上 下
21 / 59
第三章

男の罪

しおりを挟む
 彼の名前はギルバード・ランページ、現在の年は70歳[35歳]魔導書を使い過ぎて生命力も精神力もほとんどないただの老人だ。
彼がこの魔導書を手に入れたのは22歳になったころ。5人の仲間達とある、上級ダンジョンを攻略した時に見つけたらしい。あまりにも強すぎる邪悪な力をかんじるため、仲間のリーダーに早く捨てるように言われていたのだが‥

「ギルバート!頼むからその"その魔導書"捨ててくれ!近くにあるだけで気分が悪くなる」

そう言ってアルスが俺から魔導書を取り上げようとする。それを全力で阻止しようと俺は躍起になっていた。

「な、馬鹿が!こんな貴重な魔導書何処を探したって見つからない!!それを捨てるだと?お前は人類の魔法文明を止めたいのか?!」

「いやいやいや!そんなやばい代物で人類を魔法の発展なんて嫌だよ俺?!」


やいのやいのと俺達が喧嘩していると後ろから3人の仲間達が木の枝や魚を持って帰ってきた。

「また、二人で喧嘩ですか?もう!お夕食のお時間だから手伝って下さいまし!」

そう怒っているのが僧侶のミーニャ、それを見て「おいおい、あんまり叱ってやるなよ」と笑っているのが武闘家のレグ、俺達の喧嘩など興味がないように火おこしをしているのがアサシンのロータスだった。俺達はもう10年の間旅をしている、ベテラン冒険者だ。沢山の困難を乗り越えていまの今までやってきたのだ。

夕食を終えた後レグが俺にヒソヒソと話してきた。

「あ、あのさ‥れ、例の件だけど」

「あ~あれか」と俺が呟くと「馬鹿!ミーニャに聞こえるだろ?」と慌てて俺の口を手で塞ぐ。そうレグはミーニャが好きなのだ。毎日アピールしているが毎回空振りしたり、撃沈したりと俺でさえ可哀想に思えるほど恋愛に不器用なのだ。俺がこの相談を受けたのは今から一年前そこから色々とアドバイスしたり、書物を渡したりしているが全く実らない。

「うぅ‥いつになったら告白出来るんだ」とレグは悲しそうに言う。「さっさと告白すりゃいいじゃねぇか」と俺がゆうと肩を強く握り、「フラれるのが怖い!!」とレグは赤裸々に語る。
なーにが怖いだ、ゴーレムを片手で粉砕できるパワーゴリラの癖に。
そんなこんなで今回も考えていると。あの魔導書の存在が頭にチラつく確かあの魔導書に恋愛を確実に成功する呪文があったはず‥俺は魔導書を開き呪文を探す。

「あった!これだ!」そこにあったのは子孫繁栄という呪文だ。これは簡単にゆうと呪文をかけた相手と選んだ相手を強制的に両思いにし、夫婦にさせ子どもを授けさせる呪文だ。実のとろこ最近レグの悩みを聞くのが億劫になってきていたから"ちょうどいい"試してみよう。










