アヤカシバナシ『小説版』

如月 睦月

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高額のアルバイト

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昔々、その昔のお話です。

どれくらい昔かと言いますと、うちの母親が

十代の頃のお話です。



裕福ではなかったし、普通の生活もしんどかった母の家。

しかしそれとは裏腹に、時代が時代と言うのもあり、

何でも仕事になった…そう聞いております。



なもんで、なかなか簡単には出てこないであろうアルバイトも、

ごくごく普通に出回っていたそうです。

いわゆる命の危険があるものとか。

家のためにも仕事がしたかった母親は『死体洗い』と言うのを

選択した、洗うだけに選択?って笑い話ではない。



母は家の仕事を手伝うため、幼いころから畑に出ていた。

要するに幼稚園すら行っていないのである。

だから仕事はあれど、母親にしてみれば無いようなものだった。

つまり人がやらないような仕事、そして教養をさほど必要としないもの、

を選ばざるを得なかったと言う。



面接も簡単に済み、霊感的なものがあるか聞かれたが、

当時の母親は覚醒しておらず、変な事が身の回りで起こるが、

それが霊感と言うモノなのかどうかは判断できなかった。

なので、仕事も欲しいから『無い』と答えた。



『じゃぁ明日・・・あ、ちょっと待ってね・・・

〇〇さん、〇号室の〇〇さんって・・。あ、明日、

あとあの〇号室の・・・あ、一緒、オッケ・・・』



何やら先生と看護師が話をし、まずは明日夜10時に来てくれと

言われたそうです。(※記憶が定かではない昔の話なので、

細かい時間などの部分は私の方で一部変更しています。)



母親は翌日、言われた通り夜10時、夜間用のドアと言う、

指定された病院の裏手にある薄暗い入口のブザーを押した。

説明すると、すんなり入れてもらえ、

鍵を開けてくれた看護師が場所を教えてくれた。



地下へ向かうと霊安室があり、その奥の行き止まりに

【洗浄】と看板が掲げられた部屋があった。

言われた場所はそこなのでノックをすると『どうぞ』と、

先日面接してくれた先生が入れてくれた。



そこには5人くらいが一度に入れるようなステンレスで出来た、

大きな浴槽のようなものがあり、薬品の匂いが強めにする液体で

いっぱいいっぱいにされていた。

その真ん前まで案内され、覗くように指示された。

母親が覗き込むと、人が沈んでいるように見えた。

『もう少しかな・・・』と先生が言うと、沈んでいる人影が

ゆっくりと浮いてきた・・・・。

水面にブバッと出てきたのは遺体だったと言う。

その遺体を先生は、クッションが付いたような棒で、

肋骨の中心当たりを押し、沈めた、ゆっくりと優しく。



『これを一晩やってもらいます』



と説明され、続けて『お腹を押すと柔らかくなっているので、

裂ける可能性があるから絶対骨を押して、今見た場所がベスト。

定期的に浮いてくるので、朝迎えに来るまで続けてください。』



『は、はい・・・』



『浮き上がったらゴボッと鳴るからわかるので、本を読むとか、

してていいけど、居眠りしたらダメ、絶対にダメ。

遺体が乾いてしまうからね』



『あ、はい・・・』



『じゃぁよろしく頼むね』



そう言うと先生は部屋を出た。

ドアが閉まるとカチャリと鍵の閉まる音がした。

慌てた母親が『なぜ鍵を?』と声を張ると、

『気が触れて逃げ出したり、怖くなって帰る人が居るんだよ、

念のためですからご心配なく、ちゃんと時間に迎えが来ます』

と言われたそうです。



『あぁ・・・だから霊感か・・・』



察した母親だったが、仕事には真面目なので、

定期的に沈める作業をしたと言う。

しかし、こんな遅くまで起きていたことが無い母親は、

深夜0時を回ったあたりで、恐ろしく眠くなった。



『おい・・・・』



『おい・・・・』



誰かが呼ぶ声でぼんやりと目が覚めた。



『仕事しろよ・・・』



そう言われて、浴槽を見ると、

1人の男が浴槽から顔を出し、こっちを見ていた。

びっくりして椅子から転げ落ち、ドアに這って行って

ドアノブをガチャガチャするが鍵がかかっていた。



『助けて下さい!!!!!!!!!!!!』



どんなに叫んでもドアを叩いても誰も来なかった。



ふとさっき『仕事しろよ』と言われたのを思い出した。

『あ、そうか、乾いたら困るんだよな』

そう思うと脳のスイッチが切り替わったと言う。



浮いてきた男性を押し込んでは浮き上がるのを淡々と待った。

そうして午前4時頃、パタパタパタとスリッパの音がし、

カチャリと鍵が開いて看護師が1人入ってきてこう言った。



『何もなかった?』



母親は『はい、何もなかったです』と答え、

封筒を1枚渡され『次は・・・・』と言い出したので、

『すみません、これで私は辞めます』と言い残し家に帰った。

なぜなら、仕事と割り切ってから、浴槽の周りには

人じゃないものが5人現れ、

朝までずっと話しかけられていたそうなんです。



幽霊とは話さない方が良いと聞かされていたので、

見えないふりをしていたそうですが。。。



封筒には2万円入っていたそうです。

休憩なしの6時間で2万円、時給だと3.333円(割り切れず)



この高額なアルバイト・・・あなたならやりますか。
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