Rule of TRUMP

youki

文字の大きさ
4 / 4
変人と忍ばないくノ一

目が覚めるとそこには少女と男がいて、明らかに自分がいるべきではないと悟ったよ。

しおりを挟む
「今日はよくわからんことがあったな。」

布団を整えて、寝る準備をする。そろそろ梅雨が明けるということもあり、床に追いやられていた毛布も片付けないといけないのだが、面倒くさい。

記憶が抜け落ちていたり、その間に倒れたりと奇妙不可思議なことが起こったのだが、そんなことは脳の片隅においやる。そこであることをふと思い出した。

「そういえばポケットに…」

日本史の授業の始まりに教科書に挟まっていたJOKERのカードを入れっぱなしにしていたのだ。間違って姉さんが洗濯しないように、制服のズボンのポケットに手を入れて探る。しかし、出てきたのは飴のガラだけだった。

……あっれー?

他のポケットも探すが、一向に見つからない。






「ま、いっか。」

そう言うと、整えたはずの布団にダイブしそのまま俺は寝付いた。


















夢を見た。

透き通るように綺麗な銀色の髪、そして蒼く輝く瞳に、頭に犬耳をもつ少女。その両手には携えた現代日本では見かけない、少女には似つかわしくないクナイを持っている。えっ、ラノベや漫画じゃ当たり前だって?こまけぇこたぁいいんだよ。

対して、その少女の前にいる男。黒いローブで顔が隠れていてはっきりとは見えない。しかし、動く口の中からは鋭く尖った牙が覗いている。そして、手には包丁を持っている。

というか、これ……


「夢じゃないっ?!」
 
さっきベッドにダイブして眠ったはずなのに、俺は真夜中の通学路に立っていた。

もはや、夢遊病ってレベルじゃねぇぞ!

「誰だ!!」

俺の声に反応したのか、男が声を荒げる。

「なんで、ここに一般人が……ってキミは!?」

少女も遅れて、こちらに反応する。今思えば、何処かで見たことがあるような……

「優樹くん、早く逃げて!」
「へへへ、隙あり!」

少女は俺に逃げろと警告するが、その瞬間男は少女に接近しお腹に蹴りを入れる。

「かはっ……!?」

人という枠を秀でたスピードとパワーで叩き込まれた蹴りは、少女の体を容赦なく傷つけて吹き飛ばす。そしてそのままこっちへ……





ん?

「うわああああ!こっちへ来んなぁぁぁぁぁ!」

吹き飛ばされた少女を避けようとするが時既に遅し。少女の体は俺に激突するだけにと止まらず、俺も巻き込まれて吹き飛ばされる。

そしてそのまま地球の重力をもろともせずに飛ばされて、住宅街の壁にへと衝突する。 

「うべぇ!」
「ぐっ!」

少女は俺の体がクッションとなったみたいだが、俺は少女と壁にサンドイッチされたせいで、体から鳴ってはいけない音が聞こえた。

そして、壁から床に叩きつけられるが俺はすぐに起き上がる。しかし、少女はお腹を押さえたままうずくまっている。

「はあはあ……ぐっ……。」

男にやられて苦しむ少女の体が一瞬白く輝く。

「しまった………変身が…!」

満身創痍の顔をしている少女は、先ほどの銀髪ではなく、黒髪で犬耳もなくなっていた。さらに、目の前に現れた彼女は、

「日田月 刹那……なんでお前が。」

この辺りでは、かわいいという評判で持ちきりな子だった。

彼女は、俺と同じ学校に通う高校2年生で同級生だ。とはいえ、話したことは一度もない。しかし、彼女が文武両道かつ容姿端麗、性格もよしということなしの正に絵にかいたような女の子であることから、学校はもちろん、この辺りでは知らない人はいないだろう。

「く、くそ……あいつがくる。」

ろくに体が動かないにも関わらず、必死に彼女が手を伸ばす先には、カードが二枚あった。そのカードは狼らしき絵とハート5が描かれたカード、そして昼に俺が見つけたJOKERのカードだった。

「なんでここに…?」
「いいから、早く逃げて……殺されるよ……。」

彼女は、狼のカードを手に取り、ボロボロの体に鞭を打ち、立ち上がる。

「アクテ……ぐっ!?」

しかし、痛みに耐えきれず、その体は地面に伏した。

「その体じゃ無理だろ!」
「いいから、はやく逃げて!無理でもボクはやらなくちゃいけないんだ!」

日田月さんはそう叫ぶ。しかし、こんなところで、言い合いをしている場合ではない。こうしている間にも、

「ハハハ、思っていたより飛んだなぁ…。」

男は、口元を緩ませながら一歩また一歩と、不気味に歩いてきた。包丁をクルクルと指を器用に回している。

そのまま刺さってくれないかな。

このままじっとしていても男に殺されるのだけなので、彼女が取ろうとしていたカードではなく、JOKERのカードを手に取る。


その瞬間、カードは手から腕、そして首から脳へと、なにかが流れ込んできた。

それはカードの使。これを使うのには、難しい儀式や祈り、奇跡などはいらない。一言、たった一言でカードは起動し、使用者にその力を与える。

俺はJOKERを男へと向ける。すると、男はふらふらと歩くのを止め、立ち止まる。

さあ闘いの始まりだ。

俺には戦いの極意はもちろん、運動神経が特別いいわけではない。喧嘩だって大したこともないだろう。日田月さんは動けない、最悪勝てなくとも、時間稼ぎ、もしくは道連れにはしてやる。

そうやるべきことを確認し、男との戦いの火蓋を切るように俺は告げた。


「Active」
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

乙女ゲームは始まらない

まる
ファンタジー
きっとターゲットが王族、高位貴族なら物語ははじまらないのではないのかなと。 基本的にヒロインの子が心の中の独り言を垂れ流してるかんじで言葉使いは乱れていますのでご注意ください。 世界観もなにもふんわりふわふわですのである程度はそういうものとして軽く流しながら読んでいただければ良いなと。 ちょっとだめだなと感じたらそっと閉じてくださいませm(_ _)m

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

魅了の対価

しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。 彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。 ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。 アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。 淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。

処理中です...