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0.プロローグ
しおりを挟む魂が弾け飛ぶ音が聞こえた。
いや、正確には聞こえた気がした、だ。
自動車に轢かれたのはわかった。そのまま、ブロック塀との間でぐちゃりと押し潰されたのか。
もう脳味噌は使い物にならないだろうというのに、ひどく頭は冷静だった。流血は止まらず、体温もみるみる下がっていくのがわかる。嗚呼、このまま死ぬのだろうな。
呆れるほど冷静で、死にそうな状況であるのに笑いが込み上げてきた。まだ状況が理解できていないのかもしれなかった。
だけど、いくら理解できていなくても現実は現実だ。
……現に俺は今、交通事故で死のうとしているわけだし。高齢者ドライバーの運転する車に跳ねられ、ブロック塀と車との間でぺちゃんこなんていかにも夕方のニュースでありそうだ。
せめて来世では大金持ちか美男子になりたいな、とか思う。某姉妹の男バージョンみたいな。
彼女は1度もいなかったし、高校生の身では貯金も言うほどない。
――1度でいいから、ハーレムとか体験してみたかったな。
そんな馬鹿らしい独白を最後に、伊万里千鶴は息絶えた。
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