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第一章 目覚め
[I] メザメ
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「ーよ。君には戦闘の才能がある。」
知らとっっsない老人は俺にそう言った。
「しかし、残念よ。君が戦いをする時は来ないだろうからな。」
老人は俺を優しく撫で、苦笑いを見せた。
「戦いをしないのは良いことだ。生死を選ぶ瞬間が来ないのは嬉しいことよ。誰かを傷つけたり、誰かに傷ついたりする必要がない、そんな平穏が君を守ってくれるだろうからな。」
これが俺に残った最後の、いやー、最初の記憶である。
突然の震えに目が覚めた俺が見た光景は、闇、だった。どれくらい倒れていたのか、体の感覚が鈍くなっている気がした。
体に何かが乗っかっているような、不愉快で不便な感覚があったが、痛みや苦しみはなかった。
俺は体の異常に違和感を感じながらも、何も出来ず、ただ横たわったまま、体の感覚が戻る時を待った。
少し時間がたち、真っ先に手の感覚が戻ってきた。指の動きが感じ取れた時の気持ち悪さは、今でも言葉では上手く表せない不愉快な感覚だった。
「き、きもちわるぃ…」
目を覚ました俺が初めて放った言葉であった。
次に足の感覚が戻ってきた。足の先から腰まで、ゆっくりと無数の虫が這い上がってくるような感触がした。痒くて抵抗はあったが、なぜか快楽を覚えた。
「ふう、なんとか、動けそうだな。」
ゆっくり体を持ち上げまわりを見まわした。闇に慣れたのか、視野は広がったが、ただ闇が遠くなっただけであった。
一歩踏み出そうとした瞬間、目が覚める直後に感じた異質な振動が体を覆った。地面は揺れてなかった、気がした。俺の体だけが、微弱に、だが強力に振動していた。
「止まった…」
振動が止まり、不気味な静寂だけが残った。
「とりあえず出口を探すしかないか。」
無限に広がっているような闇の中をゆっくりと歩き出した。一歩一歩、進むたびに自分の足音だけが響いた。
数分くらい同じ方向で歩いていくと、足元に何か引っかかった。足の指に辛い痛みが走った。
「っ!なんだこれは…」
ゆっくり視線を下げ足元を見下ろした。そこには鋭い刃物が落ちていた。先端には血のような黒いものが固体化してついていた。
「刃物か、武器として使えそうだな。何があるかわからない以上、持っといて損はなしか。」
刃物をみて意外と冷静でいられたことに気づいたのは、大分先のことであった。当時は、普通の人間が刃物を見てまず驚くという考えは持っていなかった。
「痛みはすぐ止んだな。意外と丈夫なのか、俺。」
そう独り言を呟いていると闇の中から何か不気味な鳴き声が聞こえた。鼓膜を擦るような気持ち悪さを感じさせる鳴き声、しかし、以前どこかで聞いたことのある声だった。
「魔物…」
知らないはずの単語が突然頭に浮かんだ。魔物、それは人間の敵であり、天敵である悪の生物。それに人間は怯え、苦しめられ、殺されてきた。そして、俺はその魔物という存在に大きな怒りを持っていた。
「殺す。殺さないといけない気がする。」
俺は鳴き声の発生源を探して、またゆっくり前へと進んだ。
最初の鳴き声が聞こえてから少し時間がたち、鳴き声の発生源がどこなのか曖昧になってきたその時、右の腰に強い痛みが襲った。
「いたっ!」
腰には何者かの爪痕が残っていた。血は出てない、やはり、体は頑丈のようだ。
(一体どこから攻撃されたんだ。傷のできた右なのか?)
