アヤカシバナシ『小説版』

如月 睦月

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BARにて

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デザインの仕事をしていた時の話。

デザイン事務所と言う看板を掲げていたので、お金になるならやろうぜと言う社長のノリで、店舗デザインも承っていた。

とは言え建築までは行えないので、イメージを作ると言った方が良いかも。

つまり単純に言うと和風の居酒屋を洋風なBARに変える為の店内や小物、外観から看板、メニュー、名刺まで総合プロデュースする。

でもあくまでもイメージまでしかやらないから、材質や具現化するための妥協点なんかは大工さんとやってくれ、

そんなお仕事です。

それも大っぴらではなく、それでもいいと言う殆ど知り合いレベル限定で承っていたのでした。

実際私が担当した店舗は日本に数店舗あり、海外にもいくつか存在する。

真っ赤なレザーの皮の椅子にシルバーのスタッズを・・・なんて言うモノを提案したりするが、実際はフェイクレザーにメッキのスタッズだったりもする、それでも仕上がりはイメージ通りで、流石大工さん!と言った感じだった。

そしてその日も依頼があった。

依頼内容は閉店したBARを買ったらしく、そこでBARを始めたいとの事。早速イメージを聞いたりして打ち合わせを済ませ、実際にお店を見に行く事になった。

社長と2人で行く事になり、その閉めたBARがあるビルへ。

昼間の飲み屋ビルと言うモノは妙に暗い。

当然夜からお店が開くから空っぽと言うのもあるが、なんだろう、寂しさみたいなものが凄い。薄暗い通路を抜けて奥の部屋の鍵を開ける。明らかに後付けされた重くて立派な木の扉を引く。お年寄りなら開けられない重さだ。まるで中が真空だったかのように一気に空気と一緒に

私も吸い込まれる感覚で中に入った。

電気が通っていないので真っ暗で、当然と言うかそう言うモノだと思うけど、窓はなかった、持って来た懐中電灯で照らすとテーブルにぶっといローソクがあった。

『これで灯りをとって打ち合わせでもしたのかな』

そう思い、当時はタバコを吸っていたのでライターを出して、ロウソクを灯した。

普通なら暖かい光のはずなのだが、なんだかやたらと冷たく、刺々しい炎の揺れに気味の悪さすら感じた。



プルルルルルルルル・・・・・・・・・・・



心臓が口から飛び出してテッテレー!とか言いそうな程驚いた。

社長のケータイが鳴ったのでした。

少し社長が話して電話を切り『行かなきゃならなくなったから、お前ひとりでここ見てイメージして、あと今日は直帰でいいから』と言ってそそくさと帰ってしまった。

社畜扱いされて毎日深夜に帰っても嫌味を言われると言うのに、今は16時、2時間もしたら直帰でいいとは嬉しすぎる!!!!!とは言えなかった。こんな気持ちの悪い場所に2時間!?残業の方が良いわ!いつもの手当の出ない違法の残業でいいわ!と叫んだ。

このビルは大きな道路から少し外れているので、外の音が全く聞こえない、だから私の声も聞こえない。最初は大声で歌ったりもしたのだが・・・・



バチン!



パァン!



ええ、妙な破裂音がし始めたのです。

俗に言うラップ現象と言うモノかもしれませんが、私には分からないのでそうだとは言えません。



カラン・・・



カラン・・・



カウンターから明らかにグラスに氷を入れる音がした。

もう吐き気がするほど怖くて震えた。

人ってこんなに震えるの?ってくらい震えた。



『きききのすすすすぇいいいいいいい』



となるほどに。



その不思議な音は恐怖感を掻き立てるかのように、徐々に大きくなっているように思えた。



ボフ・・・ボッ・・・



ドン・・・・ドォオオオン!!!



一体何の音なのか、床に椅子を投げた様な音だった。



ドン!・・・・ドオオン・・・



ドン!・・・・ドオオン・・・



同じ音が繰り返されてる事に気が付いた。

ギシギシときしむ音がするので上を見るが、別段なにも無かった。



すると今度は後ろからトイレの流す音が聞こえた。



キュ!



ゴバァアアアアアアアアアアアアアアアアアア・・・



いるわけない、誰も居ないのにである・・・

振り向けなかったのですが、私の耳にはドアの向こうに微かな気配を捉えていた。

人が居るあの感じ・・・・



フッ・・・とロウソクを消して懐中電灯のスイッチを入れた。



キィ・・・



トイレのドアノブを回す音だと思う。

もう絶対だめだ、危ないと判断した私はそのまま出口へダッシュ。

鍵を閉めて早いけど直帰した。



翌日社長にあのBARで何かなかったか調べるよう勧めると、丁度依頼主さんが訪ねてきたので、単刀直入に社長が切り出した。

『あそこ、何で閉めたか知ってる?』

『あぁ、ママさんが店で首つり自殺だってさ、ははは

噂だよ噂、借金して逃げたんじゃないの?ははは』



多分あの時のドン!は首を吊った時の音で、ドォオオン!はその弾みで椅子が倒れた音だろう。その仕事はもちろん承って、無事オープンしました。

最初に幽霊BARを提案したが却下されたのは置いておきましょう。



翌々月だったと思うのですが、集金で伺った時にお店が閉まっており、ドアには都合により閉店しましたと張り紙が。

社長に連絡を入れて会社に戻る。



その後、社長がBARの経営者の足取りを追ってみたが分からず、スタッフも出社したら貼り紙があったのだと言う。

しょうがないので探偵を雇って調査してみたが、出た結論は『行方不明』だった。



今でもそのビルは存在する。
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