マイホーム戦国

石崎楢

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第154話:大陸の陰

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なんとも心地よい朝だな・・・

私は目を覚ました。
左隣で寝息を立てている真紅。鈴鹿御前と化した真紅は激しかった。
搾り取られてミイラになるかと思った程である。
ただ私も意識を乗っ取られて坂上田村麻呂として反撃に出た。
多分、絶対に侍女たちなどは目を覚ましてしまっただろうと思う。
ともかくそんな頑張った彼女を起こさないように静かに寝床を離れた。

「殿、おはようございます。」
小姓の蒲生鶴千代が着替えを手伝ってくれる。

たった数日の永禄最強大武道大会のはずがとても長く感じられた。
その後の顛末は一応は山田家の優勝ということで今後も室町幕府存続の方向となった。
ただ義栄公の大事の際には私が代行を務めるのである。


そして大広間で家臣たちを交えての朝食。
いつもの重治や慎之介、英圭、大雅だけではない。
ここのところずっと共にいなかった清興や一馬、義成、楠木正虎、更には三好長虎もいる。

「おはよ・・・パパ。」
美佳が眠そうな目をこすりながらやってきた。
岳人はお市が妊婦ということで別室でくつろいでいる。


「ふああ・・・良く寝たわ。生まれ変わった気分だぜ!!」
五右衛門がざんばら髪でやってきた。慶次もあくびをしながらついてきている。
大嶽丸の呪縛から解放されたことで生気に満ちた顔つきになっていた。

「あ、五右衛門。やっぱイケメンじゃん♪」
美佳がデレデレしながら五右衛門に声をかける。

「俺は構わんぞ。美佳姫を嫁にして殿様の子になるのはな・・・ワハハハ!!」
高笑いする五右衛門に対し殺気立つ一馬と義成。

ああ・・・なんか久しぶりに大和に帰りたくなったな・・・

私は和やかな雰囲気の中である決意を固めようとしていた。


数日後、大和国多聞山城。

「あなた・・・久しぶりね・・・」
どことなく冷たさを感じる朋美との再会。

「いやあねえ・・・色々あったからさあ・・・ハハハ・・・でもさ・・・」

確かに単身赴任で側室を連れて行った私に対して怒りがあるだろう。
だが、私の真実はこうなのだ。

「私にとって一番大事なのは妻であるキミなんだ。都は危険だからキミを連れていくわけにはいかなかった。」
「わかっている・・・わかっているけどスネるこっちの気持ちもわかってよ。」
「ああ、それじゃ久しぶりに我が家に帰ろうか?」
「え・・・ホント!?」


こうして宇陀川城に戻った私と朋美。、もちろんサスケも一緒だ。
城下町の人々は歓迎の祭りを三日三晩繰り広げてくれた。

そして私も我が家で久しぶりに朋美を抱いて三日三晩頑張った。
様々な感情をぶつけながら激しく求めてくる妻に私の全てを話した。
どうして私たちがこの世界に飛ばされたかということを。
無論、真紅のことも正直に話した。

「卑猥な動画ばかり見ていたあなたがあんな綺麗系のコに今まで手を出さなかったのが不思議よね・・・。まあ坂上田村麻呂がヤッたということで許して・・・許せない・・・もう一回するよ♥」

限界のはずだがリトル大輔は意外とすぐに元気になるのだから始末が悪いのであった。


4日目の晩、宇陀川城に高山重友と赤埴信安を呼んだ。

「いやあ、大輔殿のおかげで宇陀はもちろん大和全域が穏やかですぞ。」
酒を酌み交わしながら私と信安は語り合う。

「重友くんも本当に大変だったよな。よく頑張っているよ。」
私が肩をポンポンと叩くと嬉しそうな重友。

「畿内もあとは摂津のみでございます。高山家は兵を鍛えていつでも出陣できますぞ。」
「うんうん、この凛々しい若武者ぶり・・・友照殿も喜んでおるだろうな。」
「はい、父上は天から主と共に私をいつも見守ってくれてます。」

