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四人が砂浜に足を着けると、一同から拍手で出迎えられた。
八尾と田主の携帯は鳴り続けているが、この時くらいは放置しても許されるだろう。
自身の魔力をドリルに混ぜて使ったアキラよりもまだ余力があったミコトが四人を海岸まで浮かせて連れて来たのだ。
ミコトが魔術を解くと、やはりストレートだった黒髪に金髪のメッシュが入り、少しうねりが出てきているように見える。
ユキリンに鏡を借りて見ると、切れ長からパッチリ二重になった瞳は黒っぽいが瞳孔は完全に青色になっている。
「は~こんな風になるんだねぇ・・・まぁ、別に困りゃしないしいいさ!」
相変わらずアッサリとしている。
ユウトも同様に金髪のメッシュになり身体が一回り大きくなったように見えるが、こちらは元々が筋肉質な身体付きだったので顔の彫りが少し深くなってよくよく見ると目の色が違うかも?程度の違いだ。
「髪は染めればいいし、学校もあと半年だ。別に構わないさ」
と、こちらも意に介していない。
「しかし、魔素?が溢れてしまったとなると、色々と変化が起こるんですよね?」
八尾が切り出す。おそらくドローンの映像を見ていた上層部から、四人が帰ってくるまでにも電話で色々と聞かれていたようだ。
「こればっかりはどんな変化があるのか、しばらく様子を見るしかないね」
ミコトが肩をすぼめてみせる。
「どちらにせよ、魔術言語を話せないと使えないんだしね」
アキラも補足すると、ミコトが目を開いたまま固まる。
「師匠、どうし・・・」「アルディリック」
ミコトの声で、アキラも固まる。
話を聞いていた、ユウトとツバサも固まった。
「え!?なんで!?」
最初に動いたのはアキラだ。
「ど、どうしたんですか?」
八尾も何故か一緒に慌てている。
「アッチの言葉が話せる!」
「魔素の影響か・・・?」
「アルディリック!アル!!」
とツバサが呼び、アキラが嬉しそうに「うん!うん!」と返す。
アルディリックは、アキラの名前のようだ。
だがこの世界では、皆それぞれこちらの世界の親に貰った名前があるはずだ。
両親の顔が思い浮かび、再び動きが止まるツバサ。
三人も同じ考えに至ったようで、一呼吸置くと
「前の名前は、あたしらだけの記憶の中に留めておこうか」
ミコトが提案すると、
「うん、そうだね」
と柔らかな笑みでツバサが答えた。
寂しいような、だけど悲しくはない。
そんな切ない空気に八尾が割って入った。
「と、いう事は・・・その言語を教えてもらえれば、魔術が使えるという事ですよね!?」
細い目を見開いて今までで一番嬉しそうな顔をしている。
この顔は、狐より犬っぽいな・・・いや、狐も犬の仲間だったな。
ツバサがどうでもいい事を考えていると、ミコトが冷たく言い放つ。
「別に教えてもいいけどさ、多分あんまり意味ないよ。異常な天才か、アタシらみたいに、転生魔術でも使った元々魔術師だった奴なら別だろうけど」
「えっ!?何でですか!?」
「あぁ、えっとな、前にも説明したと思うが・・・魔術ってのは学問なんだ」
ユウトが補足するように説明する。
「えぇ、ですからそれを学べば・・・」
「言語じゃないんだ、どちらかというと研究に近い。言葉を覚え、その成り立ちや一つ一つの単語の意味を理解し、その組み合わせや相性を把握して、魔素や魔力の出力を常に調整し続けながら術式を展開する。それでやっと一つの魔術が使えるようになる。俺達の国は魔術大国と呼ばれてほぼ全ての国民が何かしらの魔術を使えたが、その殆どは生活魔術、つまり灯りを付けたり水や火を出したりする程度だ」
「え、そうなの?」
ツバサも驚く。
ちなみにツバサは戦いに使える魔術以外は何も使えない。
「で、でもでもミコトさんもアキラさんもあんなにポンポン使って」
