無能と追放された神子様は顕現師!~スキルで顕現した付喪神達の方がチートでした~

星見肴

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79話 あの日の再来を

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「そうでございますね。魔法とは瘴気の元凶にあたるものなので、瘴気を減らすための手段として魔力消費のないスキルを与えているのです」

 今ちょっと爆弾発言聞こえたけど、そういうことなのだなと納得しよう。そうじゃないとやってられない。

 再び天空に描かれる無数の飛竜達。今度は先程よりも数を増した。飛竜達の多くが瞬く間に飛び去って城下町へと飛んで行った。

(的確に心を折ってるなぁ)

 頭上でヴィンセントの魔法陣がふっと消える。

 飛行移動を開始した飛竜達だが、下から打ち出されるケイオンの光線に打ち抜かれ、さらにエルメラからの打ち落とされて散っていく。
 しかし数匹がからがら逃れて、城下町へと下っていった。オークにそちらへこれから飛竜が飛んでいくと知らせ、ユウは辺りを見回す。

《アカツキ、私は透明化できますかね?》
《『透明化』と書けば使えますが、エミリーはユウ様を最も警戒していらっしゃいます。おそらく、城内戦中にスキルでの干渉ができなかったはずですから》

 確かに、言われてみればユウは普通に魔法を使っていたが、色を付けられて消されることもなかった。あれはユウへ干渉できないからだったのか。
 今ユウへの攻撃が少ないのはピアの浄化魔法が切れるのを待っている可能性が高い。ユウの『浄化』ならば、あのドラゴンは消してしまえると警戒は続けている。だが、飛行魔法や直接の接近諸々で動くのは危険だと暁は言う。

 言われている傍から再び飛竜の数体が一斉にユウへと攻撃してきているが、それについては消去の魔法で蝋燭の火を消すように容易く消去する。

《レイナードさんのスキルって?》
《『弾く』でございます》
《魔法属性は?》
《雷属性ですよ》

 おあつらえ向きだなぁと頭を掻いていると、ユウへの攻撃が増えてきたのに気付いてマサシゲ達から心配の声が続々と上がってきた。

《大丈夫なんですが、エミリーさんを止める方法に問題が二点ありまして。鉄材料の加工と、私の認識能力が厳しいんですよね》
《全っ然意味が分からん! 説明しろ!!》

 雨のように炎弾が降ってきた。傘のように頭上で「消去」の魔法を張って、これから使おうと考えている手段について長々と説明する。

《ということなのですが……》
《なるほど。ならば私が〇、〇〇〇〇〇〇〇一秒単位でサポートすればよろしいのですね》
《うん??》
《加工する鉄なら転がってる鎧を練成すれば良いんじゃない?》
《そうでございますね! 装置と発射物は私めにお任せ下さいませ!》

 話が随分と早く纏まってちょっと驚いたが、ユウはそこでエミリーを引きつける役を一任された。
 さっきより飛竜からの攻撃回数が格段に増えてきた。まるでゲリラ豪雨のように灼熱の炎が降ってきて、視界が埋もれている。

 もしかしなくても、本気で殺りに来ているんじゃなかろうか。

 ◇◇◇

 どうして、どうしてよ。
 先程から浴びせても浴びせても、神子は十数分の間、その場から一歩たりとも動きはしない。どれだけ攻撃させても、自分の周りが穴だらけになっても。

 まるでこちらの動きを見透かしているかのように。

 いまだに邪魔な浄化魔法は敷かれたまま。いつまでこの莫大な魔力を使う浄化魔法の巨大サークルを張り続けるつもりなのか。

 さらに飛竜を描いて城下町へと放つ。何匹も打ち落とされて消えていくが、町の方では戦火が上がり始めた。しかし、その町の方にも飛竜を打ち落とす魔法を放っている何者かがいる。

 出来損ない揃いの生徒とす無能な教師共が出しゃばってくるわけがない。何も出来ない無能な騎士共だって、飛竜相手にしようものなら弱者を生贄にして逃げる連中だけのはずだ。

 それなのに、何で!

 ついに浄化の光が薄れる。
 あの巨大な浄化魔法を二〇分以上も張り続けていた女が、杖を付いてついに崩れ落ちた。

 すぐさま足をスキルで復活させる。
 ようやくだ。羽が浄化魔法の範囲内の可能性があって使うことはできなかったが、忌々しい浄化の拘束は解けた。
 エミリーはエンシェントドラゴンを飛び上がらせる。翼を羽ばたかせ、上空へと舞い上がる。

 何もできないまま、何もかもがめちゃくちゃにされるところを、お前達も指を銜えて見ていれば良い!

 かつて自分がそうだったように。
 何もかも失った時のように。
 自分の大好きだった場所を、大事な人達を、そして居場所も、何もかも奪われたあの日の再現を、今王都ここに――!!

 そこに一つ、強く煌く光が瞬いた。

 黒い何かが飛来している。物凄い勢いで。
 びゅんっと黒い塊が掠める。その一瞬に、エミリーは黄金色の瞳で追う。

 一瞬見えたのは、黒い塊に跨る人影。

 首を回す、その瞬間――目の前には円い線の、その内側に見たことのない模様が三つ、縦に整列していた。

 そして拳に携えた少年が、腕を突き出していた。
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