マイホーム戦国

石崎楢

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第35話:激戦!!沢城の戦い(3)

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芳野城。
かつて宇陀の名家である芳野家で居城であった。
今は秋山の支城となっている。

「交代の時間だ。」
「おっ!! やったぜ、これで眠れる。」
城の搦手門の見張りが交代になった。
その見張りの兵は毒蝮の金蔵。

そこより少し離れた吉野方面への峠の砦では・・・
「手間がかかったぜ・・・。」
鳥兜の源次たちが砦を制圧していた。
更にその砦に入っていく軍勢。
鷲家計盛の軍が沢城の搦手より山を抜けて到着したのだ。

夜明けまではもう少しだな・・・

鷲家計盛は夜空を見上げると深呼吸をした。
団牌を手にし標槍や飛刀で装備した盾隊を中心にした部隊を見つめる。

訓練はしたが、この装備による実戦は初めてだ。
だが・・・失敗は許されない。


その頃、布施城を出発して宇陀へと向かっていた布施行盛の軍は、途中で夜襲に遭っていた。
「くそッ!! 十市が夜襲とは!!」
焦りを隠せない行盛。
十市軍五百の兵による夜襲で布施軍は大混乱に陥っていた。

「布施め・・・易々と通させはせんぞ。」
十市軍を指揮する十市家家臣大木重介は陣頭に自ら立つ。
次々と布施軍の兵を斬り倒す姿を見せることで兵たちを鼓舞していた。

「単純な奴らよ・・・心の穴を突けばすぐに出てきよる。」
その様子を遠くから眺めているのは啄木鳥の権八だった。


「布施の軍が昼過ぎにはこちらに到着します。さすれば高山軍など造作もないでしょうな。」
関戸萬斎は言うも
「・・・」
秋山直国は座ったまま寝ていた。
「弥三郎、純忠も休んでおけ。明日の昼からが勝負じゃ。」
萬斎は言うも
「奴らの策が気掛かりですので・・・。」「一晩ぐらい平気でございます。」
弥三郎と純忠は寝ずに待機していた。


沢城では
「ぐがぁ~!!」
大広間で清興は爆睡している。
「すやすや・・・」
重友も穏やかな表情で眠っている。
一馬と義成は城の大手門の前で陣を構え夜襲に備えている。

そんな中、光秀は六兵衛と作戦を立てていた。
「なるほど・・・。」
六兵衛は感嘆の声を上げる。
「ただ・・・全ては十市軍が布施軍をどれだけ邪魔できるかどうか・・・。」
光秀は立ち上がった。
「では六兵衛殿。陣頭指揮は任せますぞ。」
「わかりもうした。」
光秀は大広間を出ていった。

明智光秀殿か・・・大した御方だ。

六兵衛は空を見上げた。
暗闇の中、沢城の搦手門から光秀に率いられた二百の兵が井足城へと出ていった。

その様子はすぐに秋山軍に伝わった。
「布施を警戒して井足に兵を回したか・・・。」
萬斎はしてやったりと笑みを浮かべた。


そして明け方になった。
芳野城では
「ぐはッ・・・!?」
守将の秋山家家臣西山伝六が血を吐いて倒れた。
焔の陣内が本丸の館にて暗殺に成功したのだ。
「曲者じゃァー!!」
その場にいた家臣たちの声で兵たちの意識が本丸に向いた。
そこに
「いらっしゃいませ♪」
金蔵が搦手門を開けた。

「ゆくぞ!!」
「盛大な花火じゃ♪」
陣内が逃げ回りながら本丸の館に火をつけた。
事前に準備しておいた火薬に引火し本丸の館が大爆発を起こす。
混乱する芳野城の守兵たちは、団牌と標槍や飛刀で武装された山田軍の兵に、抵抗できないまま次々と倒されていく。


