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許して欲しい。
「うーん」
サシャが気が付くと、すでに外は明るかった。
裸のまま毛布に包まって眠っていたサシャは、布団を解いて伸びをしてから自分の身体を見た。
腹の魔法陣は黒い線だけになっていて、もう光ってはいない。
身体の節々が少し痛いけれど、気分も身体もすっきりしていた。
側にサシャの荷物が置いてあったので、そこから替えの服を出して身に付けると、毛布を干そうと小屋の外へ向かった。
外へ出ると良い天気で、太陽はだいぶ上まで来ている。
湖はキラキラと太陽の光を反射し平穏そのものだ。
サシャは小屋の脇の日当たりの良い岩の上に布団と服が洗われて干してあるのを見つけた。
どちらもだいぶ乾いているので、かなり前に洗濯したのだろう。
(そうだ、竜族の人。 オレ、あの人に助けてもらったんだ)
魔法陣が光って体調が悪くなった後の事はうろ覚えだったが、アルバがサシャを抱えて小屋まで運んでくれたのは間違いない。
サシャはせめてお礼を言おうとアルバはどこにも見つからなかった。
でも、布団や洗濯物を干したまま何処にも行かないだろうと思い、サシャは手近な切り株に腰を下ろしてアルバが戻って来るのを待った。
「あ、」
暫くすると、アルバが湖の向こうの森から出てきた。。
サシャが切り株から立ち上がって小さく手を振ると、アルバの足取りが少し縺れたような気がした。
戻ってきたアルバの手には鳥が一羽。
それを見たサシャは小屋から道具を持ってきて、アルバと並んで調理を始めた。
鳥のの肉を串にさして、アルバが点けてくれた焚き火の回りに並べていく。
味付けは塩しかないが仕方がない。
出てきた小さい魔石はサシャがもらった。
「サシャ、身体は大丈夫か?」
焼けるのを待っていると、アルバがおずおずと声を掛けてきた。
大きい体と裏腹に内気そうな姿がアンバランスで可愛いな、とサシャは思う。
「うん、全然平気。
迷惑かけてごめんね、えっと、」
「俺はアルバだ。
サシャなら構わないさ」
「?」
名前を呼ばれて、いつ名前を教えたのかとサシャは訝った。
それからサシャは焚火の側で近くになっていた果物を剥いたり、荷物の中から出したパンを切って並べたりしていたが、その間ずっとアルバはサシャに付いて回っている。
時々、蕩けるような甘い視線を投げかけられてサシャは困惑してしまった。
(なんで? オレ何かした? オレの名前も知ってたし)
アルバみたいな格好良い人が自分の事を好いてくれるのは嬉しいが、自分が好きなのは女の子なんだよなぁと、焚火を眺めながらサシャは思った。
いつか好きな子のおっぱいを揉んでみたいな、とか。
(あれ?昨夜……)
サシャは突然、昨夜の事を思い出した。
発情して意識が朦朧としていたが、した事は何となく覚えている。
(そう言えば、アルバのおっぱいを揉んだかもしれない、それに)
そっと下腹部を押してみると、そこに入っていた熱くて大きなモノの事も思い出した。
「っつ!」
サシャは弾かれるように立ち上がる。
「気分が悪いのか?」
立ったまま固まってしまったサシャを「やっぱり具合が悪くなったのか?」とアルバが覗き込む。
「アルバ……本当にごめん!!!」
サシャは真っ赤になり、今度は地面に臥して土下座した。
「昨日は助けてくれて本当にありがとう!
オ、オレ、まさかサキュバスにあんな呪い掛けられるなんて。
初めて会った、好きでもない、それも男とあんな事してくれて本当に感謝してます!」
「……サシャ」
ひたすら謝り続けているとアルバが頭を上げるように促してきた。
サシャが額に泥をつけたまま顔を上げると、そこには優しく微笑むアルバがいて、サシャは少し見惚れてしまう。
「俺は嫌ではなかったから。
それから、その呪いを解いてもらえる宛てがある。
ただ、場所は王都なんだ。
俺も王都に戻らないといけないから一緒に行かないか?」
優しく額の泥を払いながら、アルバがそう言ってくれる。
サシャは、まだ出会って間もない男にそこまでしてくれようとするアルバの気持ちがが嬉しくて、思わず抱きついてしまった。
「行く!
アルバ、本当にありがとう。
格好良くて、優しくて。
ああ、オレが女の子だったら絶対にアルバのお嫁さんになるのになぁ」
サシャは何の気も無しにそう言ったが、アルバは固まってしまった。
「そうだ、お礼しなくちゃ!
オレ、お金無いんだけど、それ以外で何かできる事とかある?
恩人のアルバにお返ししたいんだ!」
と、サシャは今度は身体を離すと顎に手を当てて考え始める。
何とも忙しない姿にアルバは思わず苦笑してしまった。
「いや、何も。 ただ、俺がお前の側にいるのを許してくれればそれで良い」
「それはこっちの科白だよ!
でも、それじゃアルバの仕事を邪魔しちゃうでしょ?」
「それは平行して済ませるから大丈夫だ」
「そ、そうなんだ。
でもオレ、迷惑掛けっぱなしなんて嫌だし、やっぱり何か考えといて」
と言うと、アルバは「俺の事を気に掛けてくれるなんて嬉しいな」と言って、甘い瞳を向けて来た。
そんな風に見つめられると、呪いが発動していないにも関わらず心臓が忙しなく跳ねてしまう。
サシャは胸が苦しくなって、心臓の辺りの服をぎゅっと掴んだ。
それからサシャは何故か子供のようにアルバに世話されながら食事をした。
食べさせられながら、こんなに誰かに甘えさせてもらったのは何時ぶりだろうと考える。
ちょっと嬉しくて、ちょっと恥ずかしい。
でも、アルバみたいな人は好きだなぁとサシャは思った。。
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