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「ちゃんちゃら」65話
「ちゃんちゃら」65話
インターフォンが鳴ると、大地は自ら扉を開けて海斗を迎え入れた。海斗は大地の顔を見て驚いていた。
「今日は仕事早かったんだな。」
大地は胸を逸らせた。
「大きなプロジェクトの準備を終わらせたんだ。これでクリスマスはなんとか一緒に過ごせそうだ。」
クリスマスという言葉に海斗の胸が踊った。
リビングに向かうとクリスマスケーキやオードブルのパンフレットがテーブルに置かれてあった。
「頼むのもいいし、自分たちで作るのもいいなって思って。海斗はどうしたい?」
海斗はパンフレットを眺める。こういった季節ものを家で味わったことがない海斗にとって、それらは絵本の中の架空の食べ物たちのように見えた。たくさんのおしゃれで豪華な料理たちに目を輝かせたのと同時に海斗の目には、あの時に雫たちと料理した光景も浮かんでいた。
パンフレットを顔より少し下に下げて大地の顔色を伺う。
「な、なぁ。我儘なんだけどさ。」
「うんうん。」
食い気味に顔を近づけてくる大地から少し距離を取りながら海斗は口を開く。
「どっちも、なんてのはダメ、だよな?」
大地は目をぱちくりさせている。
「どっちもって?」
「半分、料理やお菓子を頼んで、俺たちが半分なにか料理やお菓子を作るっていうのは」
そう言い掛けたところで今度は大地の目が輝き始めた。
「それいいな!大原にも相談しよう!」
海斗は頷いたが、一つの疑問が頭を過った。
「そういえば大知くんたちは、その日来るのか?」
その質問に今すぐにでもドアを開けようとしていた大地の手が止まる。振り返った顔は能面のようで薄ら恐怖を感じた。
「あー…うん。」
そして大きな溜息をついて早口で言った。
「なんかめちゃくちゃ行きたいって騒いでた!」
小さな地団駄のように足を踏み鳴らしている様子は大知と良い勝負だなと思った。明らかに大地は自分と大原の三人でクリスマスを過ごしたかったという気持ちなのは一目瞭然だった。
「なぁ、そんなに嫉妬するタイプだったか、大地って。」
大地は地団駄を止めて海斗を凝視する。
「悪かったな、嫉妬深くて」と睨む大地に慌てて海斗は付け足す。
「だって、今まで付き合ってた相手に対して、そんな態度だったか?俺にはそうは見えなくて」
大地はジッと海斗の方を見ている。詳しく言うと、海斗の表情ではなく、海斗の指に視線を向けていた。
恐らく大地も海斗が指輪をつけたがらない理由に気づいたのだろう。さっきまでの子供染みた態度から一変して引き締まった顔になった。
「正直な話、言葉は悪いが、当時はお試し気分で人と付き合ってた。」
「お試し気分?」
海斗が馴染みのない人付き合いの感覚に動揺しているのを大地は申し訳なさそうに見ていた。
「俺、恋愛するって行為が好きじゃなかったんだ。その、親父の再婚の一件でさ。拒否反応というか」
大地は腕組みをしながら唸る。
「そりゃ相手のことを信用してないし、ずっと疑いの眼差しで見て、一緒にいたいとか微塵にも思ったことがなかった。そりゃ長く続かないし、不誠実だよな。」
大地は自嘲気味の笑いを浮かべていた。
「別に女好きってわけじゃない。ある意味、これが初めての恋なのかもしれない。」
先程までへの字だった口角が上がり、少し頬を赤らめながら大地は椅子に座った。
「不安なら、お前が安心できるようにいくらでも話をするさ。別に指輪の返答に期限も無いしな。」
この時、海斗は久々に大地の自信に溢れた表情を見た。ずっと蕾だった花がようやく咲き誇ったような、そんな感覚がした。
海斗は微笑みながら椅子に座ろうと思ったが、小さな咳払いがドアの方から聞こえた。見上げると、大原が罰の悪い顔をしながらドアの前に立っていた。
「申し訳ございません。大地様、社長から仕事に関するお電話です。」
「タイミング悪いんだよ!」と悪態をつきながら大地がテーブルに項垂れる。
そんな笑える光景の中、窓の向こうにある木はすっかり葉を落とし、寒さで軋ませていた。
