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「幻を追い求めて2」11話
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「幻を追い求めて2」11話
「やあ。マツナンくん。思ったより早く着いたね。」
扉を開けると、ガチガチに髪はワックスで固めた、黒いベストの燻銀な男が革製の椅子に座っていた。
見た目とは裏腹に温和な表情を浮かべている。一壱は慌てて頭を下げた。
「お久しぶりです、店長!返すの遅くなってすみません。」とスマホを店長の手のひらの上に置いた。
店長はスマホの電源を入れる。
「本当にいいのかい?」
「いいんです。証拠は手元に無い方がいいんで。解約は済ませてます。」
「随分と用心深いね。」
店長はふーんと相槌を打ってスマホを暫く操作した後、引き出しの中へ仕舞った。
「データは全部消しておくよ。まあ、ほとんどお客様とのやり取りにしか使ってないだろうけどね。」
一壱は苦笑いした。そうして今度は別の引き出しから今度は茶色い封筒を取り出した。
「はい。」
店長の満面の笑みに若干身じろぎした。一壱は封筒を受け取りながら礼を言った。
「ありがとうございます。」
「マツナンくん、人気あったから寂しくなるなぁ。」と店長は灰皿に目を向けて言った。
「あ、気にせず吸って下さい。」と一壱が促すと、「そう?」と言って店長はタバコに火をつけた。
「仕事、何するか聞いてもいいのかな?」
店長は煙を吐きながら一壱に聞いた。
「土木建築です。」
「あー、大変そうだねえ。」と店長は再びタバコを口につける。
一壱は頭に手を置いて困り眉で言った。
「正直、適当に選んだんで心配なんですよね~。」
「マツナンくんなら大丈夫でしょ。」
長と似たようなことを言うので一壱はドキリとした。
「そ、そうでしょうかね。」
「マツナンくん、敬語使えるし、気遣いもできるからね。そういう子はどこででもやっていけるよ。」
一壱の心拍数が上がった。少し自信無さげに俯いて手をモジモジさせた。
「敬語は、ほら、見様見真似でやってるようなもんなんで。」
「そうかな。」
一壱が視線を上げると、店長はタバコを灰皿に押し付けていた。
「マツナンくん、こっちはそういうのを見分けるプロだよ。本当に敬語が使えない子とわざと辿々しい敬語を使ってあざとい演技をしてる子の見分けぐらいつくよ。」
一壱は目を見開いて店長を凝視した。頬に薄らと汗が滲む。
すると、店長はタバコの火を消し終えるとこちらを見てニッコリと笑って言った。
「まあ、どっちもうちは大歓迎だけどね。」
「俺、そんなに分かりやすいですか。」
思わず一壱は聞き返してしまった。店長と面と向かって話すのはこれが最初で最後だと確信していたからだ。
店長はまた新しいタバコを赤い箱から一本取り出して口に咥える。
「うーん、どうだろう。」
店長は一壱に目もくれず、ライターを持って、タバコに火をつけた。
「僕は人を見る立場だから気づくけど、そんな必要の無い人からしたら、気づかないんじゃない?」
煙を吐く際にようやく店長と目が合った。
「だって、普段の生活で初めから相手を疑いながら接することって、今の時代、あんまり無いものだからね。」
一壱は店長に最後のお辞儀をして裏口の取っ手を掴んだ。
「じゃあね、一壱くん。」
後ろから最初で最後の名前呼びをされながら、一壱はホストクラブを出た。
「やあ。マツナンくん。思ったより早く着いたね。」
扉を開けると、ガチガチに髪はワックスで固めた、黒いベストの燻銀な男が革製の椅子に座っていた。
見た目とは裏腹に温和な表情を浮かべている。一壱は慌てて頭を下げた。
「お久しぶりです、店長!返すの遅くなってすみません。」とスマホを店長の手のひらの上に置いた。
店長はスマホの電源を入れる。
「本当にいいのかい?」
「いいんです。証拠は手元に無い方がいいんで。解約は済ませてます。」
「随分と用心深いね。」
店長はふーんと相槌を打ってスマホを暫く操作した後、引き出しの中へ仕舞った。
「データは全部消しておくよ。まあ、ほとんどお客様とのやり取りにしか使ってないだろうけどね。」
一壱は苦笑いした。そうして今度は別の引き出しから今度は茶色い封筒を取り出した。
「はい。」
店長の満面の笑みに若干身じろぎした。一壱は封筒を受け取りながら礼を言った。
「ありがとうございます。」
「マツナンくん、人気あったから寂しくなるなぁ。」と店長は灰皿に目を向けて言った。
「あ、気にせず吸って下さい。」と一壱が促すと、「そう?」と言って店長はタバコに火をつけた。
「仕事、何するか聞いてもいいのかな?」
店長は煙を吐きながら一壱に聞いた。
「土木建築です。」
「あー、大変そうだねえ。」と店長は再びタバコを口につける。
一壱は頭に手を置いて困り眉で言った。
「正直、適当に選んだんで心配なんですよね~。」
「マツナンくんなら大丈夫でしょ。」
長と似たようなことを言うので一壱はドキリとした。
「そ、そうでしょうかね。」
「マツナンくん、敬語使えるし、気遣いもできるからね。そういう子はどこででもやっていけるよ。」
一壱の心拍数が上がった。少し自信無さげに俯いて手をモジモジさせた。
「敬語は、ほら、見様見真似でやってるようなもんなんで。」
「そうかな。」
一壱が視線を上げると、店長はタバコを灰皿に押し付けていた。
「マツナンくん、こっちはそういうのを見分けるプロだよ。本当に敬語が使えない子とわざと辿々しい敬語を使ってあざとい演技をしてる子の見分けぐらいつくよ。」
一壱は目を見開いて店長を凝視した。頬に薄らと汗が滲む。
すると、店長はタバコの火を消し終えるとこちらを見てニッコリと笑って言った。
「まあ、どっちもうちは大歓迎だけどね。」
「俺、そんなに分かりやすいですか。」
思わず一壱は聞き返してしまった。店長と面と向かって話すのはこれが最初で最後だと確信していたからだ。
店長はまた新しいタバコを赤い箱から一本取り出して口に咥える。
「うーん、どうだろう。」
店長は一壱に目もくれず、ライターを持って、タバコに火をつけた。
「僕は人を見る立場だから気づくけど、そんな必要の無い人からしたら、気づかないんじゃない?」
煙を吐く際にようやく店長と目が合った。
「だって、普段の生活で初めから相手を疑いながら接することって、今の時代、あんまり無いものだからね。」
一壱は店長に最後のお辞儀をして裏口の取っ手を掴んだ。
「じゃあね、一壱くん。」
後ろから最初で最後の名前呼びをされながら、一壱はホストクラブを出た。
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