幻を追い求めて2

三旨加泉

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「幻を追い求めて2」20話

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「幻を追い求めて2」20話


「もう、俺は帰る。」と成瀬は財布を取り出す。
「えー、もうちょっと飲みましょうよー」
 一壱の駄々に成瀬は辟易した。
「帰ってあいつと顔を合わせるのも嫌だが、眠さの方が今は勝ってる。」
「俺だって帰ってアニキと顔を合わせたくないですよー。」
 すると、一壱のスマホが鳴った。長かと思ったが、表示された名前は意外な人物だった。

「はるこ?」と思わず源氏名の方が口から出てしまう。
「じゃあ。」と一壱がメッセージを確認している間に成瀬はお代を置いて店を出て行ってしまった。それを横目で確認すると、再び一壱はスマホに視線を戻す。

「やっほー元気?新しい仕事上手くいってる?」
 なんて事ないメッセージにすぐ興味は薄れ、一壱は適当に小鳥が意気込んでるスタンプを押して、すぐポケットにスマホを入れた。


 長が一時的に暮らしているというマンションに再び帰ると、長の靴は置かれてあったが、当の本人はいなかった。
 内心ホッとしつつ、一壱はリビングを通って部屋に入ろうとすると、テーブルに置かれてある分厚い資料が目に入った。
「不用心にこんなところに置くなよな。」と呟きながら資料に書かれてあるプロジェクトのタイトルを読み上げる。
「竹田グループ&追田紡求コラボプロジェクト?」
 時の人であり、最近自分がよく口にする人物の名前を見て思わず資料を手に取って中身を確認する。
 内容はタイトルにある通り簡単で、竹田グループの飲料品とのコラボを企画されたものだった。有名なデザイナーのコラボ商品なら買う人間もいるだろう。
 しかし、一壱はどこか引っかかるところがあった。
「このコラボの商品。ちょっとデザインと合ってないな。」

ーどうせ売るならちゃんとデザインと商品のテーマが合ってる物がいい。確かにここにデザインされてるカッパとお茶では遠くないテーマかもしれないが、この商品のお茶より、江戸時代から続いてるという別のお茶の商品にすればいいんじゃないか?しかもキャンペーンで当たる賞品も体重計とか。せっかくコラボしてるんだから、追田紡求がデザインした合羽とかの方がまだくだらないけど興味湧くだろ。ファン層にもっと媚び売ればいいのに。企画の予算額ももっと削れる部分もあるし、その浮いたお金で別の商品の開発もでき

「なるほどぉ」
 一壱は肩をビクリと反応させ、ゆっくり振り返る。そこには長が顎に手を当てていかにも感心しているといった表情で一壱を凝視していた。最悪なことに、全ての内容を口に出していたようだ。

「やっぱり一壱、こういう仕事向いてるんだな。目が輝いてたよ。」
「輝いてない。」
 一壱は即答して自分の部屋に戻ろうとした。すると、またスマホが震えた。見ると、またはるこからメッセージが来ていた。
「やっほー。ねぇ、このあいだ借りたお金返したいんだけど、今週末どお?会えそ?」
 一壱は眉根を顰めた。
ーなんだ?金なんて貸した覚えないぞ。誰かと間違えてるんじゃないか?まあ、いいや。ちょうど先輩以外に愚痴を言いたい相手が欲しかったんだ。

 そう訝し気にスマホを見つめていると、ふと長の視線が気になり、急いでスマホをポケット仕舞い、部屋に戻った。
 長は不思議そうに見ていたが、嬉しそうに資料を手に取っていた。

ーあー最悪だ。絶対あいつ俺の意見を参考に何かするぞ。本当に最悪だ。

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