アヤカシバナシ『小説版』

如月 睦月

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ポスター

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何年も前のお話なのですが…

思い出すのもゾワゾワするので話すのも少し躊躇するのですが、先に言うと怖いと言うより少し不思議な話です。

とある街の印刷会社にてデザインチームを発足し、私もそこに所属していました。

会社が『新たな方向性』として立ち上げたチームなので、営業も今まで弊社では無理と外注に出していたものをどんどん自社処理できるようになったから、次々と仕事を受注してきていた。

そんな中、ある街でとても大きなお化け屋敷のイベントを行うと言う事で、数社でデザインコンペをすることに。いわゆるデザインカンプを提出して、依頼者が色々と見比べて決めるものです、まぁ仕事を勝ち取る大会みたいなイメージです。

しかしながら私は多数の仕事を抱えていたので、正直大変で辞退を申し出たのですがどうしても2枚と言われ、1人に2枚任せるのも大変だろうからもう1人のデザイナーと手分けすることにしました。

私は先に書いたように超絶忙しかったので、女性が睨み付けている顔をハイライトだけで表現し、キャッチコピーをさらりと入れてシンプルに仕上げた。いわゆる私たちが現場で言うところの『チュートリアル』である。本来の意味的には操作方法の基礎を教える教材みたいなものだが、私たちは『基本的なスタイル』の事を意味する言葉として使っていた。

『チュートリアルで十分だろ・・・』

つまり、裏を返せばパッと見だと手抜きには見えない作品。かっこよく言えば『ネズミを狩るのに全力は出さない』私のまわりのデザイナー界隈ではよくある話で、要するにクライアントさえ納得してもらえたら、それが70%のチカラでやった仕事であっても結果として100点と言う事である。申し訳なくなるカミングアウトではあるが、そうやって次々来る仕事を内容やクライアントによって使用エネルギーを使い分けて処理していくのも、現場としては必要な能力のひとつだったのです。翌日提出すると、お化け屋敷協議会で会議にかけるとの事。『なんだその協議会』と思いつつその日はそれで終わった。

数日後、お化け屋敷のポスターは数あるデザインを跳ねのけ、私の作品に決まると言う意図せぬ結果に。

『忙しいって言ってるやんけ・・・』

ネズミを全力で狩ってしまった形に笑うしかなかった。

少しの変更を加え、その日のうちにポスターを印刷することに。勤めていた会社では巨大で枚数の少ない、そして野外に使う紙媒体はそのままビローンと出力できる機器があった。順番待ちをしていると、深夜になってしまった。私ともう1人のデザイナーだけが会社に残り、本当に2人きりだった。もう一人のデザイナーA氏は別件で残業。

やっと私の出力の順番となり、ゆっくりと出てきたのだが、奥にある暗室のある作業場から、米袋を高い所から落としたようなドスン!と言う音が聞こえた。会社の窓がその振動で揺れる程だったので間違いではない。A氏と共に見に行くが特に何かが倒れた様子もなかった。

すると女性の悲鳴がギャー!!!!と聞こえた。2人ともビクッ!!!!としたが、確かめる為に元の部屋に戻った。悲鳴の犯人は印刷機で、私の描いた幽霊の顔が丁度出てきているときに悲鳴に聞こえるギャーーーーと言う音を上げていた。



『なんだ・・・びっくりした・・・』



『でもこの機械、こんな音したことないよね』



一瞬の沈黙と同時に悲鳴が止み、ストンと1枚排出された。A氏はデスクに戻り作業に戻り、私は1枚目のポスターを伸ばして乾かす。



『うわぁ!!!!』



A氏が悲鳴を上げた。

モニターに映る自分の姿の後ろに人が立っていたと言うのである。めちゃめちゃ怖くなったけれど、ポスターは後1枚出さなくてはならず、やきもきする中またもやドスン!と言う音が、今度は何度も鳴った。定期的に、一定の間隔でドスン!・・・ドスン!と。ポスターの印刷が終わり、私とA氏は逃げるように会社を出た。

深夜2時を回っていました。

誰にも話すことなく、納品を終えて数日後には無事にお化け屋敷が開催されたそうです、地元紙にも取り上げられたとの事で、営業さんがそのフリーペーパーを持ってきてくれました。写真を見ると、私のポスターに違和感が・・・あ、そうか・・・私が描いた顔じゃないからか・・・

『ボツになって何処かの会社で手を加えたとか?』

と営業に聞くと『何が?』との回答。

プリントしたものを営業に見せて顔が違うと説明すると、営業の電話が鳴り長々と話をし始めた。

電話を切ると営業は青ざめた顔でこう言った。



『このポスターの顔、数年前にあのビルから飛び降り自殺した女の子に似ているんだってさ』
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