オレと竜族の事情~淫紋ってどうやって消すんですか?~

ume-gummy

文字の大きさ
5 / 34

許して欲しい。

 
「うーん」
 サシャが気が付くと、すでに外は明るかった。

 裸のまま毛布に包まって眠っていたサシャは、布団を解いて伸びをしてから自分の身体を見た。
 腹の魔法陣は黒い線だけになっていて、もう光ってはいない。
 身体の節々が少し痛いけれど、気分も身体もすっきりしていた。
 側にサシャの荷物が置いてあったので、そこから替えの服を出して身に付けると、毛布を干そうと小屋の外へ向かった。

 外へ出ると良い天気で、太陽はだいぶ上まで来ている。
 湖はキラキラと太陽の光を反射し平穏そのものだ。

 サシャは小屋の脇の日当たりの良い岩の上に布団と服が洗われて干してあるのを見つけた。
 どちらもだいぶ乾いているので、かなり前に洗濯したのだろう。
(そうだ、竜族の人。 オレ、あの人に助けてもらったんだ)
 魔法陣が光って体調が悪くなった後の事はうろ覚えだったが、アルバがサシャを抱えて小屋まで運んでくれたのは間違いない。
 サシャはせめてお礼を言おうとアルバはどこにも見つからなかった。
 でも、布団や洗濯物を干したまま何処にも行かないだろうと思い、サシャは手近な切り株に腰を下ろしてアルバが戻って来るのを待った。

「あ、」
 暫くすると、アルバが湖の向こうの森から出てきた。。
 サシャが切り株から立ち上がって小さく手を振ると、アルバの足取りが少し縺れたような気がした。

 戻ってきたアルバの手には鳥が一羽。
 それを見たサシャは小屋から道具を持ってきて、アルバと並んで調理を始めた。
 鳥のの肉を串にさして、アルバが点けてくれた焚き火の回りに並べていく。
 味付けは塩しかないが仕方がない。
 出てきた小さい魔石はサシャがもらった。

「サシャ、身体は大丈夫か?」
 焼けるのを待っていると、アルバがおずおずと声を掛けてきた。
 大きい体と裏腹に内気そうな姿がアンバランスで可愛いな、とサシャは思う。
「うん、全然平気。
 迷惑かけてごめんね、えっと、」
「俺はアルバだ。
 サシャなら構わないさ」
「?」
 名前を呼ばれて、いつ名前を教えたのかとサシャは訝った。


 それからサシャは焚火の側で近くになっていた果物を剥いたり、荷物の中から出したパンを切って並べたりしていたが、その間ずっとアルバはサシャに付いて回っている。
 時々、蕩けるような甘い視線を投げかけられてサシャは困惑してしまった。
(なんで? オレ何かした? オレの名前も知ってたし)

 アルバみたいな格好良い人が自分の事を好いてくれるのは嬉しいが、自分が好きなのは女の子なんだよなぁと、焚火を眺めながらサシャは思った。
 いつか好きな子のおっぱいを揉んでみたいな、とか。

(あれ?昨夜……)

 サシャは突然、昨夜の事を思い出した。
 発情して意識が朦朧としていたが、した事は何となく覚えている。
(そう言えば、アルバのおっぱいを揉んだかもしれない、それに)
 そっと下腹部を押してみると、そこに入っていた熱くて大きなモノの事も思い出した。
「っつ!」
 サシャは弾かれるように立ち上がる。

「気分が悪いのか?」
 立ったまま固まってしまったサシャを「やっぱり具合が悪くなったのか?」とアルバが覗き込む。
「アルバ……本当にごめん!!!」
 サシャは真っ赤になり、今度は地面に臥して土下座した。
「昨日は助けてくれて本当にありがとう!
 オ、オレ、まさかサキュバスにあんな呪い掛けられるなんて。
 初めて会った、好きでもない、それも男とあんな事してくれて本当に感謝してます!」

「……サシャ」
 ひたすら謝り続けているとアルバが頭を上げるように促してきた。
 サシャが額に泥をつけたまま顔を上げると、そこには優しく微笑むアルバがいて、サシャは少し見惚れてしまう。

「俺は嫌ではなかったから。
 それから、その呪いを解いてもらえる宛てがある。
 ただ、場所は王都なんだ。
 俺も王都に戻らないといけないから一緒に行かないか?」
 優しく額の泥を払いながら、アルバがそう言ってくれる。
 サシャは、まだ出会って間もない男にそこまでしてくれようとするアルバの気持ちがが嬉しくて、思わず抱きついてしまった。

「行く! 
 アルバ、本当にありがとう。
 格好良くて、優しくて。
 ああ、オレが女の子だったら絶対にアルバのお嫁さんになるのになぁ」
 サシャは何の気も無しにそう言ったが、アルバは固まってしまった。

「そうだ、お礼しなくちゃ!
 オレ、お金無いんだけど、それ以外で何かできる事とかある?
 恩人のアルバにお返ししたいんだ!」
 と、サシャは今度は身体を離すと顎に手を当てて考え始める。
 何とも忙しない姿にアルバは思わず苦笑してしまった。

「いや、何も。 ただ、俺がお前の側にいるのを許してくれればそれで良い」
「それはこっちの科白だよ!
 でも、それじゃアルバの仕事を邪魔しちゃうでしょ?」
「それは平行して済ませるから大丈夫だ」
「そ、そうなんだ。
 でもオレ、迷惑掛けっぱなしなんて嫌だし、やっぱり何か考えといて」
 と言うと、アルバは「俺の事を気に掛けてくれるなんて嬉しいな」と言って、甘い瞳を向けて来た。
 そんな風に見つめられると、まじないが発動していないにも関わらず心臓が忙しなく跳ねてしまう。
 サシャは胸が苦しくなって、心臓の辺りの服をぎゅっと掴んだ。

 それからサシャは何故か子供のようにアルバに世話されながら食事をした。
 食べさせられながら、こんなに誰かに甘えさせてもらったのは何時ぶりだろうと考える。
 ちょっと嬉しくて、ちょっと恥ずかしい。
 でも、アルバみたいな人は好きだなぁとサシャは思った。。


感想 0

あなたにおすすめの小説

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科 空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する 高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体 それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった 至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する 意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク” 消える教師 山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

四年前も今日も、僕はいつも逃げる

ユーリ
BL
まさかこんな形で再会するとは思わなかったーー社内の授賞式を明日に控える果音の元に犯行声明文が届き、護衛として魔法省の人間が来たのだが、その人物は高校の卒業式で果音に告白してきた男で…?? 「四年前の告白の返事を聞かせろ」護衛に来た一途な攻×逃げてばかりの受「四年も前の話だよ?」ーー四年間って想像以上に長い年月。