そんな重友の姿に朋美も信安も思わず笑みを浮かべてしまう。

「ところで重友くんにはお願いがあるのだが・・・」
「なんなりと!!」
「今、山田家の領地となっている国々、若狭は清興、河内は長虎殿、和泉は正虎とそれぞれ守護代として任せているのだが、いずれは摂津をキミに任せたいのだ。」
「な・・・なんと・・・」

重友は驚きと喜びが入り混じった顔で私を見た。
元は摂津国人であり、私がこの時代に飛ばされてからずっと支えてくれた高山家への恩返しの気持ち。

「父上も喜びまする・・・。宇陀の優しき民と別れるのは辛いものでございますが。」
「それで宇陀全域は赤埴家に治めてもらおうと思っているのです。」
「なんですとォォォ!?」

さすがの赤埴信安も驚きの声を上げてしまった。

「ただこの宇陀川城だけは私の手元に置かせてください。」
「構いませぬ・・・いつでも帰ってきてください。たまにはこうやって大輔殿と酒を酌み交わすのが楽しいものですからな。」

そして二人が帰った後、4日目はさすがに無理だと思ったがリトル大輔は刺激によって元気を取り戻す。
特に今回は何となく予感がした。
この前に始めて真紅を抱いた時もそうだった・・・デキたかもしれないぞ。


「なあ、朋美?」
「どうしたの・・・」

我が家から二人で眺める城下町の景色。
あの田畑と川と森しかなかった頃を思い出す。

「私が幕府を引き継いだら奈良に・・・いや・・・大和に幕府を移そうと思っているんだけど。」
「え? いいんじゃない。でもココじゃ不便よ。」
「わかっているって。普通に多聞山城で開くってことだ。」
「そうよね・・・それにしても思ったよりあなたが変わっていなくて良かったわ。夜は・・・パワーアップって感じだったけどね。」

そんな朋美の言葉が嬉しかった。夜の話ではない。
変わらなくてはいけない面も多いが、変わってはいけないところもあるのだ。

「わんわんわん♪」
「ぶふぉお~!!」

サスケがツキノワグマのシンイチと仲良くじゃれあっている。
神出鬼没な熊だよな・・・。


「おお、殿。やっと戻ってまいりました!!」
そこに千之助がやってきた。

「あら、千之助・・・楓ちゃんが結婚してショックで家出したんじゃ?」
「朋美様・・・いや・・・朋美御前様。なんということを・・・確かにショックで何回か死のうかと思いましたけどね・・・。ってそうではございませぬ。やはり疋田様や明智様がおっしゃられていた通りでございます。」

朋美の言葉に大きく反応しながら千之助が私に言ってきたこと・・・

「大陸から・・・明国から・・・流れ着いている者たちが増えております。」
「そうか・・・。」

私は千之助の言葉を受けると嘆息するしかなかった。
やはり景兼や光秀の言っていたことは正しかったということか・・・


「越前、若狭は絶対に敵対せぬように・・・都への防壁に成り得るからですぞ。」
景兼の言葉。

「我らはあの色装束の男たち、大陸の言葉を使うということからこの日ノ本を乗っ取ろうとしているのではないかと考えております」
光秀の言葉。


一難去らずにまた一難が増えていく・・・

そんな沈みがちな私の背中を朋美が笑顔で叩いた。

「征夷大将軍の生まれ変わりならこの国を守るのが使命。わたしも妻として覚悟はできているし、側室だろうが愛人だろうが受け入れるわ。だからやれるだけやったらいいじゃん。この時代に飛ばされてきた使命としてね。」

何より心強い言葉・・・
長い戦国時代の不自由な暮らしの中で朋美も力強い女になっていたということだ。

「ああ・・・やるぞ・・・とことんやってやるさ!!」

私は朋美の手を強く握りしめるのだった。

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