「・・・前世の世界でも!飛び抜けた魔術大国の中で!最も優秀で!魔術の扱いに長けた人間が!魔術師団に入れて!その中の頂点が師団長だっつってんだろうが!あたしゃその師団長だよ!この狐顔がぁー!!」
八尾の言葉に被せるようにミコトがキレ、その拍子に前世の姿に戻っている。
「銀の魔術師と呼ばれるのはその時代で最も優秀な一人だけだからな」
とユウトが笑い、
「金の戦鬼もじゃない?」
とアキラにニヤニヤと突っ込まれている。
「それは俺しか言われてないだろ・・・」
とユウトが珍しく少し恥ずかしそうな表情を見せる。
そこへユキリンが
「アキラくんとツバサちゃんは何かカッコいい二つ名とか無いんですか?」
と聞いて来た。
「僕は成人する前に魔物が来たから無いけど・・・ツバサにはあるよね?」
「そうだな、まぁ騎士団の中と、一部のファンの中でだけだが」
「ファンって・・・流石ツバサちゃん・・・で、何て言うんですか?」
「「紅の戦女神」」
「助けてもらった女の子が言い出したんだっけ?」
「俺は団員が言っていたのを聞いたのが初めてだったが」
二人の声が遠くなる。
ユキリンの心に何か引っ掛かるような、何か忘れているような・・・
「どうしたの?」
ツバサに声をかけられ、ハッとする。
「いえ、何も!」
「何か私の話してた?」
自分より背が低くなった元同僚をニコニコと見ながら聞くツバサ。
ユウトとアキラが「あっ」という顔をしたが、ユキリンは気付かない。
「紅の戦女神が世界を変えたって話です!」
笑顔で話すユキリンの言葉に固まるツバサ。
勢いよく二人の方を振り向くと
「どっちが教えたの!」
と顔を真っ赤にしていた。
笑い声が響く砂浜の遥か上空。
アキラと共に吹いた夏の風は懐かしき魔素を乗せ、世界を変える旅に出ようとしている。
最後までお読みいただきありがとうございました!
もし本作を気に入っていただけたら、現在連載中の『緑の手のキトル』もぜひ覗いてみてください。
【完結保証】幼女とイケメンとモフモフと一緒に、面白楽しい救世の旅に出掛けませんか?
本作とはまた違った「癒やしとワクワク」をお届けします!
▼『緑の手のキトル』はこちらから
https://www.alphapolis.co.jp/novel/610721679/48026558
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自身の魔力をドリルに混ぜて使ったアキラよりもまだ余力があったミコトが四人を海岸まで浮かせて連れて来たのだ。
ミコトが魔術を解くと、やはりストレートだった黒髪に金髪のメッシュが入り、少しうねりが出てきているように見える。
ユキリンに鏡を借りて見ると、切れ長からパッチリ二重になった瞳は黒っぽいが瞳孔は完全に青色になっている。
「は~こんな風になるんだねぇ・・・まぁ、別に困りゃしないしいいさ!」
相変わらずアッサリとしている。
ユウトも同様に金髪のメッシュになり身体が一回り大きくなったように見えるが、こちらは元々が筋肉質な身体付きだったので顔の彫りが少し深くなってよくよく見ると目の色が違うかも?程度の違いだ。
「髪は染めればいいし、学校もあと半年だ。別に構わないさ」
と、こちらも意に介していない。
「しかし、魔素?が溢れてしまったとなると、色々と変化が起こるんですよね?」
八尾が切り出す。おそらくドローンの映像を見ていた上層部から、四人が帰ってくるまでにも電話で色々と聞かれていたようだ。
「こればっかりはどんな変化があるのか、しばらく様子を見るしかないね」
ミコトが肩をすぼめてみせる。
「どちらにせよ、魔術言語を話せないと使えないんだしね」
アキラも補足すると、ミコトが目を開いたまま固まる。
「師匠、どうし・・・」「アルディリック」
ミコトの声で、アキラも固まる。
話を聞いていた、ユウトとツバサも固まった。
「え!?なんで!?」
最初に動いたのはアキラだ。
「ど、どうしたんですか?」
