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「幻を追い求めて」16話
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「幻を追い求めて」16話
渋々、無駄に高い建物のエントランスを通り、またあの茶色いドアを開けると、リビングのソファは退けられ、謎の青いザラザラしたシートが敷かれていた。
成瀬が眉を顰めているとTシャツと短パンを着た追田がドアを開けて登場した。
「あー、成瀬くん!おかえり!」
「何だよ、これ。」
成瀬がシートを指差すと追田が近くの椅子を退かしてさらに寄ってくる。
「それはヨガシートだよ。」
「ヨガでもするのか?」
「うん。」
じゃあ、と邪魔にならないように成瀬が部屋を出ようとしたところを追田に首根っこを掴まれ、そのままヨガシートの上に座らされた。
「何するんだよ!」
「これは成瀬くんの為なんだよ。」
追田があの時と同じように成瀬の肩を掴む。
「ほら、成瀬くん。無理な態勢で力仕事してるでしょ?健康にも悪いし。」
肩を掴む手に力が入る。
「何より、姿勢がどんどん酷くなっていっちゃう。」
そんなのお前には関係ないだろ。と言おうとしたところで突然前に前屈させられる。成瀬の身体は硬い為、筋肉が悲鳴を上げ始めた。
「おい!い、痛い!」
ゆっくり解していこうね。と追田はいつもの笑みでさらに前に倒そうとする。表情と行いが一致していないのを見て成瀬は恐怖を覚えた。
そして、あの時と同様、肘で追田の身体を押して急いで立ち上がった。追田は成瀬の名前を呼んだが、成瀬は荷物を持って一目散にドアに向かって走った。
「だから!しつこいんだよ、お前!!」
「それで?その後どうしたんすか。」
竹田が卵がふんだんに使われた親子丼を口に入れる。
「ドアの前に荷物置いてやり過ごした。また寝てる時に入って来られたら困るだろう。」
「あー、成瀬先輩もバリケード仲間になったんすねぇ。」
成瀬は苛立ちながらカツ丼の上に七味をいつもより多く振る。
「それに!いつ描いたか知らないが、俺が整体してる様子の絵がテーブルの上に置かれていたんだ!気味が悪くて仕方ない。」
成瀬が一通り愚痴を吐いてお茶を飲んでいると竹田が神妙な面持ちで福神漬けを口にした。
「それにしても、なんで成瀬先輩の絵なんて描くんすかね。思い当たる事なんて学生の頃、授業でお互いの顔を描いただけなんすよね?」
「知らない。頭のおかしい奴のことなんてこれっぽっちも理解したくない。」
竹田の口からコリッコリッと咀嚼音が聞こえる。
「良いんすか?知らないままで。」
成瀬が白身のついたカツを頬張りながら顔を上げる。
「まだ良いアパート見つかってないんですし。暫くは一緒に過ごすんすよね?」
図星を突かれて成瀬は飲み込もうとしたカツが喉を通らなかった。
「どうせこのまま晴れてアパートが見つかって夜逃げできても、また付き纏われるだけっすよ。」
まつ毛が長く、くっきりした瞳がこちらを捉える。
「何が目的なのかとか、ある程度探り入れておいた方が今後の役に立つんじゃないすか?」
いつも上司に小言を言われている竹田とは思えない慎重な発言だった。
「おまえ、賢いな。」
「え。」
竹田が目を丸くしてこちらを見ている。
ーそうだ、そうだな。どうせ変な奴には変わりないんだ。何を知ってももうこれ以上驚かないだろうし、思い切って本人に聞いてみるか。
頬張ったカツの卵が乗っていない部分から心地良いサクサク音がした。
ところがその日、追田はアパートに帰っては来なかった。
渋々、無駄に高い建物のエントランスを通り、またあの茶色いドアを開けると、リビングのソファは退けられ、謎の青いザラザラしたシートが敷かれていた。
成瀬が眉を顰めているとTシャツと短パンを着た追田がドアを開けて登場した。
「あー、成瀬くん!おかえり!」
「何だよ、これ。」
成瀬がシートを指差すと追田が近くの椅子を退かしてさらに寄ってくる。
「それはヨガシートだよ。」
「ヨガでもするのか?」
「うん。」
じゃあ、と邪魔にならないように成瀬が部屋を出ようとしたところを追田に首根っこを掴まれ、そのままヨガシートの上に座らされた。
「何するんだよ!」
「これは成瀬くんの為なんだよ。」
追田があの時と同じように成瀬の肩を掴む。
「ほら、成瀬くん。無理な態勢で力仕事してるでしょ?健康にも悪いし。」
肩を掴む手に力が入る。
「何より、姿勢がどんどん酷くなっていっちゃう。」
そんなのお前には関係ないだろ。と言おうとしたところで突然前に前屈させられる。成瀬の身体は硬い為、筋肉が悲鳴を上げ始めた。
「おい!い、痛い!」
ゆっくり解していこうね。と追田はいつもの笑みでさらに前に倒そうとする。表情と行いが一致していないのを見て成瀬は恐怖を覚えた。
そして、あの時と同様、肘で追田の身体を押して急いで立ち上がった。追田は成瀬の名前を呼んだが、成瀬は荷物を持って一目散にドアに向かって走った。
「だから!しつこいんだよ、お前!!」
「それで?その後どうしたんすか。」
竹田が卵がふんだんに使われた親子丼を口に入れる。
「ドアの前に荷物置いてやり過ごした。また寝てる時に入って来られたら困るだろう。」
「あー、成瀬先輩もバリケード仲間になったんすねぇ。」
成瀬は苛立ちながらカツ丼の上に七味をいつもより多く振る。
「それに!いつ描いたか知らないが、俺が整体してる様子の絵がテーブルの上に置かれていたんだ!気味が悪くて仕方ない。」
成瀬が一通り愚痴を吐いてお茶を飲んでいると竹田が神妙な面持ちで福神漬けを口にした。
「それにしても、なんで成瀬先輩の絵なんて描くんすかね。思い当たる事なんて学生の頃、授業でお互いの顔を描いただけなんすよね?」
「知らない。頭のおかしい奴のことなんてこれっぽっちも理解したくない。」
竹田の口からコリッコリッと咀嚼音が聞こえる。
「良いんすか?知らないままで。」
成瀬が白身のついたカツを頬張りながら顔を上げる。
「まだ良いアパート見つかってないんですし。暫くは一緒に過ごすんすよね?」
図星を突かれて成瀬は飲み込もうとしたカツが喉を通らなかった。
「どうせこのまま晴れてアパートが見つかって夜逃げできても、また付き纏われるだけっすよ。」
まつ毛が長く、くっきりした瞳がこちらを捉える。
「何が目的なのかとか、ある程度探り入れておいた方が今後の役に立つんじゃないすか?」
いつも上司に小言を言われている竹田とは思えない慎重な発言だった。
「おまえ、賢いな。」
「え。」
竹田が目を丸くしてこちらを見ている。
ーそうだ、そうだな。どうせ変な奴には変わりないんだ。何を知ってももうこれ以上驚かないだろうし、思い切って本人に聞いてみるか。
頬張ったカツの卵が乗っていない部分から心地良いサクサク音がした。
ところがその日、追田はアパートに帰っては来なかった。
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