アヤカシバナシ『小説版』

如月 睦月

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女の行き先

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深夜の街を車で走り回り、女の子に声をかけてデートする、見ず知らずの若者たちが出会う手段の一つでもあった。当然だがその夜のうちにホテルへ行く場合もあれば、その後何度も会って付き合う事になるなんてことも普通だった。アグレッシブな合コンみたいなものですかね。

そんな行為が街で流行っていた時のお話なのですが、友人2人が車で、いわゆる『流す』行為をしていたそうです。

街に出ている女の子がその日は少なく、声をかけてもかけても振られる事が続いていたと言います。2人は女の子を誘う事を諦め、昔話をしながら街をぶらぶらと流していた。いつの間にか街の外れに来てしまい、海で行き止まりに突き当たった。そこで少し話を楽しんだ後、じゃぁ帰ろうかとバックをした時、一人の女性が立っている事に気が付いた。

海の側なので女性が深夜に風に当たりに来た・・・と言うのもまんざら無くもないだろうと思ったそうです。

声をかけて見た。

『お姉さん、良かったら乗って行きませんか?送りますよ』

その女性は声をかけた男性を2秒ほど見つめると、コクリと1つ頷いてゆっくりと乗り込んできたそうです。

本日は全く女性が釣れず、ガッカリムードだっただけに2人はとてもテンションが上がって女性に次々話しかけて行きました。女性はうんざりすることなく、微笑んで話を聞いていたが、話すことは無かったと言います。

数時間が経過してその女性が口を開いた。

『火葬場に行きたい』

2人は押し黙った。
それは数秒・・・数十秒だったかもしれない。
運転手がやっと口を開いた・・・。

『き・・・きもだめししたいの・・・かな?』

もう一度女性が言った。

『火葬場に行きたい』

一度目と全く同じトーンでその女性は言った。

外の光が差し込んで女性の姿が映し出された時、初めてその全貌が見えたという。それはごくごく普通の女性、黒髪のショートボブで白いワンピース、ちゃんと白いサンダルを履いていたという。

その姿をちゃんと見た男性は『脚があるから幽霊ではない』と安心したのか、『わかった、行こう行こう』と言い、車を火葬場に向けた。
40分ほど走り、車は山の中に差し掛かった。
この街の火葬場は1つしかなく、その薄気味悪い木々が鬱蒼と生い茂る道を更に30分ほど進んだところにあった。

火葬場で車をくるりと大きく一周するように駐車場を回ると車を停めた。振り返ると女性が車を降りて笑顔で手を振り『ありがとう、バイバイ』と言って火葬場の建物の奧に消えて行ったと言う。少し待ってみたが女性が戻ってくる事は無く、どう考えてもここが家であることも考えらないし、2人は戻ってこられてももう朝の3時だしな・・・と言う事でその場を去ることにした。何となく気になって振り返ると火葬場の窓の1つがまるで燃えているように真っ赤に染まり、黒い影が手を振っていたというのである。恐ろしくなって2人は無言で山を下りた。

何処かで亡くなり、火葬される前に遊びたかったのか、既に火葬されたがもう少し遊びたいと言う未練があったのかはわからないが、そんなことより自分の意思で『火葬場に行きたい』と言う幽霊なんか居るのだろうか。

ただただ暗闇にその女性は消えて行っただけかもしれないのだが。

真相が全くわからないアヤカシバナシでした。
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