22 / 121
ひかきぼう
しおりを挟む
母が昔、本当に昔、火葬場で仕事をしていたそうです。
今でいうアルバイトだが、そういう言葉もないと思う時代。
仕事は釜担当。
さて、この釜担当とはいったい何なのか?ですが。
昔の火葬場には、言葉は悪いけれど焼き加減を確認する為に
のぞき窓がついていたらしく、
その窓から定期的に中をのぞきこんでその炎の具合を確認し、
炎担当に指示するのが仕事だった。
火が強すぎると骨が残らなくなるし、弱いと時間がかかりすぎる。
そこら辺の加減が難しいのだそうだ。
そこで母親が見たと言う話しなのですが・・・
燃える事により筋肉が焼けて急激に縮んだりするらしく、
時には凄い勢いで起き上がったりするそうです。
手や足がギュン!と動くなんてのは日常茶飯事の事なんだとか。
起き上がって目が合う時もあるそうで、
流石に心地の良いものではなかった。
しかし、小窓から棒を入れて、その起き上がった人を押し戻すのも仕事。
骨がバラバラになってしまうので、なるべく寝たまま焼けたようにするのだ。
呼び方は色々あるようだが、そこでは『ひかきぼう』と呼ばれていた。
今日も火葬の仕事が入ったので、母親が小窓の側で準備をする。
常に見なくてはならない訳ではないが、見逃したら親族に骨の粉を
拾わせることになりかねない、それだけはあってはならないので、
母親は余計な程覗き込んだと言う。
そんな母親が目を離した瞬間『バン!』と音がした。
釜の中を慌てて覗くと、棺桶を突き破って上半身が起き上がっていた。
またか・・・そう思い、ひかきぼうを小窓から入れ、
押し倒そうとしたのだが、全然倒れない。
必死になってグイグイ押すと、なんと中から引っ張られる感覚があったと言う。
『え?』と思いつつも押したり引いたりを続けていると、
力の抜けたその一瞬でひかきぼうがスポン!と小窓の中に引っ張られてしまった。
感覚的には完全に中から引っ張り込まれたのだが、
中は猛火だ、仮に中の人が生き返ったとしても数秒だって持ちはしない。
そう考えると、同僚に『中に引っ張り込まれた』とは言えなかった。
焼き時間が終わり、その棒の事実を聞いていた担当が、
何事もなかったように安全手袋みたいなものをして、
骨の横にあったひかきぼうをスッと取って、横に置いた。
事なきを得たのだが、そのひかきぼうをどかしてくれた担当が、
休憩時間にボソッと言った。
『あのご遺体、ひかきぼうをちゃんと握ってたんだよね。』
今でいうアルバイトだが、そういう言葉もないと思う時代。
仕事は釜担当。
さて、この釜担当とはいったい何なのか?ですが。
昔の火葬場には、言葉は悪いけれど焼き加減を確認する為に
のぞき窓がついていたらしく、
その窓から定期的に中をのぞきこんでその炎の具合を確認し、
炎担当に指示するのが仕事だった。
火が強すぎると骨が残らなくなるし、弱いと時間がかかりすぎる。
そこら辺の加減が難しいのだそうだ。
そこで母親が見たと言う話しなのですが・・・
燃える事により筋肉が焼けて急激に縮んだりするらしく、
時には凄い勢いで起き上がったりするそうです。
手や足がギュン!と動くなんてのは日常茶飯事の事なんだとか。
起き上がって目が合う時もあるそうで、
流石に心地の良いものではなかった。
しかし、小窓から棒を入れて、その起き上がった人を押し戻すのも仕事。
骨がバラバラになってしまうので、なるべく寝たまま焼けたようにするのだ。
呼び方は色々あるようだが、そこでは『ひかきぼう』と呼ばれていた。
今日も火葬の仕事が入ったので、母親が小窓の側で準備をする。
常に見なくてはならない訳ではないが、見逃したら親族に骨の粉を
拾わせることになりかねない、それだけはあってはならないので、
母親は余計な程覗き込んだと言う。
そんな母親が目を離した瞬間『バン!』と音がした。
釜の中を慌てて覗くと、棺桶を突き破って上半身が起き上がっていた。
またか・・・そう思い、ひかきぼうを小窓から入れ、