八尾も何故か一緒に慌てている。
「アッチの言葉が話せる!」
「魔素の影響か・・・?」
「アルディリック!アル!!」
とツバサが呼び、アキラが嬉しそうに「うん!うん!」と返す。
アルディリックは、アキラの名前のようだ。
だがこの世界では、皆それぞれこちらの世界の親に貰った名前があるはずだ。
両親の顔が思い浮かび、再び動きが止まるツバサ。
三人も同じ考えに至ったようで、一呼吸置くと
「前の名前は、あたしらだけの記憶の中に留めておこうか」
ミコトが提案すると、
「うん、そうだね」
と柔らかな笑みでツバサが答えた。
寂しいような、だけど悲しくはない。
そんな切ない空気に八尾が割って入った。
「と、いう事は・・・その言語を教えてもらえれば、魔術が使えるという事ですよね!?」
細い目を見開いて今までで一番嬉しそうな顔をしている。
この顔は、狐より犬っぽいな・・・いや、狐も犬の仲間だったな。
ツバサがどうでもいい事を考えていると、ミコトが冷たく言い放つ。
「別に教えてもいいけどさ、多分あんまり意味ないよ。異常な天才か、アタシらみたいに、転生魔術でも使った元々魔術師だった奴なら別だろうけど」
「えっ!?何でですか!?」
「あぁ、えっとな、前にも説明したと思うが・・・魔術ってのは学問なんだ」
ユウトが補足するように説明する。
「えぇ、ですからそれを学べば・・・」
「言語じゃないんだ、どちらかというと研究に近い。言葉を覚え、その成り立ちや一つ一つの単語の意味を理解し、その組み合わせや相性を把握して、魔素や魔力の出力を常に調整し続けながら術式を展開する。それでやっと一つの魔術が使えるようになる。俺達の国は魔術大国と呼ばれてほぼ全ての国民が何かしらの魔術を使えたが、その殆どは生活魔術、つまり灯りを付けたり水や火を出したりする程度だ」
「え、そうなの?」
ツバサも驚く。
ちなみにツバサは戦いに使える魔術以外は何も使えない。
「で、でもでもミコトさんもアキラさんもあんなにポンポン使って」
「・・・前世の世界でも!飛び抜けた魔術大国の中で!最も優秀で!魔術の扱いに長けた人間が!魔術師団に入れて!その中の頂点が師団長だっつってんだろうが!あたしゃその師団長だよ!この狐顔がぁー!!」
八尾の言葉に被せるようにミコトがキレ、その拍子に前世の姿に戻っている。
「銀の魔術師と呼ばれるのはその時代で最も優秀な一人だけだからな」
とユウトが笑い、
「金の戦鬼もじゃない?」
とアキラにニヤニヤと突っ込まれている。
「それは俺しか言われてないだろ・・・」
とユウトが珍しく少し恥ずかしそうな表情を見せる。
そこへユキリンが
「アキラくんとツバサちゃんは何かカッコいい二つ名とか無いんですか?」
と聞いて来た。
「僕は成人する前に魔物が来たから無いけど・・・ツバサにはあるよね?」
「そうだな、まぁ騎士団の中と、一部のファンの中でだけだが」
「ファンって・・・流石ツバサちゃん・・・で、何て言うんですか?」
「「紅の戦女神」」
「助けてもらった女の子が言い出したんだっけ?」
「俺は団員が言っていたのを聞いたのが初めてだったが」
二人の声が遠くなる。
ユキリンの心に何か引っ掛かるような、何か忘れているような・・・
「どうしたの?」
ツバサに声をかけられ、ハッとする。
「いえ、何も!」
「何か私の話してた?」
自分より背が低くなった元同僚をニコニコと見ながら聞くツバサ。
ユウトとアキラが「あっ」という顔をしたが、ユキリンは気付かない。
「紅の戦女神が世界を変えたって話です!」
笑顔で話すユキリンの言葉に固まるツバサ。
勢いよく二人の方を振り向くと
「どっちが教えたの!」
と顔を真っ赤にしていた。
笑い声が響く砂浜の遥か上空。
アキラと共に吹いた夏の風は懐かしき魔素を乗せ、世界を変える旅に出ようとしている。
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