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第四章

平和な村

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光に包まれて数十秒後、目の前を包んでいた光が消えた時ギルド正門前ではなく田んぼや畑抔が見渡す限り広がっている村の入り口前に立っていた。

「綺麗~ウチこういう長閑な所に住んでたから落ち着くわ~」

アディが景色を見て懐かしむ。どうやら前世に住んでいた場所とよく似ているそうで落ち着くらしい。それを聞いたエレナは

「あれ?アディさんってタイムラルド城下町の出身でしたよね?あそこは殆どの木々は伐採されており、自然はほとんど残ってないと思うのですが‥」

その発言を聞いて「え?あ、ほら!ウチさいま住んでる所自然溢れてるからさぁ~」と言い訳をする。前世と似ているとこういう所で軽く問題になるのはお決まりな展開というか‥

「そ、それよりもさ!ここがマームネの故郷の風切り村?なんか思ってたより平和じゃね?」

もう、あだ名をつけている‥まあ本人がいいと言ったのならいいがそれにしてもアディのゆう通りだ。そんな化け物が出た挙句、村人が全て避難しているという話しだったが


───────────────────村人がいるではないか

この光景見た政宗はどうやら困惑している、それを見たエレナはすかさずペンデュラムのついた地図を取り出し自分達の場所を調べる。だがそこは"確かに風切り村の座標だった"
しかし、政宗は近くにいた村人に避難するように言いに行っている様子を見ると嘘ではないようだ。

「ど、どうなっとるんじゃ、こりゃあ‥」

「侍のにいちゃんが俺らを騙してる‥て様子でもねぇなこれ」

さて一体どうゆことなのだろうか?村人達が戻って来ている、例の怪物が山から降りて来た様子はない、ならこの条件は

「移動したか」と私が口に出す、そりゃ"餌"がなかったら移動して餌を探すのは虫とて同じだ。しかしエレナはそう思っていないらしい

「‥いえ、大半のSランクレベルのモンスターは"巣を作ると最低でも1年は住み着きます"その為政宗さん達が被害を受けた時期が3週間前なら移動はせずに巣を作っているのかと思うのですが」

「そうなんですか?では、餌はどうするのでしょうか?」

「虫タイプのモンスターは消化速度が遅いんです。そのため、ある程度食べたら行動をしないと言われています。」

だったらこの状況はなんなのだろうか?そんな風に我々が悩んでいると、

「政宗?政宗でねぇか!おめぇどこにいっとったと?」

そんな独特な訛りで話しかけて来た男を見て政宗が驚く

「喜一‥おめぇなんで戻ってきた?ここは危ないゆうたじゃろうが!まさか、妹と母さんと嫁も一緒に戻ってきたんけ?」

その喜一という男は政宗を宥めながら嬉しそうに山を指差した。

「あの夜に出たぁ化けもんなぁ"巫女様"が来てくれて払ってくれたんよぉ、それ聞いたやつはこの村に戻ってきたんべさ」

巫女?そんなものもいるのかこの世界は。だが、こんな都合よく巫女が現るのは怪しいすぎる。それをフゥも感じたのか私にそっと耳打ちをしてくる

「なぁ、アルフその巫女怪しくね?都合良すぎるよな?」

「その考えは私も同じです。本当に都合が良すぎる‥」

そんな話を私とフゥがコソコソしていると後ろから鈴の音が聞こえてくると同時に「道を開けよ!"巫女様が帰られたぞ"」と足軽兵の鎧をつけた男が叫ぶ。それと同時に喜一は私たちに「道をあけにゃ!失礼だべ」と言って早く早くと手招きをする。私はそれに従い脇道へと行き道を開けるとそこから来たのは

"白無垢衣装に身を包んだ巫女と呼ばれている女だった"


           ※※※※※※※※※※

「あれが‥巫女ですか、私の知っている巫女とは大分違いますね」

エレナが巫女の姿を見て自分の知り合いと比較している。エレナ曰く"綺麗すぎる"そうだ、巫女は場を清めたり、お祓いしたりとするため案外"良くない気を纏っている者が多いらしい"それを力に変えるのが巫女という上級ジョブらしのだが、逆に彼女は"穢れを触ったことすらないように見える"らしくエレナ的には巫女とは言えない。だが村人達は巫女が"大蜘蛛を祓った"と言って信じている。

「はえ~巫女様は今日もべっぴんだべ、あ~んな綺麗な嫁さんだったら毎日早くかえるんだがの~」

その発言にドン引きする、エレナとアディしかし確かに"綺麗すぎる"衣装もだが本当に"穢れを知らない"そんな顔をしているのだ。そんな娘が政宗の言っていた"大蜘蛛"を祓えるのだろうか?すると巫女は私達に気付き軽く手を振る。それに笑顔で手を振り返す喜一をよそに我々はアディ以外手を振りかえさなかった。

