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13話 親子喧嘩だ、Let's 反抗!・上

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 衣装部屋にあったおしゃれなマジックバッグを拝借して、エマはターナーの書斎で本格的に裏帳簿と表向きの帳簿を合わせていた。相当な金を領民から奪い取っているようだった。
 この2冊を郵送すれば分かるだろう。エマが正式に家の人間として除外される明日に提出する。茶封筒に押し入れて、残りの犯罪を問うための証拠品を押し入れていく。

「郵送先は……」
「何をしている」

 扉を開いたマリアエルがエマをゴミでも見るように睨んでいる。その後ろには、アリアが隠れている。しかも、魔法の杖まで持っている。子供にしては邪悪な笑みだ。アレには悪魔でも入っているというなら頷けるほど、気持ち悪い笑顔だった。

 エマはマジックバッグにそれらを押し入れる。

「ターナーが帳簿を改竄しています。知っていましたか、マリアエル」
「様を付けろ。その口の利き方はなんだ。お前はもうこの家の人間ではない上に身分が違うのだぞ」
「そう、ならもう失礼するわ。明日なんて待つ必要はないもの」
「いいや、お前を使用人として雇っていた私達にはお前にきちんと躾し直す必要がある」
「雇ってた? 給料なんか一度ももらってないわ。奴隷の間違いでしょ」
「お前に口答えする権利があると思っているのか、下等生物が」
「そっくり返す。お前こそ、ただの犯罪者のくせに自分が正しいなんて思い上がりも甚だしいわ」

 マリアエルはこめかみを引きつらせる。だが表情はほとんど微動だにしない。

「残念だ。お前は何も学習していないどころか、そんな口をきくようになるとは」
「今更母親面? それとも、不正な金回りの話について言及しないってことは、知っていたのね? これだから馬鹿で無能な人間は、虚勢を張って自分より下の存在を虐めないと自分の存在を証明できないんだから、生きてるだけ迷惑よ」

 母親の紛い物が顔を今度こそ歪めた。
 スキルを得るまでは優しかった母の面影が、ちらつく。
 それまでは立派な淑女として育てようとしてくれた人だったから。

(ねぇ、エマ)

 そう心の中で舞が問いかける。

(スキルやアビリティって、同時にどれだけ引き抜けるのかな?)

 面白そうなことを考えてくれる。

(それに、ステータスは? レベルとか、魔法攻撃力とか、防御力とか……あと、体力と魔力も! ねぇねぇ、全部一気にやってみようよ!)

 記憶の中の舞がキラッキラの笑顔を浮かべている。
 そんな舞の言葉が、エマの背を押す。
 誰よりも、エマのスキルの可能性を見付けてくれた舞。

 そして、誰よりもエマを人として認めてくれた舞。

 母との決別の時が来た。

「それで? そこの着飾ったゴミが杖を持っているのは?」
「誰がゴミですって!?」アリアが吠える。
「お前以外にいると思ってるの、クズが」
「良いだろう。ここでは手を出さないでやろうと思ったが、アリアにそのような暴言を吐く部を弁えないゴミには貴族に歯向かったらどれほどの罰が下るか身を持って知ると良い」

 エマは良い訳ないでしょと肩をすくめる。

「お前も力を振りかざすしかできない馬鹿なのね。ターナーもそうだったけど、お前がこの家では一番馬鹿だわ。どうせ、そこのゴミに『殴られた―』って泣き付かれて、私を探してたんでしょう。本当に、この家の人間は揃いも揃って馬鹿ばかりで付き合いきれない。それとも、そう言ってるだけで証拠隠滅の手伝いかしら? あのゴミみたいな男の妻としては完璧ね。ゴミ同士だから馬が合うんだわ」

 マリアエルは掌をエマへと向けた。そこに、魔法陣が浮かぶ。

「使用人風情が、身の程を弁えろ」
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