そう思って右の方向に目を向けた瞬間、今度は背中から攻撃を受けた。今度は、刺された。
「っ!!」
言葉が出ないほどの激痛が走った。体は頑丈でも刺されたら痛いのか。思考がまともに出来ない、俺の頭には「痛い」という単語しか残っていなかった。
思いっきり右手に持っていた刃物を後ろに向かって大きく振った。しかし、まったく手応えがなかった。
体を大きく振ったことで腰にできた爪痕から血が滲んできた。背中に刺されたものは、筋肉の動きに合わせて回転し、より深く、そしてより強く俺に痛みを与えた。
「クソが!どこだ!」
怒りに身を任せ、自暴自棄に刃物を振るった。一回振るたび体の痛みは増していくばかり、近くにいるはずの魔物に攻撃をくらわせることはできなかった。
あまりの痛みに攻撃をやめたその瞬間、小さい笑い声が聞こえた。
「はぁ、はぁ、クソが…」
その笑い声に覚えがあった。しかし、どこで聞いたのか思い出せない。忘れてはいけない記憶のような気がしたが、どうしても思い出せない。何か、何かが足りない気がした。
「お前は弱い!戦えない人間は地面に落ちた蝿の死体より醜い!」
声が聞こえた瞬間。体が勝手に声が聞こえた方向を向き、右手の刃物をそこに向かって投げた。
体が勝手に反応したのか、それともただのイラつきで、適当に投げたのか、よくわからなかった。
「い、痛い!!」
真正面から悲鳴が聞こえた。運良くその魔物に命中できたみたいだ。しかし、これで俺が持っている武器は…
「いや、背中にもある。」
俺は思いっきり腕を曲げ、背中に刺さっていた何かを取り、悲鳴が聞こえる方向へ走った。
「今度は俺の番だ…!」
以前より動きが軽くなっていた。頭の中も整頓され、思考がまとまりを持つようになった。
痛みも消えていた。快楽すら覚えた。絶対勝てるという自信感と、絶対殺すという殺意が強く脳を刺激し、自分の中の戦いを思い出せた。
「死ね!」
そう言いながら、背中に刺さっていた鋭い木の破片を持った左腕を思いっきり前へ伸ばした。
プシュっという音と共に、左手には柔らかい何かが刺さったような感触が送られてきた。この攻撃は魔物の右目を失わせた。
「俺には、戦いの才能というものがあった。いや、ある。思い出した。戦いとは何か、闘いとは何か。」
俺はゆっくりと左腕を捻った。
「思い出した。お前ら魔物が俺に、俺たちに何をしたのか。」
醜い悲鳴が耳を苦しめた。
「アリーゼを返せクソやろう」
静寂が戻った。
知らとっっsない老人は俺にそう言った。
「しかし、残念よ。君が戦いをする時は来ないだろうからな。」
老人は俺を優しく撫で、苦笑いを見せた。
「戦いをしないのは良いことだ。生死を選ぶ瞬間が来ないのは嬉しいことよ。誰かを傷つけたり、誰かに傷ついたりする必要がない、そんな平穏が君を守ってくれるだろうからな。」
これが俺に残った最後の、いやー、最初の記憶である。
突然の震えに目が覚めた俺が見た光景は、闇、だった。どれくらい倒れていたのか、体の感覚が鈍くなっている気がした。
体に何かが乗っかっているような、不愉快で不便な感覚があったが、痛みや苦しみはなかった。
俺は体の異常に違和感を感じながらも、何も出来ず、ただ横たわったまま、体の感覚が戻る時を待った。
少し時間がたち、真っ先に手の感覚が戻ってきた。指の動きが感じ取れた時の気持ち悪さは、今でも言葉では上手く表せない不愉快な感覚だった。
「き、きもちわるぃ…」
目を覚ました俺が初めて放った言葉であった。
次に足の感覚が戻ってきた。足の先から腰まで、ゆっくりと無数の虫が這い上がってくるような感触がした。痒くて抵抗はあったが、なぜか快楽を覚えた。
「ふう、なんとか、動けそうだな。」
ゆっくり体を持ち上げまわりを見まわした。闇に慣れたのか、視野は広がったが、ただ闇が遠くなっただけであった。
一歩踏み出そうとした瞬間、目が覚める直後に感じた異質な振動が体を覆った。地面は揺れてなかった、気がした。俺の体だけが、微弱に、だが強力に振動していた。
「止まった…」
振動が止まり、不気味な静寂だけが残った。
「とりあえず出口を探すしかないか。」