「えぇ!みんな、まじ?手を振ってくれたんだら返そうよ!」

と以外にも律儀なアディをよそにエレナが"念話"を使い私達と話す。

『失礼します、急に念話を使うことお許し下さい。喜一様がおられたので直接話すわけにはいかず』

エレナ念話越しに謝罪する、それにしても様々な上級魔法を使えるのは【剣姫】だからだろうか?そんな私をよそにエレナは話を続けた。

『あそこで手を振らなかったのは巫女の技にあの動作で呪いを掛けることが出来る術があるです、なので後でアディさんのステータスを確認させて下さい。』

『えぇ!それでじま?!なーんで早く言ってくんないの~ウチこんなんでも聖職者なんだけど、呪いとかまじ萎える通り越してぱおん』

『????????????』

あぁ、政宗が意味不明な造語のオンパレードで頭がショートしていらっしゃる‥おいたわしや

『そんなこと、どうでもいいからよ!畑のにいちゃんに聞かれたくない話って?』

『はい、はっきりと申し上げます。彼女は"ペテン師"です、村人を騙して様々な利益を得ようとしています。いまから喜一さんにいくつか質問しますので、質問の返答が私の考えている回答とよく似た物だったらあの巫女は黒です』


そう言って彼女は今から喜一に質問する内容と黒だと認定する解答を私達に共有した。

Qあの方が人前でお祓いをしたことがあるか?

Aありません。だってお祓いは誰かに見られると効果が弱くなるから

Qあの方の周りで"占い"もしくは"風水"は流行っていますか?

Aはい、流行っています

Qあの白無垢衣装は彼女が要求してきたのですか?

Aはい、討伐したお礼に仕立ててくれと言われた。

の3つらしい。エレナはこの質問の解答によく似た解答が必ず返ってくると確信しているようだった。

「喜一さん、3つほど宜しいでしょうか?」

「ん?なんじゃ」

そう言ってエレナは先程の質問を喜一に聞く


「あの方がお祓いを誰かに見せたことはありますか?あるなら見たいのですが」

「だめ、だめ、だめ!そんなことしたら巫女さんの集めている気が散ってしまうだ!」

「そうなんですね‥あ!それなら巫女様が進めているものとかありますか?もし、あるならやってみたいのですが」

「それならあるべ!風水てゆうやつで、オラは難しくて分からんけども嫁とお袋はもう趣味みたいなもんになっとる」

「へー、そうなんですね!あ、じゃあ最後にあの巫女様が着ていらっしゃった白無垢は元々きておられたのですか?」

「いや!戦いでボロボロになってしもうたから、巫女様のゆう通りに穢れのない純白の衣装と言われたからあの白無垢を渡したんよ」

『はい、黒確定です。捜査を続行して討伐対象を見つけ次第、彼女
は捕縛します。』

と怒りを露わにしているエレナだった


           ※※※※※※※※※※ 

 巫女が別の意味で黒かったことが明らかになった。しかし、村人達は"巫女"が大蜘蛛を倒したと言ってるのは何故だろうか?インチキをしていたり、魔物と協力でもしていたのだろうか?そんなことはあの"巫女"に聞けばいいことか。そうなれば‥

「はいはーい私に提案があります。私があの巫女について調べるので皆さんは山を調べてくれませんか?戦闘になった際私は役に立たないので」

と提案するとあっけなく了承してくれた。エレナだけは「え?」見たいな顔をしていたが、他の方々の「適訳だから」でなんとなくだが察してくれたらしい。ではさて潜入と洒落込みましょうか。

山の入り口でフゥ達と分かれて私は猫の姿になる。その後自分に
【見たものの視界情報を狂わせる呪文】
【自分を認識すると魅了にかかる呪文】
この2つを使い巫女のいる屋敷へと向かった。かなり大きな屋敷で中には従者がちらほらいる。どうやら彼女の力を本当に信じているらしく、汗水垂らして働いている姿が確認出来る。もし彼等彼女等が巫女がただのペテン師だと気づいたらどのような反応をするのだろうか?

「ニャーン」

愛くるしい声を出して屋敷の者に私の姿を"認識させる"

「あら!可愛らしい猫ちゃんどうしたの?」

と一人食いついたのですかさず、"魅了【チャーム】"をかける。Eランククエストでは良くこの手の魔法を使いメスの飼い猫を誘惑して捕まえた物だ。

そんな事を思いながら堂々と廊下を歩く私の姿に魅了【チャーム】された者達が巫女のいる場所に私を案内しながら色々と喋ってくれた。この呪文の良い所は聞きたい情報も猫の姿だと"独り言"として喋ってくれるのでいちいち聞かなくても良いとゆうのも理由の一つだ。

それで集まった情報は

「巫女が化け物を倒したという噂が急に広まった」

「山の中を見ると化け物の死体があった為皆信用した」

「最近は、"お祓い"に行くとよく話しているが帰ってくるのは早い」

とまあこのくらいの情報が集まった。一番気になるのは2番目の化け物の死体だ。まあ、フゥ達の情報を待ちましょうか。そんなこんなで私は巫女のいる間へとやってきた。従者達に『下がれ、私が許可を出すまで部屋に入るな』と指示をして彼等彼女等は仕事に戻る。それを確認したあと人の姿に戻り、思い切り襖を開けた。

そこにいたのは先程巫女と言われていた女がいた。
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