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37話 暴かれていくエマの正体・下
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次にヴォルグは手帳をめくって、サニアのスキルで念写した写真を見せてきた。それは、女装している男。
「ターナーだ」
「……ターナーに女装する趣味が?」
「違う違う! エマちゃんが着せたんだ」
「なるほど」
「良い性格してるだろ? でも、そっちじゃなくて、後ろ手見てみろよ。親指縛ってる」
拘束時に最も負担が少ないのは親指。それを、10歳の令嬢が知っているか?
逆に、『異世界人の知識が芽生えた』なら、辻褄が合う。
少女が家族と使用人へ反旗を翻すと決めた。
そして使用人達からスキルを奪い、更には兄と妹から奪い取った。その後は、スキルを駆使し、両親を圧倒。スキルがなくなり弱体化したアリアの護衛すら落とし、最後は兄を黙らせた。
一番気にかけているであろうサニアに次の就職先をスキル特務部隊への推薦し、そして、働き先が決まらなかった時のためにお金を稼ぐ方法の提示した。
「スキル特務部隊への推薦……なるほど、確かにここまでの鮮明さを誇るなら、是非とも引き入れたい」
「近々サニアがこっちに来るよう仕向けたから、エマちゃん探すために、彼女の写真を貼り付けた掲示物を彼女に作ってもらおう」
「今はダメだ。エマ嬢は追われている身。そんな掲示物を貼り出せば、彼女が逃げたことを公表することになってしまう」
「それもそうか……あ、そうだ。昨日ギルドに確認しに行ったけど、やっぱり冒険者ギルドに来てなかったぜ」
「そうか。なら、もう王都は出たのだろう」
「? 出てるのか? 隠れてるんじゃなく?」
「転生者と聞いて、何となくだが……アスカと似た行動を取っている気がする。彼女もこちらに転移した当初、流れで冒険者ギルドに行ったそうだ」
「そういや、師匠なんて冒険者ギルドに拾われてそのまま厄介に……いや、全面的に冒険者ギルドの世話してるな」
あの夜、エマは自分守ってもらうためではなく、王都から出るためにギルドカードを作りに行こうとしたのではないだろうか。
だが、ギルドはあの騒ぎ。詰所の人間は対応してくれない。自分を助けてくれる人はいないと見限った可能性は高い。
それでも冒険者ギルドの騒ぎを抑えるべく、彼女が知っている場所で騎士が集まっているところといえば、門番。門番の警備を手薄にすることに成功し、そのまま逃走した。
(マフィアの方もエルフィールド家の逮捕を知れば、追いかけるのを止めるかもしれない)
「ヴォルグ、出勤時間が来たらメンバーを招集してくれ。その後、会議室で待機を。私は居残り組とメイアへの派遣部隊を選定する」
「何でメイアなんだ?」
「あそこは冒険者ギルドの支店がある。ギルドカードを作りに行った可能性は高い」
そして、2日前の時点で王都に最も近いルルベールで体を休めたはずだ。だが、冒険者ギルドの情報を集められれば、すぐにメイアへ向かうだろう。『縮地』と『スピードアップ』なら、2、3日。
「そうか。それじゃあ、俺帰るわ。今日から3日間非番だから」
「……」
「あとよろしく……――痛って、何しやがる!!」
「お前は働け。次の休みはキャシーだ」
昨日から働いてるだろうが! と言い返すヴォルグに、アルフレッドは腕を組んでもう一度「働け」と一言。
何故、この天才はすぐにサボろうとするのか。仕事は早い、やることはしっかりやる。だがサボることに全力を注ぎ過ぎだ。その分を周囲を手伝うようにと再三言ってるのにやらない。
分かりましたよとヴォルグは忌々しそうに言う。師匠なら休ませてくれるのに、とブツクサ言うが、もう一度「働け」アルフレッドは吐き捨て、手を差し出す。
その手とアルフレッドの顔を交互にヴォルグは見る。
「何だよ、その手は」
「始末書を。お前がエマ嬢の酷い状況を知って、暴言を吐かないとは思えない」
「ちっ」
「今日の昼までに書き終えるように」
「ターナーだ」
「……ターナーに女装する趣味が?」
「違う違う! エマちゃんが着せたんだ」
「なるほど」
「良い性格してるだろ? でも、そっちじゃなくて、後ろ手見てみろよ。親指縛ってる」
拘束時に最も負担が少ないのは親指。それを、10歳の令嬢が知っているか?
