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君を探して
任せろ
しおりを挟む「お前、何処から来た! 」
「上の刺客か! 」
「違う! 」
「止めて! 違います! 」
騒めきの中心で、女性の声がする。
聞いた事のあるその声は、リトス姫のものだ。
見える位置へ移動して覗き見ると、リトス姫が小柄な男を庇っていた。
「あっ! あいつ」
「ちょっと、ジルヴァーノ! 」
あいつは忘れもしない、フィオを攫った奴だ。
頭に血が上った僕は、角の事など忘れてそちらへ向かった。
人ごみをかき分けて進む時に戸惑う声が聞こえて来たが、今はそれどころじゃない。
後ろから近付いて肩を掴みこちらを向かせると、男は薄絹から覗く僕の顔を見て驚いていた。
「……ペトラ、だったか。フィオはどこだ? 」
「貴方こそ何故ここに? 」
魔力が漏れているだろうか?
男は顔色を悪くしている。
「いいから、フィオは? 無事なのか? 」
「は、はい! 安全な所にいます」
「本当だな! 」
「どう言う事なの? 」
僕の余りの剣幕に、リトス姫が割って入って来た。
どうやら首輪のせいで彼女には僕の魔力が分からない様だ。
僕がここへ来たのは、ペトラが僕の婚約者を攫ったせいだと説明すると、彼女は大層驚いていた。
「すみません、最後に姫へ貴方を会わせてあげたくて」
ペトラはフィオを攫えば、確実に僕が追って行くと思ったそうだ。
あの逃げる時の動き、追い付きそうで追い付かなかったのは、わざとだったのか。
「ところでお前、ここに入って来られたと言う事は当然出られるんだよな」
「……はい」
「場所は? 設定できるのか? 」
「これは対の魔法陣のある場所にしか移動できません」
ペトラはこの方法ならば、移動場所がブレないと言う。
「よし、そこへ僕を連れて行け。外からここを開ける。お前、姫を連れに来たんだろう? 僕が先に行って様子を見て来ても良いよな」
「ちょっと、何言ってるの? ここから出たらどうなるか分からないのよ! 」
僕の話を聞いた周りの者たちも次々に反対の声を上げた。
皆、地上での生活を捨てて来た者たちばかりで、存在も抹消されており、ここから出たら奴隷以下の扱いなのだそうだ。
しかも、この遺跡での異変。
これで勝手に外へ出たりしたら、この責任を取らされて殺されかねない。と、皆が反対した。
「ねぇ、今日の順番は貴方だったのでしょう? この異変はなんなの? 『王』はどうしたの? 」
ついに姫が僕に掴みかかって来た。
その拍子に頭の薄絹が外れてしまう。
「ひっ……」
騒がしかったその場がシーンと静まり返った。
「あーあ」
暫くすると、静寂を破ったガリエナの声が響いた。
「バレちゃったら仕方ない。ジルヴァーノ、皆に説明して」
全く、こいつはちょっと面白がってないだろうか?
仕方がないので、僕は階段を一段上がって、皆を見回した。
僕の角を見て、皆、顔を青くしている。
「皆……、信じてもらえるか分からないが、僕が今代の魔王、ジルヴァーノ。ジルヴァーノ・ディガッタだ。『真の王』は僕と主従契約をして、今は休眠状態になった。行けば分かると思うが、彼は……アルベロは大樹になった。もう、あいつが何かをする事はない」
「なんて事……。用済みになったら私たちは殺されてしまう」
誰かがそう言うと、再び騒がしくなる。
え、そこは安心するところじゃないのか?
アルベロに魔力供給するより、リチェルカーレ王の方が嫌がられてるのか。
直ぐに殺すとか、穏やかじゃないな。
「待て、待て! 要するに皆、行くところがないんだな? 姫もか? ここに未練はあるか? 」
「ないわよ。正直、弟妹が私と同じ目に合わなくなってホッとしてる」
リトス姫は本気なのだろう、僕から目を反らさずにそう言った。
「ならば、この国を僕がもらっても構わないな。ペトラ、派手にやって引き付けるから、僕を外へ連れて行ってくれ。ガリエナはここを守れ。他にも戦える者がいたら加勢してくれ。皆、悪いようにはしない、俺に任せてくれ! 」
大きい事を言ってみたが、胸の内では心臓がバクバク言っていた。
皆もいつまでも騒いでいる。
しかし、魔族の混血の者も協力をしてくれると名乗り出てくれ、戦えそうな若い男も即席の武器を持ってやってきた。
リトス姫も武芸の心得があるそうで、そこに加わる。
姫は「何もしないで死ぬより良い」と言っていた、強い。
おかげで、侍女たちも協力してくれることになった。
その他、戦えない者、気の乗らない者は各部屋へ戻って、簡単に扉を破られない様に家具などで塞いでいる。
「では、行ってくる」
皆が落ち着いてから、僕は移転の為に、ペトラの指示でその肩に触れた。
ペトラが懐から魔法陣を取り出して広げると、羊皮紙の部分から魔法陣が空中へ浮かび上がり、一瞬光ったと思ったら、そこは既に外だった。
久しぶりの外だ。
僕は嬉しくて大きく深呼吸をする。
「ディガッタ様、誰か来ます」
木陰に身を隠すと、数人の兵士がやって来てドーム型の礼拝場の方へ走っていった。
「あの下がさっきまでいた場所です」
僕は頷くと、急いでそちらと逆にある王城の方へ雷を放った。
――いつもと同じ調子で魔術を放ったつもりだったのだが、一瞬空が暗くなり、巨大な雷撃が王城の屋根に当たった。
城は石造りだったせいで火事にこそならなかったが、雷撃は爆音を響かせて屋根どころか建物を半壊させてしまう。
「やりすぎた……」
僕が焦っていると、先に我へと返ったペトラが僕を再び木陰に隠した。
目の前を先程の兵士が駆けて行く。
「私たちも行きましょう」
ペトラに先導されて、僕も王城の方を目指して走った。
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