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「幻を追い求めて2」3話
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「幻を追い求めて2」3話
竹田長(つかさ)は一壱の兄である。とは言っても、実の兄ではない。
一壱の実父の竹田旭と実母の竹田苑香は中々子宝に恵まれなかった。
実父の竹田旭は有名な飲料企業である竹田グループの会長である。竹田グループは同族経営としても有名で、竹田旭の代よりずっと前から竹田家が経営を担ってきた。
しかし、そんな企業にとって経営を引き継ぐ子どもが生まれないというのは一家を揺るがす由々しき事態だった。
やむを得ず、両親は養子を迎えることを決断した。
そうして我が家へ先にやってきたのが長だった。長は賢く、その賢さに両親は喜び、いわゆる英才教育というものを長に施した。周りの親戚たちからも評価され、長が将来の竹田グループの社長になることは誰が見ても明白だった。恐らく長自身もそう感じていたと思う。
しかし、そんな状況が一変したのは、お察しの通り、自分自身、竹田一壱が生まれてからである。
ちなみに、これは一壱がこっそり家政婦たちの井戸端会議を盗み聞きした際に知ったことだが、一壱が生まれたことを両親は長が家に来た時の数倍は喜んでいたらしい。
当然、両親は一壱にも同じ教育を施そうとした。実際、当時同じ年齢だった頃の長の成績より、一壱の成績の方が上だった。これは優秀な男児が生まれたものだと長の期待はどこへやら、すっかり一壱は竹田家の注目の的になった。
しかし、それをよく思わない人物がいた。勘づいているとは思うが、長だ。長はせっかく良家に来たというのにまるでここにいるのは場違いかのように両親は長と少しずつ距離を置いていった。
長が勉強を教わってる際もこれまでは母が付きっきりで面倒を見ていたのだが、一壱が生まれてからは一壱に付きっきりになった。
さぞ面白くなかっただろうなと一壱は思った。
実際、一壱はそんな長が苦汁をなめる瞬間を見たことがある。
あれは一壱が五、六歳くらいのことだろうか。当時、長も両親の手前、まだ一壱にも好意的に振る舞っていた頃だった。
あの時、確か一壱は長と庭園で遊んでいた。一壱は長の置かれた状況など知らずに無邪気に長におねだりしては一緒におもちゃで遊んだり、バドミントンの真似事をしたりと小さい体で広い庭園を駆けていた。
しかし、バドミントンをしていた際、シャトルが近くの松の木に引っかかってしまった。長は一壱の泣き出しそうな顔を見て、一人で松の木に登ってシャトルを下に落としてくれた。一壱は大層喜んだが、次の瞬間、長は体を支えていた木の枝が折れ、地面に落ちてしまった。
一壱は痛そうに腰を摩る長と、落ちた際の大きな音にびっくりして思わず泣き出してしまった。
すると、その光景を誰かが発見したのか、縁側の方から両親や家政婦の人たちがわらわらと駆け寄ってきた。母が慌てて一壱を抱きしめた。父も「怪我はないか?」と背中を摩る。
一壱と長以外、事の顛末を知らないので、皆てっきり泣いている一壱が木から落ちたのだと勘違いしているようだった。
一壱は状況が飲み込めず、不思議そうに辺りを見渡すと、一人縁側の方へ歩いて行く人影が見えた。長だった。
長は足を擦りむいたのか、少し辛そうに歩いているように見えた。靴を脱いで縁側に上がった際にようやくこちらに顔を向けた。
一壱は背筋が凍った。今までにあんな悔しそうに顔を歪ませ、憎悪に満ちた目で見られたのは、今まで生きてきた中であの時が初めてだった。
竹田長(つかさ)は一壱の兄である。とは言っても、実の兄ではない。
一壱の実父の竹田旭と実母の竹田苑香は中々子宝に恵まれなかった。
実父の竹田旭は有名な飲料企業である竹田グループの会長である。竹田グループは同族経営としても有名で、竹田旭の代よりずっと前から竹田家が経営を担ってきた。
しかし、そんな企業にとって経営を引き継ぐ子どもが生まれないというのは一家を揺るがす由々しき事態だった。
やむを得ず、両親は養子を迎えることを決断した。
そうして我が家へ先にやってきたのが長だった。長は賢く、その賢さに両親は喜び、いわゆる英才教育というものを長に施した。周りの親戚たちからも評価され、長が将来の竹田グループの社長になることは誰が見ても明白だった。恐らく長自身もそう感じていたと思う。
しかし、そんな状況が一変したのは、お察しの通り、自分自身、竹田一壱が生まれてからである。
ちなみに、これは一壱がこっそり家政婦たちの井戸端会議を盗み聞きした際に知ったことだが、一壱が生まれたことを両親は長が家に来た時の数倍は喜んでいたらしい。
当然、両親は一壱にも同じ教育を施そうとした。実際、当時同じ年齢だった頃の長の成績より、一壱の成績の方が上だった。これは優秀な男児が生まれたものだと長の期待はどこへやら、すっかり一壱は竹田家の注目の的になった。
しかし、それをよく思わない人物がいた。勘づいているとは思うが、長だ。長はせっかく良家に来たというのにまるでここにいるのは場違いかのように両親は長と少しずつ距離を置いていった。
長が勉強を教わってる際もこれまでは母が付きっきりで面倒を見ていたのだが、一壱が生まれてからは一壱に付きっきりになった。
さぞ面白くなかっただろうなと一壱は思った。
実際、一壱はそんな長が苦汁をなめる瞬間を見たことがある。
あれは一壱が五、六歳くらいのことだろうか。当時、長も両親の手前、まだ一壱にも好意的に振る舞っていた頃だった。
あの時、確か一壱は長と庭園で遊んでいた。一壱は長の置かれた状況など知らずに無邪気に長におねだりしては一緒におもちゃで遊んだり、バドミントンの真似事をしたりと小さい体で広い庭園を駆けていた。
しかし、バドミントンをしていた際、シャトルが近くの松の木に引っかかってしまった。長は一壱の泣き出しそうな顔を見て、一人で松の木に登ってシャトルを下に落としてくれた。一壱は大層喜んだが、次の瞬間、長は体を支えていた木の枝が折れ、地面に落ちてしまった。
一壱は痛そうに腰を摩る長と、落ちた際の大きな音にびっくりして思わず泣き出してしまった。
すると、その光景を誰かが発見したのか、縁側の方から両親や家政婦の人たちがわらわらと駆け寄ってきた。母が慌てて一壱を抱きしめた。父も「怪我はないか?」と背中を摩る。
一壱と長以外、事の顛末を知らないので、皆てっきり泣いている一壱が木から落ちたのだと勘違いしているようだった。
一壱は状況が飲み込めず、不思議そうに辺りを見渡すと、一人縁側の方へ歩いて行く人影が見えた。長だった。
長は足を擦りむいたのか、少し辛そうに歩いているように見えた。靴を脱いで縁側に上がった際にようやくこちらに顔を向けた。
一壱は背筋が凍った。今までにあんな悔しそうに顔を歪ませ、憎悪に満ちた目で見られたのは、今まで生きてきた中であの時が初めてだった。
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