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利己的な医療行為
学園の休日に私は外出した。
無論お供などはいない。というより振り切って来た。
父達は最近通学にも私を馬車に乗せようとしていたが今更だと思う。
貴族の娘にとって決められた所以外を歩く機会など通常あまりない。
あったとしてもせいぜいお供付きで貴族街・繁華街・学園・王城くらいである。
だが、今のフリーダの中身は私で妖精のリオも一緒に居る。
リオ曰く多少の荒事なんて魔法で撃退するから問題ないと言っているから頼もしい。
食い意地から街に来て馬車に轢かれた事があるのが気になるけど。
『色々考えた結果だけど我ながら不純よね。』
『何が?』
『だって結局利己的な気持ちからくる行動だから。』
『別にいいだろ。それで救われる人もいるんだから。』
『まあ、それはそうなんだけど。』
そうこう会話をしているとやがて目的地が見えて来た。教会である。
ここへ出向く事にしたのは自分の医療能力の確認の為だ。
教会の活動にはお布施をもらって治療行為をする事も含まれる。
つまり病院の様な役割も担っていた。
たくさん患者も来るだろうから実践の機会も増えると思った訳だ。
「すみません。私はフリーダ・フォン・ディーツェと申します。
こちらの責任者の方はいらっしゃいますでしょうか。」
「ディーツェというと……侯爵家の方で?
私が司教のウッツです。一体どの様なご用件でしょうか?」
「はい。突然ですが私、多少回復魔法を使えまして。
この能力を伸ばしたいと思っているんです。
それで少しご相談に乗っていただけないかと思いまして。」
私の話を聞こうとウッツ司祭が礼拝堂の奥の応接室に通してくれた。
へー、こんな所あるんだ。
苦しい時にしか来ないんだから我ながら不信心にも程があるよね。
「……なるほど、ではお嬢様は将来治療術師として身を立てたいと。」
「ええ、まあ。少し訳がありまして。
知識と経験を手に入れたくとも、私には身分で使えるコネが無かったのです。」
司教はお供も連れないで一人でここに来た私に何か察した様子だった。
賃金はいらないのでしばらく手伝わせてもらえないかと頼んだ私を見て返事をする。
「わかりました。治療術師は何人いてもありがたいものです。
金銭的な報酬は出せない代わりに私で出来る範囲で回復魔法を指導しましょう。」
「ありがとうございます!」
「とりあえずフリーダ様の回復魔法の腕を見極めないといけませんね。
その力次第で私から教えられる事も変わってくるでしょう。」
その後、協会に併設されている医療院に連れてこられた。
診察室と簡易的なベッドがあってその間を治療術師達が回っていた。
司祭に治療術師の一人を紹介されて簡単な治療の実践に入ろうとすると緊急の患者が
教会にやって来た。
運び込まれた人は簡易的な治療というレベルの怪我ではなかった。
肘から先の腕が無い。そして内臓を酷く傷つけられたのか虫の息であった。
連れてきた人が言うには、この人物は交易商人との事だった。
元々剣が使えたので近くの街への護衛料を惜しんで魔獣に襲われたらしい。
王都からさほど遠くない場所だった事が幸いした様だ。
「これはいかん。早速手伝っていただけますか?」
「はい!」
内臓の傷を治すのが先なのでベテランの治療術師がそちらを。
私は腕の傷を塞ぐ方を担当する。
魔法があれば止血くらいならと思って患部と向き合った。
しかし、人体の断面という傷口を見ると思った以上にグロテスクだった。
私は武道はやっていたが医療はからきしである。
傷を塞ぐというイメージでやってみたが中々うまくいかない。
内心、焦っているとリオの声が脳内に響いた。
『何しているんだ。とっとと直してやれよ。』
『やってるわよっ!』
『じゃ、何で手間取ってんだ。』
『何でって、傷を塞いでから……』
『余計な事考えてねえか?
