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「ちゃんちゃら」番外編4話
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「ちゃんちゃら」番外編4話
家に帰って薬を飲み、症状を抑えた空島はコインランドリーでシーツなどをまとめて洗濯機に入れた。お金を入れて空島は設置されている椅子に座り、今日起きたことを振り返る。さっきマスターに見せた写真を見返す。
あの頃の、この先どんな人生が待っているのか何も知らない顔。無知で無垢で。
段々と腹が立ってきた空島はスマホの画面に隅っこに写ってしまっている男を編集の切り取り機能を使って画面内から消した。大きな溜息をついて天井を見上げる。暗く、シミもよく見えない。
強くなりたい。心からそう思う。そうしたら、依存などせずに自分で考えて行動できたはずだ。もっと自分に知識や警戒心があれば妊娠する前に対処できた。力があれば、襲われても跳ね除けることもできた。
全部、もしもの話だ。もう今考える時点で手遅れだ。その重たい事実が空島を襲う。
海斗先輩は優しくて良い人だ。初めて会った時から親しみやすかった。今思えば、彼が同じΩだったから、どこか親近感が湧いていたのかもしれない。そんな人には良い人がお似合いだ。実際、大地のような責任感がある男と結婚して妊娠もした。同じΩとして、幸せになった人を見るのは少し希望を感じられた。
今はいくら考えても埒があかないと思い、コインランドリーの自動ドアを潜る。すると、強い力で横に引っ張られた。驚いて見上げると、そこには暫く顔を見ていなかった強面の男が立っていた。
「泉谷先輩」
泉谷はこちらを鋭い目つきで睨みつける。大学近くで暮らしているからか、このコインランドリーで同じ大学の人間と出会うのは珍しくなかった。それでも、今の泉谷の様子がおかしいのは一目瞭然だった。
「お前も騙してたんだな。」
空島の肩が震える。
「お前もΩだったんだな。」
空島のゆっくり動いていた心臓が跳ね、速度を上げる。冷や汗を掻いた頬を春の生温い風が撫でる。
「なに、言ってんすか」と震えた声で空島は聞き返す。
「お前、今日ヒート起こしてただろ。」
空島の動揺した顔を見て泉谷はニヤリと口角が上がる。暗い中で見るその顔はまるで人間を喰らう悪魔のようだった。
「ぶつかった時、おまえ様子おかしかっただろ。あれ、ヒートだよな?」
空島は後悔した。BARを出て急いで走った際にぶつかった相手は泉谷だったのだ。ちゃんと顔を確認していれば、こんな迂闊な真似をしなかったのに。また自分は選択を誤った。
「海斗の時といい、Ωは嘘つきだよな。そんなに男探ししたかったのかよ。」
海斗先輩は自分がΩだと知らなかった分、悪気は微塵もない。しかし、自分は本当にΩを隠して接していた為、罰が悪かった。泉谷が掴む手がどんどん肩に食い込んでいく。痛みで顔が歪むと、そのまま強い力で引かれながら、真っ暗な路地裏に連れ込まれそうになる。
「海斗の時は失敗したけど、お前なら弱そうだし、簡単にやれるだろ」
空島は震え上がった。助けを求めようにも周りに人はいない。誰も味方などいない。あの時の、一人でどんどんお腹が膨らんでいく様を見る恐怖が自分を襲う。空島は悲鳴をあげたが、誰も来ない。酔っ払いが騒いでるとしか思われていないのだろう。
暴れるが泉谷の強固な体はビクともしない。自分の頬にあの時は流れなかった涙が溢れる。どうして自分はいつもこうなってしまうのだろう。泉谷の手が自分のズボンを容赦なく下に引っ張る。
「一度Ωを犯してみたかったんだよなぁ」
泉谷の好奇な目が粘りつくように自分の体を捉える。絶望した空島は徐々に押し除けようとする手を緩めていく。泉谷の硬くなったものが自分のお尻に押し当てられる。
しかし突然、体が軽くなった。振り向くと、泉谷が宙を舞っていた。宙を舞った彼は背中から地面に落ちていく。
