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57話 地龍の胃袋の中
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飲まれたはずなのに、何故か向かっている先が明るい。エマは光に誘われる虫のように光へ落下していく。
酷い臭いのする空洞に出ると、落ちていた体がふわりと浮かんだ。
視界がはっきり見えたエマは目を見開く。
そこには、ガイアの瞳と同じ色をした巨大な石が、たくさんたくさん落ちていた。臭いは酷いのに、石がたくさんあって胃液らしいものが見当たらない。何で、こんなに石を食べているんだろう? これじゃ、食べたい物があってもろくに入らない……。
「えっ、人間?!」
エマが着地した足元の石には、女性が眠っていた。周りを見回しても、人が、石の中に閉じ込められている。
(違う、閉じ込められてるんじゃない)
そうだ、違う。守っているのだ、自分の胃液から。
レベルが999のドラゴンだ,本当なら、もっともっと体力がある。でも、今は体力が5000を切っている。人間なら瀕死の領域じゃないだろうか。
この人達を守るために、ガイアは食べ物もろくに食べられないんだ。
そして今、エマも『守る』対象に入った。
確かに、エマの考えた通りだ。この中なら安全なのだ。本当なら、『邪龍の使徒』のせいで意識がなくなって暴れ出す。もしかしたら、魔力の下限が5000なのには、『邪龍の使徒』に別の効果があるのかもしれない。例えば、ぼーっとした意識のまま地龍神殿まで来てしまうとか。
そして、ガイアは彼らを守るために死ぬつもりなのだ。抵抗できない呪いのせいで食べなけれないけない。だが、胃袋の中に消化できないものを作って、自分自身を弱らせて……餓死するつもりだ。
そうなれば『ファフニール』も諦めるしかない。ドラゴンの死体が見つかれば、解体されるだろう。そこでようやく、ここで守って来た人達が解放されるのだ。最後は『地の王』という立場の人に、救出してもらえる。
体がプルプル震えて、涙がぼろぼろ出てくる。意味もなく泣くのを我慢して、口がぷーっと膨らむ。呼吸困難になったように、息が吐き出せなくなる。
ご飯が食べられない苦しさを、エマはよく知っている。
食べるのをダメだと言われて、食事ももらえなくて、食べ物のクズを探しても見つからなかった日々。時々食べても良いと渡される料理が、どれだけ温かいものだったか、知っている。
「絶対、助けてやる!!」
ヴォルグが言うような、助けに行くという約束ではない。
絶対に神獣従属の呪いを奪い取ってやる! という、意地だった。自分がどうなろうとどうでも良い訳じゃない。でも、無駄に元気になったしやる気になった。
胃の壁に駆け寄って、まずは普通に試みる。だけれど、スキルがうんともすんとも言わない。
「どうして取れないか理由ぐらい寄越しなさいよ!!」
喚き方がアリアによく似てる。そう思ったら、ぺこんとウィンドウが出てきた。
『【盗用】レベルが足りません』
「足りないって、どれだけ足りないの?!」
『推奨レベル Lv.80』
「はちっ?!」
(足下)
浮かんだ言葉にエマは足元を見る。
「そうだ、守られてる人達から奪えばいける?!」
酷い臭いのする空洞に出ると、落ちていた体がふわりと浮かんだ。
視界がはっきり見えたエマは目を見開く。
そこには、ガイアの瞳と同じ色をした巨大な石が、たくさんたくさん落ちていた。臭いは酷いのに、石がたくさんあって胃液らしいものが見当たらない。何で、こんなに石を食べているんだろう? これじゃ、食べたい物があってもろくに入らない……。
「えっ、人間?!」
エマが着地した足元の石には、女性が眠っていた。周りを見回しても、人が、石の中に閉じ込められている。
(違う、閉じ込められてるんじゃない)
そうだ、違う。守っているのだ、自分の胃液から。
レベルが999のドラゴンだ,本当なら、もっともっと体力がある。でも、今は体力が5000を切っている。人間なら瀕死の領域じゃないだろうか。
この人達を守るために、ガイアは食べ物もろくに食べられないんだ。
そして今、エマも『守る』対象に入った。
確かに、エマの考えた通りだ。この中なら安全なのだ。本当なら、『邪龍の使徒』のせいで意識がなくなって暴れ出す。もしかしたら、魔力の下限が5000なのには、『邪龍の使徒』に別の効果があるのかもしれない。例えば、ぼーっとした意識のまま地龍神殿まで来てしまうとか。
そして、ガイアは彼らを守るために死ぬつもりなのだ。抵抗できない呪いのせいで食べなけれないけない。だが、胃袋の中に消化できないものを作って、自分自身を弱らせて……餓死するつもりだ。
そうなれば『ファフニール』も諦めるしかない。ドラゴンの死体が見つかれば、解体されるだろう。そこでようやく、ここで守って来た人達が解放されるのだ。最後は『地の王』という立場の人に、救出してもらえる。
体がプルプル震えて、涙がぼろぼろ出てくる。意味もなく泣くのを我慢して、口がぷーっと膨らむ。呼吸困難になったように、息が吐き出せなくなる。
ご飯が食べられない苦しさを、エマはよく知っている。
食べるのをダメだと言われて、食事ももらえなくて、食べ物のクズを探しても見つからなかった日々。時々食べても良いと渡される料理が、どれだけ温かいものだったか、知っている。
「絶対、助けてやる!!」
ヴォルグが言うような、助けに行くという約束ではない。
絶対に神獣従属の呪いを奪い取ってやる! という、意地だった。自分がどうなろうとどうでも良い訳じゃない。でも、無駄に元気になったしやる気になった。
胃の壁に駆け寄って、まずは普通に試みる。だけれど、スキルがうんともすんとも言わない。
「どうして取れないか理由ぐらい寄越しなさいよ!!」
喚き方がアリアによく似てる。そう思ったら、ぺこんとウィンドウが出てきた。
『【盗用】レベルが足りません』
「足りないって、どれだけ足りないの?!」
『推奨レベル Lv.80』
「はちっ?!」
(足下)
浮かんだ言葉にエマは足元を見る。
「そうだ、守られてる人達から奪えばいける?!」
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