無限に広がっているような闇の中をゆっくりと歩き出した。一歩一歩、進むたびに自分の足音だけが響いた。
数分くらい同じ方向で歩いていくと、足元に何か引っかかった。足の指に辛い痛みが走った。
「っ!なんだこれは…」
ゆっくり視線を下げ足元を見下ろした。そこには鋭い刃物が落ちていた。先端には血のような黒いものが固体化してついていた。
「刃物か、武器として使えそうだな。何があるかわからない以上、持っといて損はなしか。」
刃物をみて意外と冷静でいられたことに気づいたのは、大分先のことであった。当時は、普通の人間が刃物を見てまず驚くという考えは持っていなかった。
「痛みはすぐ止んだな。意外と丈夫なのか、俺。」
そう独り言を呟いていると闇の中から何か不気味な鳴き声が聞こえた。鼓膜を擦るような気持ち悪さを感じさせる鳴き声、しかし、以前どこかで聞いたことのある声だった。
「魔物…」
知らないはずの単語が突然頭に浮かんだ。魔物、それは人間の敵であり、天敵である悪の生物。それに人間は怯え、苦しめられ、殺されてきた。そして、俺はその魔物という存在に大きな怒りを持っていた。
「殺す。殺さないといけない気がする。」
俺は鳴き声の発生源を探して、またゆっくり前へと進んだ。
最初の鳴き声が聞こえてから少し時間がたち、鳴き声の発生源がどこなのか曖昧になってきたその時、右の腰に強い痛みが襲った。
「いたっ!」
腰には何者かの爪痕が残っていた。血は出てない、やはり、体は頑丈のようだ。
(一体どこから攻撃されたんだ。傷のできた右なのか?)
そう思って右の方向に目を向けた瞬間、今度は背中から攻撃を受けた。今度は、刺された。
「っ!!」
言葉が出ないほどの激痛が走った。体は頑丈でも刺されたら痛いのか。思考がまともに出来ない、俺の頭には「痛い」という単語しか残っていなかった。
思いっきり右手に持っていた刃物を後ろに向かって大きく振った。しかし、まったく手応えがなかった。
体を大きく振ったことで腰にできた爪痕から血が滲んできた。背中に刺されたものは、筋肉の動きに合わせて回転し、より深く、そしてより強く俺に痛みを与えた。
「クソが!どこだ!」
怒りに身を任せ、自暴自棄に刃物を振るった。一回振るたび体の痛みは増していくばかり、近くにいるはずの魔物に攻撃をくらわせることはできなかった。
あまりの痛みに攻撃をやめたその瞬間、小さい笑い声が聞こえた。
「はぁ、はぁ、クソが…」
その笑い声に覚えがあった。しかし、どこで聞いたのか思い出せない。忘れてはいけない記憶のような気がしたが、どうしても思い出せない。何か、何かが足りない気がした。
「お前は弱い!戦えない人間は地面に落ちた蝿の死体より醜い!」
声が聞こえた瞬間。体が勝手に声が聞こえた方向を向き、右手の刃物をそこに向かって投げた。
体が勝手に反応したのか、それともただのイラつきで、適当に投げたのか、よくわからなかった。
「い、痛い!!」
真正面から悲鳴が聞こえた。運良くその魔物に命中できたみたいだ。しかし、これで俺が持っている武器は…
「いや、背中にもある。」
俺は思いっきり腕を曲げ、背中に刺さっていた何かを取り、悲鳴が聞こえる方向へ走った。
「今度は俺の番だ…!」
以前より動きが軽くなっていた。頭の中も整頓され、思考がまとまりを持つようになった。
痛みも消えていた。快楽すら覚えた。絶対勝てるという自信感と、絶対殺すという殺意が強く脳を刺激し、自分の中の戦いを思い出せた。
「死ね!」
そう言いながら、背中に刺さっていた鋭い木の破片を持った左腕を思いっきり前へ伸ばした。
プシュっという音と共に、左手には柔らかい何かが刺さったような感触が送られてきた。この攻撃は魔物の右目を失わせた。
「俺には、戦いの才能というものがあった。いや、ある。思い出した。戦いとは何か、闘いとは何か。」
俺はゆっくりと左腕を捻った。
「思い出した。お前ら魔物が俺に、俺たちに何をしたのか。」
醜い悲鳴が耳を苦しめた。
「アリーゼを返せクソやろう」
静寂が戻った。
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