空島が唖然としていると、後ろから落ち着いた渋い声が背中を撫でた。
「大丈夫?きみ。」
家に帰って薬を飲み、症状を抑えた空島はコインランドリーでシーツなどをまとめて洗濯機に入れた。お金を入れて空島は設置されている椅子に座り、今日起きたことを振り返る。さっきマスターに見せた写真を見返す。
あの頃の、この先どんな人生が待っているのか何も知らない顔。無知で無垢で。
段々と腹が立ってきた空島はスマホの画面に隅っこに写ってしまっている男を編集の切り取り機能を使って画面内から消した。大きな溜息をついて天井を見上げる。暗く、シミもよく見えない。
強くなりたい。心からそう思う。そうしたら、依存などせずに自分で考えて行動できたはずだ。もっと自分に知識や警戒心があれば妊娠する前に対処できた。力があれば、襲われても跳ね除けることもできた。
全部、もしもの話だ。もう今考える時点で手遅れだ。その重たい事実が空島を襲う。
海斗先輩は優しくて良い人だ。初めて会った時から親しみやすかった。今思えば、彼が同じΩだったから、どこか親近感が湧いていたのかもしれない。そんな人には良い人がお似合いだ。実際、大地のような責任感がある男と結婚して妊娠もした。同じΩとして、幸せになった人を見るのは少し希望を感じられた。
今はいくら考えても埒があかないと思い、コインランドリーの自動ドアを潜る。すると、強い力で横に引っ張られた。驚いて見上げると、そこには暫く顔を見ていなかった強面の男が立っていた。
「泉谷先輩」
泉谷はこちらを鋭い目つきで睨みつける。大学近くで暮らしているからか、このコインランドリーで同じ大学の人間と出会うのは珍しくなかった。それでも、今の泉谷の様子がおかしいのは一目瞭然だった。
「お前も騙してたんだな。」
空島の肩が震える。
「お前もΩだったんだな。」
空島のゆっくり動いていた心臓が跳ね、速度を上げる。冷や汗を掻いた頬を春の生温い風が撫でる。
「なに、言ってんすか」と震えた声で空島は聞き返す。
「お前、今日ヒート起こしてただろ。」
空島の動揺した顔を見て泉谷はニヤリと口角が上がる。暗い中で見るその顔はまるで人間を喰らう悪魔のようだった。
「ぶつかった時、おまえ様子おかしかっただろ。あれ、ヒートだよな?」
空島は後悔した。BARを出て急いで走った際にぶつかった相手は泉谷だったのだ。ちゃんと顔を確認していれば、こんな迂闊な真似をしなかったのに。また自分は選択を誤った。
「海斗の時といい、Ωは嘘つきだよな。そんなに男探ししたかったのかよ。」
海斗先輩は自分がΩだと知らなかった分、悪気は微塵もない。しかし、自分は本当にΩを隠して接していた為、罰が悪かった。泉谷が掴む手がどんどん肩に食い込んでいく。痛みで顔が歪むと、そのまま強い力で引かれながら、真っ暗な路地裏に連れ込まれそうになる。
「海斗の時は失敗したけど、お前なら弱そうだし、簡単にやれるだろ」
空島は震え上がった。助けを求めようにも周りに人はいない。誰も味方などいない。あの時の、一人でどんどんお腹が膨らんでいく様を見る恐怖が自分を襲う。空島は悲鳴をあげたが、誰も来ない。酔っ払いが騒いでるとしか思われていないのだろう。
暴れるが泉谷の強固な体はビクともしない。自分の頬にあの時は流れなかった涙が溢れる。どうして自分はいつもこうなってしまうのだろう。泉谷の手が自分のズボンを容赦なく下に引っ張る。
「一度Ωを犯してみたかったんだよなぁ」
泉谷の好奇な目が粘りつくように自分の体を捉える。絶望した空島は徐々に押し除けようとする手を緩めていく。泉谷の硬くなったものが自分のお尻に押し当てられる。
しかし突然、体が軽くなった。振り向くと、泉谷が宙を舞っていた。宙を舞った彼は背中から地面に落ちていく。
空島が唖然としていると、後ろから落ち着いた渋い声が背中を撫でた。
「大丈夫?きみ。」
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