「奇襲でございます。芳野城に山田軍が奇襲をかけております!!」
秋山軍の本陣に芳野城の危機が伝えられた。

「井足正栄はおるか!!」
「ここに!!」
萬斎は井足正栄を呼び寄せた。

「兵五百を率いて芳野城に向かえ!!」
「はッ!!」
正栄は五百の軍勢で芳野城救援に向かった。

朝になった。
沢城の門が開き、高山軍が城の前に陣を敷いた。


「決戦じゃな。」
秋山直国は沢城を見据えながらつぶやく。
「兵力差は決定的・・・今日で決めましょうぞ。」
萬斎は言うと馬に乗った。

そのときだった。
「後方からこちらに向かってくる軍があります。」
伝令が駆け込んできた。
「ほう・・・」
「布施の旗でございます。」

勝った・・・この戦は勝ったぞ・・・

秋山直国は満面の笑みを浮かべて叫んだ。
「全軍、沢城に向かって突撃じゃ!!」

秋山軍は一斉に動き出す。

その様子を見て笑う伝令・・・啄木鳥の権八であった。

そして後方から向かってきた布施軍であるはずの軍は秋山軍の背後を急襲する。

「私の山田家での初陣だ!!」
先陣を切る光秀が槍を振るって秋山軍の兵たちを薙ぎ倒していく。

「布施軍ではないぞ、山田軍じゃ!!」
慌てふためく萬斎の声と共に秋山軍は混乱する。
光秀率いる二百の軍により秋山軍の陣形に大きな穴が開いた。

「行くよ・・・全軍突撃だ!!」
重友の号令で高山軍は秋山軍に正面から突撃していく。
更に右からは六兵衛の軍が、左からは清興の軍が攻撃を仕掛ける。

「四方から・・・じゃと・・・」
萬斎はうろたえる。
「な・・・何とかせい!!」
直国はただ怒鳴り散らすのみ。

情けない姿だ・・・

その様子を見ながらため息をつく純忠。
しかしその前で秋山軍の兵たちがあっという間に倒されていった。

「秋山直国はどこだ?」
兵たちを倒したのは二本の槍を構えた男。

滝野・・・芳野一馬か♪

純忠は二本の鉄鏈を構えて一馬の前に立ちはだかる。

「貴様が平尾純忠か・・・。」
「芳野一馬ァ!!」
二人はぶつかり合った。


「なんということだ。これでは兵力の絶対的優位も意味がない。」
弥三郎は大弓を構えて次々と高山軍の兵を射抜いていく。
しかし・・・
「がはッ!?」「ぐえッ!?」
弥三郎の配下の十名の騎馬兵たちが次々と喉元に矢を受けて落馬した。

「義成・・・大きくなったな。」
弥三郎の視線の先には
「諸木野ォ・・・やっと・・・やっとだ・・・。」
義成が弓を構えていた。

「秋山直国ィー!! どこだ!!」
清興は三叉槍で群がる秋山軍の兵を蹂躙しながら本陣を目指していた。

「あ・・あれは島清興・・・。」
鬼神のような清興の姿を見つけて直国は腰を抜かす。
「と・・・殿、お逃げくだされ・・・。」
そこに重傷を負ったはずの黒木鉄心が現れた。

「関戸様、殿を頼みますぞ。」
「わ・・・わかった。」
萬斎は配下の兵と共に直国を守りながら逃げていく。

「黒木・・・鉄心か。」
清興は目の前に立ちはだかる鉄心に驚く。
「島清興・・・一度戦ってみたかったのじゃ。」
鉄心は鉄棒を構える。

この男・・・殺すには惜しい・・・

清興も三叉槍を構える。

「ゆくぞォォォ!!」
鉄心は二本の鉄棒を両手で振り回しながら清興に飛びかかっていった。


芳野城では

バ・・・馬鹿な・・・
井足正栄は立ち尽くしていた。

芳野城が山田軍に奪われていた。
本丸の館からは黒い煙が上がっている。

計られたか!!
正栄は慌てて馬首を転じて秋山の本軍へ合流しようとするも

「殲滅だ!!」
計盛の号令と共に芳野城から、更には周囲の山々からも伏兵が現れて正栄の軍に襲い掛かる。

吉野の国人衆の力を舐めるなよ・・・

計盛は馬に乗ると槍を手に城門から飛び出していった。


「ハァッ!!」
光秀は乱戦の中で秋山直国だけを探していた。

あれか・・・

そして兵たちに囲まれた一人の大将らしき男・・・直国を見つけた。

「秋山直国覚悟!!」
光秀は槍を振り回しながら直国めがけて突っ込んでいく。
群がる兵を蹴散らしていくも

「!?」
光秀の槍を防いだのは萬斎だった。
「ワシの名は関戸萬斎・・・秋山四天王の名に懸けて殿には指一本触れさせん。」
「山田家家臣明智十兵衛光秀・・・参る!!」

ここでも激闘の一騎打ちが始まった。

乱戦状態となり激しさを増すだけの戦い・・・
果たして勝ち名乗りを上げるのは・・・

強者たちの宴は始まったばかりであった。
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