逆に、『異世界人の知識が芽生えた』なら、辻褄が合う。
少女が家族と使用人へ反旗を翻すと決めた。
そして使用人達からスキルを奪い、更には兄と妹から奪い取った。その後は、スキルを駆使し、両親を圧倒。スキルがなくなり弱体化したアリアの護衛すら落とし、最後は兄を黙らせた。
一番気にかけているであろうサニアに次の就職先をスキル特務部隊への推薦し、そして、働き先が決まらなかった時のためにお金を稼ぐ方法の提示した。
「スキル特務部隊への推薦……なるほど、確かにここまでの鮮明さを誇るなら、是非とも引き入れたい」
「近々サニアがこっちに来るよう仕向けたから、エマちゃん探すために、彼女の写真を貼り付けた掲示物を彼女に作ってもらおう」
「今はダメだ。エマ嬢は追われている身。そんな掲示物を貼り出せば、彼女が逃げたことを公表することになってしまう」
「それもそうか……あ、そうだ。昨日ギルドに確認しに行ったけど、やっぱり冒険者ギルドに来てなかったぜ」
「そうか。なら、もう王都は出たのだろう」
「? 出てるのか? 隠れてるんじゃなく?」
「転生者と聞いて、何となくだが……アスカと似た行動を取っている気がする。彼女もこちらに転移した当初、流れで冒険者ギルドに行ったそうだ」
「そういや、師匠なんて冒険者ギルドに拾われてそのまま厄介に……いや、全面的に冒険者ギルドの世話してるな」
あの夜、エマは自分守ってもらうためではなく、王都から出るためにギルドカードを作りに行こうとしたのではないだろうか。
だが、ギルドはあの騒ぎ。詰所の人間は対応してくれない。自分を助けてくれる人はいないと見限った可能性は高い。
それでも冒険者ギルドの騒ぎを抑えるべく、彼女が知っている場所で騎士が集まっているところといえば、門番。門番の警備を手薄にすることに成功し、そのまま逃走した。
(マフィアの方もエルフィールド家の逮捕を知れば、追いかけるのを止めるかもしれない)
「ヴォルグ、出勤時間が来たらメンバーを招集してくれ。その後、会議室で待機を。私は居残り組とメイアへの派遣部隊を選定する」
「何でメイアなんだ?」
「あそこは冒険者ギルドの支店がある。ギルドカードを作りに行った可能性は高い」
そして、2日前の時点で王都に最も近いルルベールで体を休めたはずだ。だが、冒険者ギルドの情報を集められれば、すぐにメイアへ向かうだろう。『縮地』と『スピードアップ』なら、2、3日。
「そうか。それじゃあ、俺帰るわ。今日から3日間非番だから」
「……」
「あとよろしく……――痛って、何しやがる!!」
「お前は働け。次の休みはキャシーだ」
昨日から働いてるだろうが! と言い返すヴォルグに、アルフレッドは腕を組んでもう一度「働け」と一言。
何故、この天才はすぐにサボろうとするのか。仕事は早い、やることはしっかりやる。だがサボることに全力を注ぎ過ぎだ。その分を周囲を手伝うようにと再三言ってるのにやらない。
分かりましたよとヴォルグは忌々しそうに言う。師匠なら休ませてくれるのに、とブツクサ言うが、もう一度「働け」アルフレッドは吐き捨て、手を差し出す。
その手とアルフレッドの顔を交互にヴォルグは見る。
「何だよ、その手は」
「始末書を。お前がエマ嬢の酷い状況を知って、暴言を吐かないとは思えない」
「ちっ」
「今日の昼までに書き終えるように」
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