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「幻を追い求めて2」27話(終)
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「幻を追い求めて2」27話(終)
一壱は襟を正し、前髪を弄る。すっかり暗くなった自分の髪色を目の前にある鏡で確認する。
「そんなに念入りにしなくてもイッチーの可愛さはみんなに伝わるさ。」と一壱の肩が少し揺れる。鏡には七三分けの男が自分の肩に手を添えている。
「だから、意味分かんないって。それに、」と一壱は長に顔を突き出す。
「その呼び方!間違っても会見中にするなよ!」と人差し指で長を指す。指の向こうにいる長は全く気にせず満面の笑みで答える。
「しないさ!イッチーの晴れ舞台を台無しにはさせない。」
「もう既に言ってるじゃん。」と一壱は深くため息をついた。
「もう少しで会見始まるので、会場に向かいますよ。」
扉を開けて入ってきた大瑠璃が眼鏡を上げながら話しかけてくる。
「大体、俺がやんなくちゃいけないの?これ。社長にいつも通りやってもらえばいいじゃん。」
長は困り眉で言う。
「仕方ないじゃないか。両親が大事を取って、もう少しちゃんと休めって言うからさっ。」と満面で笑みを浮かべている。
相変わらず腹立つ顔をしているし、両親も何か根回ししているのが伝わってくるが、今はそこまで気にしなくなった。
「刺し傷も無くて、ただ派手に転倒したのが原因だろ?そんなに休む必要ないだろ。気絶したのも、軽い脳震盪じゃないか。」
「甘く見てはいけませんよ。一壱様。」と大瑠璃まで敵に回るので少し解せない気持ちになる。
「いっそのこと、バカンスにでも出掛けちゃおうかなぁ。」
「部屋で大人しくしてろ!」と一壱は一喝する。
「でも、社長代理と社長補佐じゃ全然違うじゃないか。いきなり社長代理で、しかも会見も俺がするなんて。」と小言を言う一壱に大瑠璃が咳払いをした。
「社長が完全復帰するまでの短い期間です。一壱様なら出来ます。」と珍しく太鼓判を押してきたので一壱は目を丸くした。
「それに、」と大瑠璃の横から態とらしく長が顔を出す。
「今回のコラボキャンペーンはイッチーが考えたようなものだからな。やっぱり、イッチーが会見すべきだ。」
自信満々に腰に手を当てて話す長を呆れた目で一壱は見遣る。
「それに、」と今度は長が一壱にさらに顔を突き出す。
「社員たちはみんなイッチーのことを可愛いって言ってたぞ!」
一壱は今日一大きなため息をついた。
先ほどまで小言を言っていた一壱だったが、会場へ向かう頃には振り返らず、真っ直ぐに前だけを向いて颯爽と歩いて行った。
そして、一壱は小さな籠から大きな世界へと羽ばたいて行った。
「一壱様、やはり人前に立って発表するのお上手ですね。」
「イッチーの話は家族みんな聞きたがる程、魅力的だからなぁ。」
眩い光に囲まれながら悠然と話す一壱はまるで空を優雅に飛ぶ鳥のようだった。
「しかし意外ですね。まさか社長がそこまで世話焼きだったとは。」と大瑠璃は持っていた資料を持ち直す。
「あんなに初めて会った時は野心に満ち溢れていたというのに。」
長は真っ直ぐ光を見つめる。長の瞳に眩い光と活き活きとした表情の青年が映し出される。
「あの時は、両親に認められたいのと、あの家に拾われた以上、ちゃんと社長の座に就かなければ。その気持ちでいっぱいだった。」
一壱の整った顔がフラッシュで照らし出され、まるで神々しささえ感じられた。
「俺が社長になりたかったのは、誰かの為だったんだ。元々は他人の為に行動するのが好きだったんだよ。そんな相手を支えたり、さ。」
長の横顔を大瑠璃は凝視した。
「そうだったんですか?全然気づきませんでした。ずっと聡明で他人の上に立つ為に生まれた人間のような雰囲気を出していたので。」
長は嬉しそうに思い出し笑いをした。そこにはどこか誇らしさを感じた。
「実は、大きな会社の社長夫妻が養子を欲しがってるって話が来た時に演技をしたんだ。相手が求めてる人物像の方が良いのかなって思ってさ。」
恥ずかしそうに頬を小さく掻く長を見て大瑠璃はため息をつきながら苦笑した。
