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「白銀の星が瞬く雲は出た。これ以上邪魔しないでくれ」
「ガイア氏からすれば邪魔なんだろうけど、残念なお知らせが先よ。君のお父様はお城の牢屋に入っているわ」

 ビーカーから薬液を移し入れる作業が止まる。

「お母様はちゃんと保護しています。石像のままだけど、お城の人達があなたのお母様を治すために尽力してく下さっているわ」
「……母の石化は最上級の石化解除薬でも治らなかったのにか?」

 それから薬液をしっかり移しきって、ガイアは試験管の蓋を閉じる。

「父が大枚叩いて魔法薬を世界各地から集めてきた。どれも最上級の物だったのに、どれだけ良質な物を掛けても母は石のままだった。だから、普通の魔法薬では俺の石化は解けない――……の呪いだと、父は言っていた」
「……だから、王城内の図書館に忍び込んだのね。お母様を助けるための薬を精製するために」
「あぁ」

 重々しい沈黙が空気を支配する。
 思わぬところでヘビー級の過去が暴露されたのだ。自らの手で母を石にしてしまったなんて――だが、相手はガイアである。

「それで、探すために魔法で鍵が掛けられた魔具庫を開けたのね」
「そうだな。面白そうな仕掛けがあったから解いたのもあるが」
「王族の浴室に忍び込んで体を清潔に保ったり、備蓄から食料を少々拝借していたのね?」
「そうだな」「「……」」
「それに、この前パーティーにいたのよね? どこにいたのかしら?」
「普通にパーティー会場にいたが?」
(いやそれはおかしいだろ)「服はどうしたの?」

 少年は即答する。

「アレン王子の服を拝借した」
「「んんっ?!」」
「ぶっふっ! ――げふんごふん。いや、何やってんのよ」
「ん? ちゃんと浄化魔法を施して返したぞ」

 違うそうじゃない。確かに洗って返すのは礼儀だが、そういう問題じゃない。呆れたスカポンタンだ。でもベッドは一度も使ってないと言い返すガイアだが、ミクロンも褒める部分がない。

「ただいま戻りやし……――」

 中年太りのオッサンがデカイ紙袋を両脇に抱えて、汗だくになりながら現れた。
 ヴァレリア達を見つけて、しばらく固まった。が、シリルを指差して、

「お前っ! この前、取り引き現場にいたガキじゃねぇか!」
「何でお前がここに?!」
「ここが『パンドラ』のアジトだからだな」

 ガイアはしれっとそう言った。
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