ボーンネル 〜辺境からの英雄譚〜

ふーみ

文字の大きさ
124 / 240
英雄奪還編 前編

五章 第十一話 嫉妬心は敵をつくる

しおりを挟む
季節は秋へと変わりすっかり涼しいくらいの気温になった。今はネフティスさんの護衛の人と魔力波で会話をしている最中で、前の会談の時に国にお邪魔するということを後押ししてくれたメイルさんという女性だ。ちなみにネフティスさんは連絡を取ってくれない。人間が嫌いな理由はまだ分からないが、仲良くなりたい。一方メイルさんは人族が嫌いというわけではなく、優しく話しかけてくれる。

(ジン様、でしたら一週間後などどうですか? 一週間後ならばネフティス様は何もございません。忙しいふりをなさいますが全くの暇です)

(じゃあその日にお邪魔しよっかな。ありがとう、無理なお願い聞いてもらって)

(いいえジン様。お越しくださるのを心待ちにしております。それともう一つ。前回でお察しの通り、ネフティス様は人間をひどく嫌われています。失礼をなさることがあると思いますがどうかよろしくお願い致します)

(ううん、全然大丈夫。それじゃあ一週間後)

「ジン様、少しお時間よろしいでしょうか」

魔力波が終わりすぐに扉からクリュスが入ってきた。

「いいよ、どうしたの?」

「実は近々、ハインツ国という国を中心にして小国が集まり会議をするそうです。それだけならば放っておいてもよいのですが、その会議の議題がボーンネルだとのことです」

「えっ、もしかしてここ有名になってる?」

「はい。ジン様の功績を始めとして、エルシアさんの商業面での活躍、エピネール王国の支配など、注目を浴びるのは時間の問題だったのでしょう」

流石エルシアにゼグトスだ。本当にいい友達をもった。

「どんな感じの内容かは分かる?」

「インフォルさんにも協力してもらったのですが、どうやらこちらの国力を恐れているようでして、ゴミどもッ—、小国が団結してボーンネルに経済的な圧力をかけようと計画しているそうです」

「経済的な圧力‥‥ここに来ている他国の商人や貿易が他の国から弾圧されればエルシアにかなり負担をかけるし、それは避けたいね」

「ええ、小国と言えども貴重な存在ではあります。ですのでジン様、私はその会議に出席したいと考えております」

「‥‥そっか。ちなみにその会議はいつ?」

「今から丁度一週間後です」

ネフティスさんの国に行く日と丁度被ってしまう。偶然というのは意地悪だ。

「ごめんクリュス、その日はネフティスさんの国に訪問する予定が入っていて。でもクリュスだけに嫌な思いはさせたくないし‥‥」

「何をおっしゃいますか。私はこの国で外交という誇らしき仕事を与えられた身。あなた様のためなら、何も苦ではありませんわ。それに‥‥」

クリュスは少し笑みを浮かべながら目を閉じ、ゆっくりと開いた。

「小国如き、いくつ集まろうとも簡単に滅ぼせますもの」

まずい、これは本当の目だ。ゼステナとは対となるような冷たく見透かされるような綺麗な目。

「分かった。それと会議で発言する内容はクリュスに任せるよ。この国の外交の権限はクリュスにあると思っていいからね」

「かしこまりました。お任せくださいませ」

クリュスなら大丈夫だ。信頼してる。最悪何が起ころうとも、私が責任を負えば問題ない。できる限りの権限を与えて責任は王様が取る。こうするのがベストだ。

「そういえば、誰と一緒に行く?」

「いいえ、一人で問題ありません。そちらの方がしたいようにできますので」

「分かった、じゃあ気をつけて」

少し怖い、見られるとまずいことなのだろうか。でもゼステナのお姉さんだ、一人でも十分なのだろう。

「ジン様も呪帝の領土に行かれるのでしたらくれぐれもお気をつけて下さい。人族が嫌いなあの者は何を企んでいてもおかしくありません」

ということで申し訳ないが、そっちはクリュスに任せよう。


「ジン、今日はなにもない? どこにもいかない?」

パールとガルと部屋にいるとパールが珍しくそう聞いてきた。いつもは抱きついてくるだけなのに。

「うん、今日は午前中でやることは終えたから午後は何もないよ」

「そうだんしたいことがあるの」

「相談? いいよ」

パールが相談なんて初めてだ。しかも顔はいつになく真剣に見える。

「あのね、知らない人からはなしかけられたんだけど、その人天使族だった」

「何て話しかけられたの」

「私がパールかどうかって。それでうんって答えた」

服の裾をギュッと握って不安そうな顔で見上げてくる。

「どんな人だったか詳しく教えて」

「男の人で青色のかみの毛だった」

「いつ、どこで会った?」

(ジン、いつもよりしんけん)

