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「幻を追い求めて2」25話
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「幻を追い求めて2」25話
一壱が再び目を開けると、ちょうど自分の目の前で見覚えのあるスーツを着た男の後ろ姿が崩れ落ちる瞬間だった。
あまりにも突然の出来事で悲鳴をあげようにも声が出なかった。気がついた頃には長のすぐ傍に駆け寄っていた。
視線の端には警官と大瑠璃が女を、元指名客を取り押さえていた。警官と大瑠璃はすぐ長に気がついてスマホを取り出し、電話の相手にここの住所を伝えている。
警官がこちらに駆け寄ってくるのを目視したところで、自分の裾を引っ張られた。すぐ視線を裾に移すと、長が一壱の裾を掴んでいた。震えた声で、しかし顔は微笑んで一壱に言った。
「なんだか、あの頃を思い出すなぁ。」
「え?」
ようやく出た声は掠れてて全く声にならなかった。
「俺が、木から落ちて、お前が、泣いて、て」
長に言われて初めて自分の頬に温かい液体が垂れていってるのに気づいた。
「こんな時に、なに言ってるんだよ。」
必死に溢れないように涙袋で溜めていたものが決壊し、玉のように流れ落ちる。
長が苦しそうに呻き、さっきまでハッキリ見えていた瞳は薄目になって、よく色が見えなくなっていた。
一壱は慌てて語りかける。
「ダメだ!死んじゃ、ヤダよ!!」
一壱は思い出した。
あの時、長が木から落ちた時、同じことを思ったことを。
そして、一緒に遊んだり、笑ったりし合える関係でいて欲しかったことを。
あの日々が、幻になんて、なって欲しくなかったことを。
長はゆっくりと目を閉じていった。
一壱は泣きながら長の腕を掴んで縋った。
「待って。行かないでよ。まだ、話してないことが、たくさん、あるのに。」
少し離れたところで大瑠璃が立ち尽くしている。一壱の反対側には、警官が長の容態の確認を始めたところだった。
遠くに見える夕暮れは、涙でボヤけて見えなかった。
目の前で起きていることを、どうか幻であってくれと一壱は心の底から願った。
あれから数日が経ち、一壱は落葉樹の横を通っていた。ポケットに手を突っ込み、一壱はあの時、自分が泣き縋った場所をもう一度歩いた。
数日前にあんな事件があったとは思えないくらい、みんな無表情であの歩道の上を歩いている。
大瑠璃に聞いたところ、歓楽街でそういった事件が起きるのは珍しくないのか、たまたま近くをパトロールしていた警官を呼び止め、現場に向かったらしい。
元指名客は、警察に連れて行かれたが、心神耗弱の為、刑は軽くなるかもしれなかった。毒親からのストレスなどで逃げるようにホストに入れ込んでいたらしい。
あの時のことは恐怖に感じたが、指名してくれていた当初は優しい普通の客だった。不思議と嫌悪感は無かった。
「あまり情を割かない方が良いですよ。」
振り返ると大瑠璃が花束を持って歩いてきた。
「貴方は優しすぎるんです。だから相手が他人なのに執着されるんです。今の段階でそれでは先が思いやられますよ。」
「なんだ。俺にも辛口なの?大瑠璃さんは。」
大瑠璃は眼鏡を上に上げた。
「これからは部下になるんですから、呼び捨てで良いですよ。」
「えー慣れるかなぁ。」
一壱が再び目を開けると、ちょうど自分の目の前で見覚えのあるスーツを着た男の後ろ姿が崩れ落ちる瞬間だった。
あまりにも突然の出来事で悲鳴をあげようにも声が出なかった。気がついた頃には長のすぐ傍に駆け寄っていた。
視線の端には警官と大瑠璃が女を、元指名客を取り押さえていた。警官と大瑠璃はすぐ長に気がついてスマホを取り出し、電話の相手にここの住所を伝えている。
警官がこちらに駆け寄ってくるのを目視したところで、自分の裾を引っ張られた。すぐ視線を裾に移すと、長が一壱の裾を掴んでいた。震えた声で、しかし顔は微笑んで一壱に言った。
「なんだか、あの頃を思い出すなぁ。」
「え?」
ようやく出た声は掠れてて全く声にならなかった。
「俺が、木から落ちて、お前が、泣いて、て」
長に言われて初めて自分の頬に温かい液体が垂れていってるのに気づいた。
「こんな時に、なに言ってるんだよ。」
必死に溢れないように涙袋で溜めていたものが決壊し、玉のように流れ落ちる。
長が苦しそうに呻き、さっきまでハッキリ見えていた瞳は薄目になって、よく色が見えなくなっていた。
一壱は慌てて語りかける。
「ダメだ!死んじゃ、ヤダよ!!」
一壱は思い出した。
あの時、長が木から落ちた時、同じことを思ったことを。
そして、一緒に遊んだり、笑ったりし合える関係でいて欲しかったことを。
あの日々が、幻になんて、なって欲しくなかったことを。
長はゆっくりと目を閉じていった。
一壱は泣きながら長の腕を掴んで縋った。
「待って。行かないでよ。まだ、話してないことが、たくさん、あるのに。」
少し離れたところで大瑠璃が立ち尽くしている。一壱の反対側には、警官が長の容態の確認を始めたところだった。
遠くに見える夕暮れは、涙でボヤけて見えなかった。
目の前で起きていることを、どうか幻であってくれと一壱は心の底から願った。
あれから数日が経ち、一壱は落葉樹の横を通っていた。ポケットに手を突っ込み、一壱はあの時、自分が泣き縋った場所をもう一度歩いた。
数日前にあんな事件があったとは思えないくらい、みんな無表情であの歩道の上を歩いている。
大瑠璃に聞いたところ、歓楽街でそういった事件が起きるのは珍しくないのか、たまたま近くをパトロールしていた警官を呼び止め、現場に向かったらしい。
元指名客は、警察に連れて行かれたが、心神耗弱の為、刑は軽くなるかもしれなかった。毒親からのストレスなどで逃げるようにホストに入れ込んでいたらしい。
あの時のことは恐怖に感じたが、指名してくれていた当初は優しい普通の客だった。不思議と嫌悪感は無かった。
「あまり情を割かない方が良いですよ。」
振り返ると大瑠璃が花束を持って歩いてきた。
「貴方は優しすぎるんです。だから相手が他人なのに執着されるんです。今の段階でそれでは先が思いやられますよ。」
「なんだ。俺にも辛口なの?大瑠璃さんは。」
大瑠璃は眼鏡を上に上げた。
「これからは部下になるんですから、呼び捨てで良いですよ。」
「えー慣れるかなぁ。」
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