インターフォンが鳴ると、大地は自ら扉を開けて海斗を迎え入れた。海斗は大地の顔を見て驚いていた。
「今日は仕事早かったんだな。」
大地は胸を逸らせた。
「大きなプロジェクトの準備を終わらせたんだ。これでクリスマスはなんとか一緒に過ごせそうだ。」
クリスマスという言葉に海斗の胸が踊った。
リビングに向かうとクリスマスケーキやオードブルのパンフレットがテーブルに置かれてあった。
「頼むのもいいし、自分たちで作るのもいいなって思って。海斗はどうしたい?」
海斗はパンフレットを眺める。こういった季節ものを家で味わったことがない海斗にとって、それらは絵本の中の架空の食べ物たちのように見えた。たくさんのおしゃれで豪華な料理たちに目を輝かせたのと同時に海斗の目には、あの時に雫たちと料理した光景も浮かんでいた。
パンフレットを顔より少し下に下げて大地の顔色を伺う。
「な、なぁ。我儘なんだけどさ。」
「うんうん。」
食い気味に顔を近づけてくる大地から少し距離を取りながら海斗は口を開く。
「どっちも、なんてのはダメ、だよな?」
大地は目をぱちくりさせている。
「どっちもって?」
「半分、料理やお菓子を頼んで、俺たちが半分なにか料理やお菓子を作るっていうのは」
そう言い掛けたところで今度は大地の目が輝き始めた。
「それいいな!大原にも相談しよう!」
海斗は頷いたが、一つの疑問が頭を過った。
「そういえば大知くんたちは、その日来るのか?」
その質問に今すぐにでもドアを開けようとしていた大地の手が止まる。振り返った顔は能面のようで薄ら恐怖を感じた。
「あー…うん。」
そして大きな溜息をついて早口で言った。
「なんかめちゃくちゃ行きたいって騒いでた!」
小さな地団駄のように足を踏み鳴らしている様子は大知と良い勝負だなと思った。明らかに大地は自分と大原の三人でクリスマスを過ごしたかったという気持ちなのは一目瞭然だった。
「なぁ、そんなに嫉妬するタイプだったか、大地って。」
大地は地団駄を止めて海斗を凝視する。
「悪かったな、嫉妬深くて」と睨む大地に慌てて海斗は付け足す。
「だって、今まで付き合ってた相手に対して、そんな態度だったか?俺にはそうは見えなくて」
大地はジッと海斗の方を見ている。詳しく言うと、海斗の表情ではなく、海斗の指に視線を向けていた。
恐らく大地も海斗が指輪をつけたがらない理由に気づいたのだろう。さっきまでの子供染みた態度から一変して引き締まった顔になった。
「正直な話、言葉は悪いが、当時はお試し気分で人と付き合ってた。」
「お試し気分?」
海斗が馴染みのない人付き合いの感覚に動揺しているのを大地は申し訳なさそうに見ていた。
「俺、恋愛するって行為が好きじゃなかったんだ。その、親父の再婚の一件でさ。拒否反応というか」
大地は腕組みをしながら唸る。
「そりゃ相手のことを信用してないし、ずっと疑いの眼差しで見て、一緒にいたいとか微塵にも思ったことがなかった。そりゃ長く続かないし、不誠実だよな。」
大地は自嘲気味の笑いを浮かべていた。
「別に女好きってわけじゃない。ある意味、これが初めての恋なのかもしれない。」
先程までへの字だった口角が上がり、少し頬を赤らめながら大地は椅子に座った。
「不安なら、お前が安心できるようにいくらでも話をするさ。別に指輪の返答に期限も無いしな。」
この時、海斗は久々に大地の自信に溢れた表情を見た。ずっと蕾だった花がようやく咲き誇ったような、そんな感覚がした。
海斗は微笑みながら椅子に座ろうと思ったが、小さな咳払いがドアの方から聞こえた。見上げると、大原が罰の悪い顔をしながらドアの前に立っていた。
「申し訳ございません。大地様、社長から仕事に関するお電話です。」
「タイミング悪いんだよ!」と悪態をつきながら大地がテーブルに項垂れる。
そんな笑える光景の中、窓の向こうにある木はすっかり葉を落とし、寒さで軋ませていた。
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