「ほんの少し前。ジンをさがそうとしてひとりで空をとんでるときにいきなり出てきた」

「他に何か言われた?」

「また会いにくるって。いつかは分からない」

パールからはまだ出会って間もない頃に過去に起きたことを教えてもらった。ミーナさんのことも、他の天使族からよく思われていないということも。だからこそ何かあってはいけない。

「しんぱいしてくれてありがとう。もう大丈夫になった」
 
「パール」

「はい!」

「もうこれからはひとりで行動しないで、できる限り私のそばにいて。ネフティスさんのところにも一緒に行こうね」

「うん!」

嫌な予感がする。ギルメスド王国に現れた天使族の存在があるせいか、かなり引っ掛かる。



一方、モンドのある部屋では特訓場所をこの中に変更した傭兵集団が倒れ込むようにして休憩していた。

「ボルさんの特訓、最近更に激しいメニューになったか?」 

「きっと私たちを思ってのことよ」

ボルの特訓における理念は死に物狂いだ。たとえ傭兵の中で実力差が離れていても関係なく、同じ特訓内容をこなす。

「それに昨日思い知らされたでしょ。どれだけ鍛えたと思っていてもただの数では極められた個のまえでは無力なのよ」

昨日、モンドの中ではボル一人対傭兵部隊全員での戦いが行われた。しかし数とは裏腹に決着は直ぐにつき、いつの間にか部屋の中ではほとんどのものがその場に倒れ込んでいたのだ。

「あの人に勝てる想像というか、あの人が負ける想像ができねえな。ジン様と戦ったことあんのかな?」

「いいえ、前に気になって聞いたことがあるけれども、そもそも絶対に攻撃することはないと言っていたわ。そんな状況になれば自害するらしいわ。ボルさん、ジン様の前ではかなり雰囲気が違うもの」 

「全員いる?」

その時、部屋の中にボルが入ってきた。

「‥‥いますが、どうしました?」

「全員少しついてきてほしい」

しかし、ボルの声を聞いていた全員が警戒態勢に入り、その場から動かず立ち止まった。

「それは、無理なお願いだね」

ナリーゼは剣先をボルに突きつけ強く睨みをきかせる。

「何のつもり? 口調を合わせているみたいだけど、ボルさんとは全く語尾が違うのよ」

するとボウっとしていたボルの顔が急にキリッとなった。

「チッ、もうバレたか。こんな辺境の国でもマシなやつがいるもんだな」

「マシだと? 俺らなんてこの国の中じゃ底辺中の底辺だ。見る目ねえな」

「あぁあぁ、そうだろよ。まだほとんど人と会ってねえからな」

「名を名乗れ、何が目的だ。それと、ボルさんの見た目のままいるな」

「細かいやつだな」

男は一度魔力の渦に包まれるとボルの顔は一瞬で変わり、つり目で血色の悪い男の顔に変化した。
 
「俺の名はイミタル、自己紹介はこれだけだ。それと、目的? まあお前らの国、最近調子乗りすぎなんだよ。エピネールとかいうクソみたいな国を乗っ取った、商人をうまく利用した、王がちょっと活躍した。てめえらの国なんて言っちまえばそんなもんだろ。王が帝王に認められたかなんだか知らねえけどよ、正直言っててめぇらムカつくんだよ。だからこれ以上調子に乗らねえうちに、俺らで分からせてやんだよ」

「今ナンテ?」

「あっ、ボルさん!」

そして今度は本物のボルが部屋の中に入ってきた。右手にはゼルタスが握られ、底知れない暗い瞳でイミタルを見つめている。

「おっ、おう。本物の化け物が来たな」

「何処からキタ?」

「まあ、それだけは言えないな。でもその代わり、一つだけ確かなことを教えてやるよ。てめぇらが思ってるより敵は多いぞ。今日は忠告だけだ、またな」

「待て!」

「追わなくてイイ」

「ですがボルさッ—」

「すぐに感情的になる必要はナイ。相手はただボクらに嫉妬しているダケダ」

「たっ、確かにそうですよね」

「‥‥‥ただ、ジンを馬鹿にしたのは許セナイ。此処での暴力行為はジンがイヤガル」

冷静にそう判断しつつも、ボルは静かに、怒りを抑えていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主

雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。 荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。 十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、 ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。 ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、 領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。 魔物被害、経済不安、流通の断絶── 没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。 新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。

「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」

まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。 目が覚めたら、婚約破棄されていた。 理由は「地味で面白みがない」から。 泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。 最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。 でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。 厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。 そして就任スピーチで宣言した。 「500人全員の名前を、覚えます」 冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。 悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。 元婚約者は——後悔し始めていた。 婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。 なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」 気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。 しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。 「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。 だが……一人きりになったとき、俺は気づく。 唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。 出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。 雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。 これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。 裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか―― 運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。 毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります! 期間限定で10時と17時と21時も投稿予定 ※表紙のイラストはAIによるイメージです

処理中です...