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Ⅰ
本音
しおりを挟む性的欲求を解消しながら
甘い喘ぎ声を叫んだ後、
マリアはキリストの部屋に行った。
マ「キリスト……」
キリストは部屋の隅にある机に向かい
何かやっていた。
恐らく、
それは仕事だろう。
彼は自分が部屋に入った事にも
気付いていない。
よっぽど集中しているようだ。
後ろからそっと
進行具合を見てみた。
あぁ、何だ。
班固を書類に押すだけか。
結構簡単なのかしら?
マリアは優しく微笑むと、
ベッドにそっと寝転がった。
キ「もう終わったのか?」
マ「あら?気付いてたのね。」
キ「お前が廊下を歩くと
ヒールの音が鳴るから、
よく聞こえる。」
マ「あら、ごめんなさい。
仕事の邪魔だったかしら?」
キ「いや、もう終わった。
さっきから転寝してた。」
マ「ま♪
そんな所で寝ないで?
風邪を引いてしまうし、
私が寂しいわ。」
キ「………分かった。」
マリアはベッドの反対に移動し、
キリストに微笑みかけた。
キ「お前が男と遊んだ後に
俺の部屋に来るのは珍しいな。」
その言葉に
マリアは少し考えた後、
寂しそうに言った。
マ「………会いたかったの」
キ「…………」
キリストはそれを聞くと
優しく彼女を抱き締め眠りについた。
………いや、目を閉じただけだった。
しばらくすると、
彼は彼女に言った。
キ「寂しかったのは
本望じゃないだろ。」
マリアは無表情に
じっと彼を見つめた。
マ「………貴方の鋭さに
私はいつも救われる。」
キ「?」
マリアは急に
泣きそうな顔になって
キリストの胸に抱きついた。
キリストは眉間に皺を寄せながら、
彼女の頭を撫でた。
キ「………どうした。」
マ「……うっ……っ…わ、私…ね………」
嗚咽混じりのその言葉の続きは
数分後につづられた。
マ「…っ………幸せよ?」
キ「………」
……嘘だった。
明らかにそれが嘘なのは
すぐに分かった。
彼女の嘘はかなり見破りにくい。
大概は目を見れば
分かるものなのだが、
彼女は目を見ても、
どこを見ても、
何も変わらない。
それは夫である彼にも
大変見破りにくい程だ。
しかし、今のは
鋭い性格の彼には分かった。
キ「………そうか?」
マ「……えぇ。」
聞かないことにする。
隠したい事なら聞かないし、
言いたくないなら言わなくていい。
…………最近彼女の本音を聞いていない。
窓の外を見る。
青い月が綺麗であった。
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