━━━━━━━━━━━━━━━━━これが地獄の始まりだった













俺は早速皆が寝静まったあとミーニャとレグに呪文をかける。

「汝、この女を愛し幸せにせよ。汝、この男を愛し幸せを手に入れろ。さすれば汝らの子は神に愛され、祝恩を授かる」

そう呪文を唱えると‥【ドス黒い霧のような魔力が辺りに充満する】

『?!?!?え?なにこれ?やばくね?やばい、やばい、やばいやばいやばい!!!止まらない止められない!!!頼む止まってくれ!!!』

そう念じ続けていたら願いが通じたのか黒い霧は消えていった。

そして朝を迎えると

「「俺達、私達結婚します!!」」

と朝食を食べていた俺達に二人はそう言った。俺は内心呪文がうまくいって本当に嬉しかったし、レグのお悩み相談から解放された嬉しさもあったからか

「おめでとう!!!」と誰よりも二人を祝福した。

‥‥‥それからとゆうもの二人は夜な夜な何処かにいき、2時間くらい帰ってこなくなった。アルスもそれをかなり心配しており、

「森の中で二人行動は危険だ、何をしにいっているか知らないがチーム全体を危険に晒すような真似はやめてくれ二人とも」とアルスが説教をしているのに対し二人は

「アルスよ我々は神の祝恩を授かるために神聖な儀式をしているのだ」

「それを邪魔するなんて‥アルスさんは酷い人ですね」

と冷たい笑顔でアルスに詰め寄る二人それにアルスは押し負けてしまう。

それからと言うもの二人は頻繁にいなくなり、戦闘中にもいなくなるようになった。流石におかしいと気づいたのかアルスが俺に詰め寄る

「おまえ、あの魔導書を使ったんじゃないだろうな?流石におかしすぎるだろ?!レグはミーニャを本当に大切にしていた。ミーニャも神に使える身として純潔を守っていた!そんな二人がここまでおかしくなるなんてあの魔導書以外ありえない!お前何か二人にしたんじゃないのか?!」

「‥っ知らない!!俺はただレグにもっと積極的にいけてアドバイスしただけで」

俺が言い訳をしていると「あの奥手なレグがそんなアドバイス一つであんなになるかよ!!」と怒りを露わにする。しまった言い訳は逆効果だったか‥そんな俺達を止めようと間にロータスが入る。

「や、辞めて二人とも‥け、喧嘩良くない‥俺悲しい」

そんなロータスを見てアルスはハッとなり、謝ってきた。‥二人をおかしくしたのは自分だがこうも親身になって謝られると心が痛むなぁ、あんまり気にしないが ‥???気にしない?

その時、俺はやっと理解した。人間に最もかけてはならない【罪悪感】が抜け落ちていることに

それからチーム内で喧嘩が頻発に起こるようになった。理由はレグとミーニャだなんと"儀式を俺達に見せてくるようになった"のが原因だ。アルスがこの儀式の神聖さを知らないから教えてやろうとしたらしい。それには流石の俺も止めに入る。

「お、おい!!流石にそれはやばいって!!そのナニ?そうゆうのはさ人に見られない所でといいますかぁ‥あのぉ」

「「お前達、貴方達がこの儀式を邪魔するからだろ?でしょう?」」

と二人恍惚な表情を浮かべながら俺達に説教をする。どうしよう‥俺のせいで、こんなことになっているのに全く悪いと思わない‥隣を見ると真っ青な顔をして「どうしたんだよ、本当に」と心配しているアルスに「おっぇぇぇ」とトラウマを思い出し吐瀉物を吐いてしまうロータス


━━━━━━━━もうこのチームは元に戻ることはなかった。


それから一ヶ月たった、あの悲惨な事件はいまでは"笑い話"だ。何故って?俺以外みーんな"おかしくなったから"だ。

「あれ?俺ここで何してるんだっけ?あれぇ?」と物忘れが酷くなるアルス。「あれ?俺はここで何してんだっけ?あれぇ?」と反復動作をするようになったロータス。人前でなんの躊躇もなく"儀式"をするレグとミーニャ。

え?なんでこんなことになったのかって?それはとても簡単な話さ









━━━━━━━━━━━あの後もずーと魔導書を使ってたからさ


一度使うと、辞められなくなった。だから色んなことに使っていた。自分が食べたい食事に変えたり、宿屋の金を払わずに泊まったり、自分の知らない上級の呪文を無詠唱で唱えらるようにしたりと色んなことをこの魔導書で試した。最近試したのはアルスにこの魔導書を使っているのがバレた時だ、あれはやばかったなぁ‥あんなにブチギレたアルス初めて見た。だから焦って【どんどんと記憶が消えてゆく呪文】を唱えてしまった。わざとじゃないない!だって殺されかけたんだぜ?そりゃ必死にもなりますよ?まあそのせいでストレスでロータスがおかしくなったのは笑えたけど。

あ、そうだ今のロータスにぴったりな呪文があるんだ!使ってあげよう!!そうすればきっと楽しくなれる。






そうやって彼は仲間のアサシンに【自我の確立】の魔法をかけました。狂っていく仲間を見るのが辛そうなかれのために自我を破壊して【喜劇】を見ているような感覚に上書きしたのです。おかげで仲間はみーんな彼に殺されてそれに絶望した彼も自害して、この男はもっもっと魔導書を使いたいために様々な災厄をばら撒いていまにいたるのでした。









━━━━━━━━━━おしまい
しおりを挟む

処理中です...