単純に俺の時みたいに治れって念じて魔力を注ぎゃいいだろ。』
『え?』
『大体お前、俺を治した時だって細かい事考えてなかったろ。』
『……確かに。』
頭を空っぽにしてぼんやりと回復する事だけを願い魔力を注ぐ。
すると傷口に変化が起きた。自分の時やリオの時みたいに逆再生が始まる。
流れた血が戻って消えたはずの肘から先の肉が上腕から生えてきた。
戻りようがない欠損部分は生えて来るんだ。
そんな事を漠然と考えながら傷口を見つめて魔力を注ぐ。
血管や筋肉が再生していく様がじっくりと見えてしまう。
間近で見ると気持ち悪い……。
そんな考えで申し訳ないが吐き気を感じ、しかめっ面のまま癒し続ける。
だが治療術師の人とウッツ司祭は目を飛び出さん限りに見開いて驚いていた。
「な、何という……。」
「す、凄い……こんな治り方初めて見た。」
後で知った事だが、こういうレベルの負傷の場合傷口を塞いで命を繋ぐというのが
この世界の標準治療だった様だ。
私の様に腕そのものをまるまる再生するのは司祭も見た事が無かったらしい。
しかしそんなことを知らない私は一生懸命に念じつつ魔力を送っていた。
無論お供などはいない。というより振り切って来た。
父達は最近通学にも私を馬車に乗せようとしていたが今更だと思う。
貴族の娘にとって決められた所以外を歩く機会など通常あまりない。
あったとしてもせいぜいお供付きで貴族街・繁華街・学園・王城くらいである。
だが、今のフリーダの中身は私で妖精のリオも一緒に居る。
リオ曰く多少の荒事なんて魔法で撃退するから問題ないと言っているから頼もしい。
食い意地から街に来て馬車に轢かれた事があるのが気になるけど。
『色々考えた結果だけど我ながら不純よね。』
『何が?』
『だって結局利己的な気持ちからくる行動だから。』
『別にいいだろ。それで救われる人もいるんだから。』
『まあ、それはそうなんだけど。』
そうこう会話をしているとやがて目的地が見えて来た。教会である。
ここへ出向く事にしたのは自分の医療能力の確認の為だ。
教会の活動にはお布施をもらって治療行為をする事も含まれる。
つまり病院の様な役割も担っていた。
たくさん患者も来るだろうから実践の機会も増えると思った訳だ。
「すみません。私はフリーダ・フォン・ディーツェと申します。
こちらの責任者の方はいらっしゃいますでしょうか。」
「ディーツェというと……侯爵家の方で?
私が司教のウッツです。一体どの様なご用件でしょうか?」
「はい。突然ですが私、多少回復魔法を使えまして。
この能力を伸ばしたいと思っているんです。
それで少しご相談に乗っていただけないかと思いまして。」
私の話を聞こうとウッツ司祭が礼拝堂の奥の応接室に通してくれた。
へー、こんな所あるんだ。
苦しい時にしか来ないんだから我ながら不信心にも程があるよね。
「……なるほど、ではお嬢様は将来治療術師として身を立てたいと。」
「ええ、まあ。少し訳がありまして。
知識と経験を手に入れたくとも、私には身分で使えるコネが無かったのです。」
司教はお供も連れないで一人でここに来た私に何か察した様子だった。
賃金はいらないのでしばらく手伝わせてもらえないかと頼んだ私を見て返事をする。
「わかりました。治療術師は何人いてもありがたいものです。
金銭的な報酬は出せない代わりに私で出来る範囲で回復魔法を指導しましょう。」
「ありがとうございます!」
「とりあえずフリーダ様の回復魔法の腕を見極めないといけませんね。
その力次第で私から教えられる事も変わってくるでしょう。」
その後、協会に併設されている医療院に連れてこられた。
診察室と簡易的なベッドがあってその間を治療術師達が回っていた。
司祭に治療術師の一人を紹介されて簡単な治療の実践に入ろうとすると緊急の患者が
教会にやって来た。
運び込まれた人は簡易的な治療というレベルの怪我ではなかった。
肘から先の腕が無い。そして内臓を酷く傷つけられたのか虫の息であった。
連れてきた人が言うには、この人物は交易商人との事だった。
元々剣が使えたので近くの街への護衛料を惜しんで魔獣に襲われたらしい。
王都からさほど遠くない場所だった事が幸いした様だ。
「これはいかん。早速手伝っていただけますか?」
「はい!」
内臓の傷を治すのが先なのでベテランの治療術師がそちらを。
私は腕の傷を塞ぐ方を担当する。
魔法があれば止血くらいならと思って患部と向き合った。
しかし、人体の断面という傷口を見ると思った以上にグロテスクだった。
私は武道はやっていたが医療はからきしである。
傷を塞ぐというイメージでやってみたが中々うまくいかない。
内心、焦っているとリオの声が脳内に響いた。
『何しているんだ。とっとと直してやれよ。』
『やってるわよっ!』
『じゃ、何で手間取ってんだ。』
『何でって、傷を塞いでから……』
『余計な事考えてねえか?
単純に俺の時みたいに治れって念じて魔力を注ぎゃいいだろ。』
『え?』
『大体お前、俺を治した時だって細かい事考えてなかったろ。』
『……確かに。』
頭を空っぽにしてぼんやりと回復する事だけを願い魔力を注ぐ。
すると傷口に変化が起きた。自分の時やリオの時みたいに逆再生が始まる。
流れた血が戻って消えたはずの肘から先の肉が上腕から生えてきた。
戻りようがない欠損部分は生えて来るんだ。
そんな事を漠然と考えながら傷口を見つめて魔力を注ぐ。
血管や筋肉が再生していく様がじっくりと見えてしまう。
間近で見ると気持ち悪い……。
そんな考えで申し訳ないが吐き気を感じ、しかめっ面のまま癒し続ける。
だが治療術師の人とウッツ司祭は目を飛び出さん限りに見開いて驚いていた。
「な、何という……。」
「す、凄い……こんな治り方初めて見た。」
後で知った事だが、こういうレベルの負傷の場合傷口を塞いで命を繋ぐというのが
この世界の標準治療だった様だ。
私の様に腕そのものをまるまる再生するのは司祭も見た事が無かったらしい。
しかしそんなことを知らない私は一生懸命に念じつつ魔力を送っていた。
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