押し倒そうとしたのだが、全然倒れない。
必死になってグイグイ押すと、なんと中から引っ張られる感覚があったと言う。
『え?』と思いつつも押したり引いたりを続けていると、
力の抜けたその一瞬でひかきぼうがスポン!と小窓の中に引っ張られてしまった。
感覚的には完全に中から引っ張り込まれたのだが、
中は猛火だ、仮に中の人が生き返ったとしても数秒だって持ちはしない。
そう考えると、同僚に『中に引っ張り込まれた』とは言えなかった。
焼き時間が終わり、その棒の事実を聞いていた担当が、
何事もなかったように安全手袋みたいなものをして、
骨の横にあったひかきぼうをスッと取って、横に置いた。
事なきを得たのだが、そのひかきぼうをどかしてくれた担当が、
休憩時間にボソッと言った。
『あのご遺体、ひかきぼうをちゃんと握ってたんだよね。』
1
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【時代小説】 黄昏夫婦
蔵屋
歴史・時代
江戸時代、東北地方の秋田藩は貧かった。
そんな中、真面目なひとりの武士がいた。同僚からは馬鹿にされていたが真面目な男であった。俸禄は低く貧しい。娘二人と実母との4人暮らし。
秋田藩での仕事は勘定方である。
仕事が終わると真っ直ぐ帰宅する。
ただひたすら日中は城中では勘定方の仕事をまじめにして、帰宅すれば論語を読んで知識を習得する。
そんな毎日であった。彼の名前は立花清左衛門。年齢は35歳。
娘は二人いて、一人はとめ15歳。もう一人は梅、8歳。
さて|黄昏《たそがれ》は、一日のうち日没直後、雲のない西の空に夕焼けの名残りの「赤さ」が残る時間帯のことを言う。「|黄昏時《たそがれどき)」。 「黄昏れる《たそがれる》」という動詞形もある。
「たそがれ」は、江戸時代になるまでは「たそかれ」といい、「たそかれどき」の略でよく知られていた。夕暮れの人の顔の識別がつかない暗さになると誰かれとなく、「そこにいるのは誰ですか」「誰そ彼(誰ですかあなたは)」とたずねる頃合いという意味で日常会話でよく使われた。
今回の私の小説のテーマはこの黄昏である。
この風習は広く日本で行われている。
「おはようさんです」「これからですか」「お晩でございます。いまお帰りですか」と尋ねられれば相手も答えざるを得ず、互いに誰であるかチェックすることでヨソ者を排除する意図があったとされている。
「たそかれ」という言葉は『万葉集』に
誰そ彼と われをな問ひそ 九月の 露に濡れつつ 君待つわれそ」
— 『万葉集』第10巻2240番
と登場するが、これは文字通り「誰ですかあなたは」という意味である。
「平安時代には『うつほ物語』に「たそかれどき」の用例が現れ、さらに『源氏物語』に
「寄りてこそ それかとも見め たそかれに ほのぼの見つる 夕顔の花」
— 『源氏物語』「夕顔」光源氏
と、現在のように「たそかれ」で時間帯を表す用例が現れる。
なおこの歌は、帖と登場人物の名「夕顔」の由来になった夕顔の歌への返歌である。
またこの言葉の比喩として、「最盛期は過ぎたが、多少は余力があり、滅亡するにはまだ早い状態」をという語句の用い方をする。
漢語「|黄昏《コウコン》」は日没後のまだ完全に暗くなっていない時刻を指す。「初昏」とも呼んでいた。十二時辰では「戌時」(午後7時から9時)に相当する。
「たそがれ」の動詞化の用法。日暮れの薄暗くなり始めるころを指して「空が黄昏れる」や、人生の盛りを過ぎ衰えるさまを表現して「黄昏た人」などのように使用されることがある。
この物語はフィクションです。登場人物、団体等実際に同じであっても一切関係ありません。
それでは、小説「黄昏夫婦」をお楽しみ下さい。
読者の皆様の何かにお役に立てれば幸いです。
作家 蔵屋日唱
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる