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魔王討伐隊
進むしかない
しおりを挟むフィオがいなくなってから数日後。
僕たちは岩山を上る準備を終え、移動を始めた。
専門家の話だと、生贄は複数を集め、儀式で一度に命を捧げる必要があるらしく、それならば誘拐された者もまだ無事だろう。
フィオも魔王復活の場にいるのだろうか。
とにかく早く魔王復活の場へ辿り着かなくては。
偵察に出た者たちの話では、その場所は今向かっている場所で間違いないようだ。
実は少し思い当たる事が無かった訳ではない。
前世の記憶の中のある物語。
創造者からしたら、マッサーリ村と言う存在そのものが魔王を復活させる為に作ったのだろう。
だから、あの物語で僕が最速で魔王になったのはマッサーリ村を全滅させたからだと思う。
もしも、この世界に意思があるとして、シナリオを元に戻そうとするならば、いま残っているマッサーリ村の存在は邪魔なのかもしれない。
魔王復活に村人が使われる可能性は高いだろう。
それに勇者が愛する姫を魔物に誘拐されるイベントもあったよな……ん?
姫なんか出てきたか?
これが本当にあの話なら、主人公は一緒に魔王の住処へ向かう騎士団員のランベルトだ。
今のランベルト、王宮騎士団じゃなくて、只の騎士団員だが、どこかで姫と接点があるのか?
そういえば、この国の姫はあのクソ王子の妹で、兄と似てかなり腹黒い……。
それよりもっと気になるのが、もしかしてフィオが姫枠になってるんじゃないかと言う事だ。
このままランベルトに助けられて、ほ、惚れちゃうとかだったらどうするんだよ!
僕は隣を歩くランベルトをギっと音がするくらい睨みつけた。
「な、何なんですか?」
それに気付いたランベルトが狼狽えている。
じっと睨み続けると「もしかしてオレ、ディガッタ様に嫌われてますか?」と、小さく震えた。
「はいはい、ジルヴァーノ。若い子を虐めるんじゃないの」
「どうか仲良くしてやってくれないか」
僕とランベルトの間にガリエナとフォーレが同時に割って入る。
「チッ」
ランベルトめ。
フィオは絶対に渡さないぞ。
「では、ここから先の道のりは更に熾烈を極めると思う。命を大事に、無理だと思ったら安全地帯まで退くように」
この先、力不足の者が入っても逆に足手纏いになると言う事で、岩山への登頂は精鋭が選ばれた。
頂上近くになると、更に怪我をした者、先に進むのを躊躇う者などが段々と脱落し、結局、偵察から戻って来た案内の兵士数名と物語の通りにフォーレ、ランベルト、ガリエナ、ロルフォ、そして僕で先に魔王城へ侵入する事になったのだ。
只、この人数だけで切り込むとか無謀な話ではなく、取り合えず僕たちが先に行って浄化しながら進み、後から運搬係を任された辺境伯たちが人員と物資を持って来ると言う手筈である。
そうすれば滞在が長引いても大丈夫だろうと言う事らしい、あの物語と違ってちゃんと計画がされている。
だが、僕としては長引かせる気は無いのでさっさと進みたい。
暫く歩くと中心が近いらしく、前方にさらに濃い瘴気が溜まった場所があった。
身体に纏わり付くような感覚を感じるほど濃い瘴気の中では、魔力の少ないフォーレなど直ぐに正気を失ってしまうだろうが、そこは僕がいる。
神力のかけらも無く、魔力も少ないフォーレは勿論、念のため全員に瘴気を吸い込まないように浄化の魔石を付けた、前世で言うところのハーフフェイス型の防毒マスクに似た魔道具を全員に付けて起動してやった。
「おお、これは良いな。苦しさが半減したぞ」
「本当です、ジルヴァーノ様は凄いですね!」
「今度、神殿の方にも卸して下さい」
「流石は魔術師団魔道具開発部副責任者」
「ふっ……、当然だ」
くぐもった声が少々聞きづらいが、大丈夫そうだ。
そうして僕たちはその瘴気の中へ入っていった。
「瘴気を払いに行くと、大抵は魔物の群れに遭遇するのですが何もいませんね」
ロルフォの言う通り、異常な瘴気の濃さなのに魔物の気配さえない。
ロルフォは神官なので日常的に瘴気を払いに行くからこそ、この魔物の少なさは異常に感じたのだろう、彼は更に辺りを警戒する。
暫くの間、草むらの中に人ひとり通れるくらいの狭い道が続いたが、突然に視界が開けた。
そこには王国の北部によくある小さな集落があった。
尤も瘴気が濃いので、視界が黒い靄に覆われて視界が悪いのだが、周りには靴や農作業道具が散らばって落ちていて畑の農作物も枯れ、すでに屋根が落ちている家もうっすら見える。
住民は逃げたのだろうか、人の姿は見えないようだ。
「こんなところに集落があるなんて、住民はどこへ行ったのでしょう。無事に逃げられたなら良いのですが……」
辺りを伺いながらロルフォが戸惑っている。
「取り合えず、瘴気を払います。すみませんが増幅器を」
広範囲を一気に浄化するには、チート級の神力の持ち主のロルフォでもきついらしい。
僕は頷いて腰に付けている何でも入るマジックバッグから増幅器を取り出した。
こう言った、バッグより明らかに大きい物を取り出すとき、僕は魔法は便利だなぁと改めて思う。
でも、中に入る物の量は魔力量次第なので、一般人には使い勝手が悪い。
神殿側から託された増幅器は大きくて重い魔石がはめ込まれており、マジックバッグから出すと一気に荷重が掛かるので、ガリエナやランベルトに手伝ってもらって設置する。
こんなに嵩張るのは使いにくいだろうに。
帰ったら改良していいか神殿に聞いてみようと思った。
設置し終わると、ロルフォが増幅器の魔石に掌を当てる。
すると、増幅器の四方に空いた穴から白い光が出て辺りを包んだ。
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