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起。
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午後の日差しが差し込む教室。
彼は窓側にある自分の席で、ぼーっと外を眺めながらコーヒーを飲んでいた。
教室の中は昼休みと言うこともあってざわめいているが、外は春らしいポカポカ陽気で、少しだけ開けてある窓の隙間からは、時折土の薫りを纏った柔らかい風が入ってくる。
そのお陰か、目覚ましの為にコーヒーを飲んでいるにも関わらず眠気が全く取れない。ウトウトと眠りそうになりながらもどうにか堪えて机にもたれていた体を起こすと、彼は気合いを入れ直すように紙コップに残っていたコーヒーを飲み干した。
と、そこにクラスメイトの崎村が近づいてくる。
「なあ柳谷、お前今日の放課後ヒマ?」
「あん?何だよ」
いつもならこの時間は他のクラスメイトと会話を楽しんでいる彼が、何の気まぐれか彼、柳谷清司に話しかけてきたのだ。清司自身も普段は幼馴染みの水縹太壱とくだらない会話をしていることが多いが、今日はあいにく太壱は家の用事で学校を休んでいる。
放課後においても、いつもなら櫻井康樹や東奥充晶らと集まって遊ぶことが多いが、やはりこちらも今日はそれぞれ用事があると、放課後は集まらないことになっていた。
ヒマと言えばヒマである。
「ヒマならゲーセンいかね?」
「何で?」
「駅前のゲーセンに新しいゲーム入ったって聞いたんだけど、今日誰も都合あわねーんだよ。でたまたま柳谷がいたから声かけたんだけど……お前も駄目か?」
と、そこまで話を聞いたところで彼のズボンのポケットに視線がいく。
ポケットからは通常であれば見ることはないであろう黒い靄があふれ出ていた。
彼は聞こえよがしにため息をつくと、
「ポケットの中身見せてから用件を聞こうか?報酬の話も含めてな」
そう言って手を差し出す。と、言われた崎村は「げっ!」と少しオーバーにリアクションを取った後、
「お前やっぱりテレビ出れるから出ろよ」
と、笑いながらポケットの中からスマートフォンを取りだし、とある画像を見せてきた。
画像はどこかの古びた祠なのか御堂なのか。とにかくポケットの中からあふれていた禍々しい黒い靄はいっそう濃くなった。
彼はそのままスマートフォンを崎村に返し、苦虫をかみつぶしたような表情で続けた。
「どうせ俺にその場所に一緒に行こうだとかなんだとか、そういう言う話だろ?」
「そのとおり!」
「断るし」
「断るの早いっ!」
「そんなもん断るに決まってんだろ!あと、その画像ヤバいから早く消した方が良いぞ。下手すりゃ……」
「……下手すりゃ……?」
「怪我人くらいは出んじゃね?」
「げっ、マジかよ!?」
「つーわけで俺はそこには行かねえし、画像もこれ以上保存しとくのは勧めねぇ」
「ちぇ。分かったよ。今回は諦めるよ。じゃぁな」
そう言って崎村は席を離れようとしたが、清司は一つ気になったことを口にした。
「ちょっと待て。今見せた画像、富来田町の雑木林のやつか?」
そう尋ねると崎村はどうと言うこともないように返答してきた。
「え?ああ、そうだけど?」
それに対して清司は席を立つと語気を強めてあらためて言った。
「絶対に行くなよ?」
「分かった、分かったよ。だからそんな恐い顔すんなって」
清司の言葉にへらへらとそう返すと、崎村はまたいつも連んでいるメンバーのもとへ戻っていった。
あの調子であれば、言ったことは守られないだろうな。
彼は胸中でそう呟いた。
彼は窓側にある自分の席で、ぼーっと外を眺めながらコーヒーを飲んでいた。
教室の中は昼休みと言うこともあってざわめいているが、外は春らしいポカポカ陽気で、少しだけ開けてある窓の隙間からは、時折土の薫りを纏った柔らかい風が入ってくる。
そのお陰か、目覚ましの為にコーヒーを飲んでいるにも関わらず眠気が全く取れない。ウトウトと眠りそうになりながらもどうにか堪えて机にもたれていた体を起こすと、彼は気合いを入れ直すように紙コップに残っていたコーヒーを飲み干した。
と、そこにクラスメイトの崎村が近づいてくる。
「なあ柳谷、お前今日の放課後ヒマ?」
「あん?何だよ」
いつもならこの時間は他のクラスメイトと会話を楽しんでいる彼が、何の気まぐれか彼、柳谷清司に話しかけてきたのだ。清司自身も普段は幼馴染みの水縹太壱とくだらない会話をしていることが多いが、今日はあいにく太壱は家の用事で学校を休んでいる。
放課後においても、いつもなら櫻井康樹や東奥充晶らと集まって遊ぶことが多いが、やはりこちらも今日はそれぞれ用事があると、放課後は集まらないことになっていた。
ヒマと言えばヒマである。
「ヒマならゲーセンいかね?」
「何で?」
「駅前のゲーセンに新しいゲーム入ったって聞いたんだけど、今日誰も都合あわねーんだよ。でたまたま柳谷がいたから声かけたんだけど……お前も駄目か?」
と、そこまで話を聞いたところで彼のズボンのポケットに視線がいく。
ポケットからは通常であれば見ることはないであろう黒い靄があふれ出ていた。
彼は聞こえよがしにため息をつくと、
「ポケットの中身見せてから用件を聞こうか?報酬の話も含めてな」
そう言って手を差し出す。と、言われた崎村は「げっ!」と少しオーバーにリアクションを取った後、
「お前やっぱりテレビ出れるから出ろよ」
と、笑いながらポケットの中からスマートフォンを取りだし、とある画像を見せてきた。
画像はどこかの古びた祠なのか御堂なのか。とにかくポケットの中からあふれていた禍々しい黒い靄はいっそう濃くなった。
彼はそのままスマートフォンを崎村に返し、苦虫をかみつぶしたような表情で続けた。
「どうせ俺にその場所に一緒に行こうだとかなんだとか、そういう言う話だろ?」
「そのとおり!」
「断るし」
「断るの早いっ!」
「そんなもん断るに決まってんだろ!あと、その画像ヤバいから早く消した方が良いぞ。下手すりゃ……」
「……下手すりゃ……?」
「怪我人くらいは出んじゃね?」
「げっ、マジかよ!?」
「つーわけで俺はそこには行かねえし、画像もこれ以上保存しとくのは勧めねぇ」
「ちぇ。分かったよ。今回は諦めるよ。じゃぁな」
そう言って崎村は席を離れようとしたが、清司は一つ気になったことを口にした。
「ちょっと待て。今見せた画像、富来田町の雑木林のやつか?」
そう尋ねると崎村はどうと言うこともないように返答してきた。
「え?ああ、そうだけど?」
それに対して清司は席を立つと語気を強めてあらためて言った。
「絶対に行くなよ?」
「分かった、分かったよ。だからそんな恐い顔すんなって」
清司の言葉にへらへらとそう返すと、崎村はまたいつも連んでいるメンバーのもとへ戻っていった。
あの調子であれば、言ったことは守られないだろうな。
彼は胸中でそう呟いた。
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