「貴方達。本当に似た者兄弟ですね。」
遠くで小夜啼鳥が鳴いた気がした。
一壱は襟を正し、前髪を弄る。すっかり暗くなった自分の髪色を目の前にある鏡で確認する。
「そんなに念入りにしなくてもイッチーの可愛さはみんなに伝わるさ。」と一壱の肩が少し揺れる。鏡には七三分けの男が自分の肩に手を添えている。
「だから、意味分かんないって。それに、」と一壱は長に顔を突き出す。
「その呼び方!間違っても会見中にするなよ!」と人差し指で長を指す。指の向こうにいる長は全く気にせず満面の笑みで答える。
「しないさ!イッチーの晴れ舞台を台無しにはさせない。」
「もう既に言ってるじゃん。」と一壱は深くため息をついた。
「もう少しで会見始まるので、会場に向かいますよ。」
扉を開けて入ってきた大瑠璃が眼鏡を上げながら話しかけてくる。
「大体、俺がやんなくちゃいけないの?これ。社長にいつも通りやってもらえばいいじゃん。」
長は困り眉で言う。
「仕方ないじゃないか。両親が大事を取って、もう少しちゃんと休めって言うからさっ。」と満面で笑みを浮かべている。
相変わらず腹立つ顔をしているし、両親も何か根回ししているのが伝わってくるが、今はそこまで気にしなくなった。
「刺し傷も無くて、ただ派手に転倒したのが原因だろ?そんなに休む必要ないだろ。気絶したのも、軽い脳震盪じゃないか。」
「甘く見てはいけませんよ。一壱様。」と大瑠璃まで敵に回るので少し解せない気持ちになる。
「いっそのこと、バカンスにでも出掛けちゃおうかなぁ。」
「部屋で大人しくしてろ!」と一壱は一喝する。
「でも、社長代理と社長補佐じゃ全然違うじゃないか。いきなり社長代理で、しかも会見も俺がするなんて。」と小言を言う一壱に大瑠璃が咳払いをした。
「社長が完全復帰するまでの短い期間です。一壱様なら出来ます。」と珍しく太鼓判を押してきたので一壱は目を丸くした。
「それに、」と大瑠璃の横から態とらしく長が顔を出す。
「今回のコラボキャンペーンはイッチーが考えたようなものだからな。やっぱり、イッチーが会見すべきだ。」
自信満々に腰に手を当てて話す長を呆れた目で一壱は見遣る。
「それに、」と今度は長が一壱にさらに顔を突き出す。
「社員たちはみんなイッチーのことを可愛いって言ってたぞ!」
一壱は今日一大きなため息をついた。
先ほどまで小言を言っていた一壱だったが、会場へ向かう頃には振り返らず、真っ直ぐに前だけを向いて颯爽と歩いて行った。
そして、一壱は小さな籠から大きな世界へと羽ばたいて行った。
「一壱様、やはり人前に立って発表するのお上手ですね。」
「イッチーの話は家族みんな聞きたがる程、魅力的だからなぁ。」
眩い光に囲まれながら悠然と話す一壱はまるで空を優雅に飛ぶ鳥のようだった。
「しかし意外ですね。まさか社長がそこまで世話焼きだったとは。」と大瑠璃は持っていた資料を持ち直す。
「あんなに初めて会った時は野心に満ち溢れていたというのに。」
長は真っ直ぐ光を見つめる。長の瞳に眩い光と活き活きとした表情の青年が映し出される。
「あの時は、両親に認められたいのと、あの家に拾われた以上、ちゃんと社長の座に就かなければ。その気持ちでいっぱいだった。」
一壱の整った顔がフラッシュで照らし出され、まるで神々しささえ感じられた。
「俺が社長になりたかったのは、誰かの為だったんだ。元々は他人の為に行動するのが好きだったんだよ。そんな相手を支えたり、さ。」
長の横顔を大瑠璃は凝視した。
「そうだったんですか?全然気づきませんでした。ずっと聡明で他人の上に立つ為に生まれた人間のような雰囲気を出していたので。」
長は嬉しそうに思い出し笑いをした。そこにはどこか誇らしさを感じた。
「実は、大きな会社の社長夫妻が養子を欲しがってるって話が来た時に演技をしたんだ。相手が求めてる人物像の方が良いのかなって思ってさ。」
恥ずかしそうに頬を小さく掻く長を見て大瑠璃はため息をつきながら苦笑した。
「貴方達。本当に似た者兄弟ですね。」
遠くで小夜啼鳥が鳴いた気がした。
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