかしパールはかなり魔力操作が上手くなっているようであっという間に聖級の防御魔法をまでマスターしてしまった。
「ぼくも、できる?」
ブレンドにそう言われてガルは困ったような顔を見せたがブレンドはやる気である。
「やい」
「えっ」
そう言ってブレンドは手を上にあげると右手からボウッと火が出現した。
「ガル!」
急いでガルは風魔法でその火を消した。
「つい、あつい」
「ブレンド、勝手に魔法を使ったらダメだよ。危ないからね」
なんとブレンドは魔法が使えたのだ。どうやらブレンドにも魔法を教える必要がありそう。
「ジンつかれた」
「そうだね、レストラン行こっか」
「うん、いく」
タイミングよくゼグトスが迎えにきてそのままパールを抱っこしてレストランに向かっていった。
辺りは少し暗くなっており、集会所まで戻ってくると何やらバンブルやナリーゼたち傭兵が疲弊しきったような様子で食事を食べた後のテーブルでぐったりとしていた。
「み、みんなどうしたの。大丈夫?」
「は、はいジン様ご心配なくぅ······」
「ちょっと訓練シテタ。みんな頑張ってタヨ」
「そうなんだ。レイはどうしたの?」
「私にコテンパンにされてすっかり疲れたみたいだ。根性だけは認めてやる」
「クレース、お前おかしいだろ。なんでそんな元気なんだ。あんなに私と打ち合いしてたのに······」
どうやらリンギルやエルダンも疲れ切っているようでその場で一人閻魁だけが元気な様子だった。
そしてその日は多くのものがゾンビのようにそのまま眠りについたのだった。
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