アヤカシバナシ『小説版』

如月 睦月

文字の大きさ
97 / 121

毛布をかけただけなのに。

しおりを挟む
後輩が勤めていたスーパーで起きた話です。
その建物は少し変わっていて、お手洗いは在庫などを管理するバックルームにあり、お客様がお手洗いに行くためにスタッフに混じって倉庫を歩く事が日常茶飯事。それを利用した万引きも非常に多く、悩みの種でもあった。
また、バックルームを抜けると屋上に行くことができ、その為の扉には特に鍵も買っていないと言うずさんな管理状態だったと言う。

そんな事だから飛び降り自殺がついに起きてしまった。

屋上は三階、その日店長の叫び声に気が付き外へ出ると、従業員出入り口からでて5メートルほど先にあるゴミ箱の前で店長が地面に座り込んでいた。
近寄ると店長の先に人が倒れているのが見えたので、店長をそのままにして倒れる人に歩を進めると頭が半分潰れ、肉片が飛び散っていた。振り向いて店長を見ると店長も肉片と血にまみれているのがわかった。
後輩は飛び降り自殺だと直感し、屋上を見上げた。

ふと我に返り、一度スーパー内部に戻ると、毛布を持ってきて倒れている人にそっとかけてあげた。見た感じは女子高生、セーラー服のままだ飛び降りたようで、後輩は警察に電話をした。本来ならば店長のやるべきことだが腰を抜かしてアワワワと言うだけなので使い物にならない。

警察が来て処理を行う、その手際の良さは慣れたもので、あっという間に何事も無かったように清掃まで行っていった。警察に寄れば屋上に鞄があり、遺書があったので自殺だろうと言う見解だった。当然屋上へ行く為の施錠状態などの管理体制はスーパーの上層部へ警察の手が入る様だった。取り敢えず屋上へ出る扉には即施錠することが義務付けられ、お客様がバックルームに入ってもトイレ以外の移動が出来ないよう、スタッフが見張ると言う体制がとられた。

そのスーパーは夜21時閉店で、店長の休みの日は責任者である後輩が閉店業務を行うので、基本的には施錠して後輩が店を出るのは22時になると言う。

数日後、この日は後輩が閉店業務を行う日だった。
21時の閉店後、店内の電気を消し、真っ暗な中懐中電灯で居残りのお客様が居ないか確認すると同時に異常が無いかチェック項目に基づいて館内を歩いた。

一階のゲームコーナーを回ると、突然一台のゲーム機の電源が入った。
驚いた後輩、それもそのはず、ブレイカーを落しているのだから電源が入る理由が無いのだ。怖いと言う感覚よりはビックリした後輩、見回り終わったらブレイカーを確認しようと呟くと、二階、三階を見回り、最後に食品売り場を回って終ることにした。

生鮮食料品コーナーを回り、青果コーナーに入ると、一斉にエンドレステープが大音量で流れ出した「いらっしゃいませいらっしゃいませ!」口から心臓が飛び出そうなほど驚いた後輩、念のためブレイカーを確認しに戻るが、確実にOFFになっていた。再度売り場に出るとエンドレーステープの音は鳴っておらず、不思議でいっぱいになった後輩。その時、悲し気に泣いている声が聞こえて来た、近くに居ない限りそうそう聞き取れるとは思えない静かな鳴き声がはっきりと耳に聞こえてくる。その感覚に気持ち悪さを感じた後輩、今日はもう帰ろうと振り向いた先、懐中電灯に照らされたのはセーラー服を来た女の子がうずくまっている姿だった。

数日前の飛び降り自殺を思い出した後輩はあの子だと直感した。

すると「ドスン!」と言う、例えるなら米俵を投げつけたような音がした。続けざまに「ドスン!」「ドスン!」「ドスン!」「ドスン!」「ドスン!」「ドスン!」「ドスン!」「ドスン!」「ドスン!」「ドスン!」「ドスン!」「ドスン!」「ドスン!」「ドスン!」「ドスン!」と何度も何度も聞こえた、それは終わることが無く、どんどん大きくなっている気すらした。

耳が痛くなり、吐き気がして怖くなった後輩は逃げるように外へ出て施錠して帰った。

その現象は何度も何度も後輩が閉店業務の日にだけ起こったそうで、誰に聞いてもそんな事は一度もないとの事。やがて後輩は日常生活にも支障をきたしはじめ、入荷した荷物がドスンと置かれるたびに恐怖を感じるようになり、耐えられなくなって退職したそうです。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

【時代小説】 黄昏夫婦

蔵屋
歴史・時代
 江戸時代、東北地方の秋田藩は貧かった。  そんな中、真面目なひとりの武士がいた。同僚からは馬鹿にされていたが真面目な男であった。俸禄は低く貧しい。娘二人と実母との4人暮らし。  秋田藩での仕事は勘定方である。  仕事が終わると真っ直ぐ帰宅する。 ただひたすら日中は城中では勘定方の仕事をまじめにして、帰宅すれば論語を読んで知識を習得する。   そんな毎日であった。彼の名前は立花清左衛門。年齢は35歳。  娘は二人いて、一人はとめ15歳。もう一人は梅、8歳。  さて|黄昏《たそがれ》は、一日のうち日没直後、雲のない西の空に夕焼けの名残りの「赤さ」が残る時間帯のことを言う。「|黄昏時《たそがれどき)」。 「黄昏れる《たそがれる》」という動詞形もある。    「たそがれ」は、江戸時代になるまでは「たそかれ」といい、「たそかれどき」の略でよく知られていた。夕暮れの人の顔の識別がつかない暗さになると誰かれとなく、「そこにいるのは誰ですか」「誰そ彼(誰ですかあなたは)」とたずねる頃合いという意味で日常会話でよく使われた。  今回の私の小説のテーマはこの黄昏である。  この風習は広く日本で行われている。  「おはようさんです」「これからですか」「お晩でございます。いまお帰りですか」と尋ねられれば相手も答えざるを得ず、互いに誰であるかチェックすることでヨソ者を排除する意図があったとされている。  「たそかれ」という言葉は『万葉集』に 誰そ彼と われをな問ひそ 九月の 露に濡れつつ 君待つわれそ」 — 『万葉集』第10巻2240番 と登場するが、これは文字通り「誰ですかあなたは」という意味である。  「平安時代には『うつほ物語』に「たそかれどき」の用例が現れ、さらに『源氏物語』に 「寄りてこそ それかとも見め たそかれに ほのぼの見つる 夕顔の花」 — 『源氏物語』「夕顔」光源氏 と、現在のように「たそかれ」で時間帯を表す用例が現れる。  なおこの歌は、帖と登場人物の名「夕顔」の由来になった夕顔の歌への返歌である。  またこの言葉の比喩として、「最盛期は過ぎたが、多少は余力があり、滅亡するにはまだ早い状態」をという語句の用い方をする。 漢語「|黄昏《コウコン》」は日没後のまだ完全に暗くなっていない時刻を指す。「初昏」とも呼んでいた。十二時辰では「戌時」(午後7時から9時)に相当する。  「たそがれ」の動詞化の用法。日暮れの薄暗くなり始めるころを指して「空が黄昏れる」や、人生の盛りを過ぎ衰えるさまを表現して「黄昏た人」などのように使用されることがある。  この物語はフィクションです。登場人物、団体等実際に同じであっても一切関係ありません。  それでは、小説「黄昏夫婦」をお楽しみ下さい。  読者の皆様の何かにお役に立てれば幸いです。  作家 蔵屋日唱    

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

処理中です...