オレと竜族の事情~淫紋ってどうやって消すんですか?~

ume-gummy

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癒しの魔法陣

 
 村の外れにある、石造りの小さな神殿にはルードヴィヒと言う若い神官が一人と孤児の少年が2人住んでいた。
 この村は閉鎖的で、どこの誰だか分からない者には大概冷たく当たる。
 ルードヴィヒも、2年ほど前に代替わりでここへ遣わされた当時はなかなか受け入れてもらえなかったそうだ。

 母親がこの村の出身ではなかったサシャ達も、父がいなくなると大人達からはあからさまに忌避されるようになった。
 そんな時に親切にしてくれたのがルードヴィヒの前にここに居た神官だった。
 その流れでサシャは神官がルードヴィヒに代わっても頼りにしていたのだ。

「そうですか。 貴方も村を去ってしまうのですね」
 サシャがアルバと共に村を出ると聞いて、ルードヴィヒは最初こそ少しびっくりしたようだったが、直ぐに受け入れてくれた。
 ここでも竜族の信頼は厚いのである。
「いえ、父と母の事もあるので全く帰って来ないと言う事はないと思います」
「その時は、他の町の話も聞かせてくださいね。
 彼らもいずれ外に出るでしょうから」
 ルードヴィヒは少年たちの方を見た。
 孤児の二人はルードヴィヒが保護しているが、やはり村人からは良く思われてはいないので村を出るしかないだろう。
 その時は少しでも自分が役に立てるといいなと、サシャは思った。

 サシャはルードヴィヒに、自分も冒険者登録するので、父と母にはギルドへ連絡してくれと言って欲しいとお願いすると、アルバからもサシャに連絡できるようにしておくと念を押してくれる。
 すると、「良い人に出会えて良かったですね」とルードヴィヒは普段から優し気な表情を更に優しくして喜んでくれた。

 そして神殿を出る時、サシャは聖女が描いていった癒しの魔法陣に触れた。
 触れた指先からふんわりと身体が暖かくなる。

 この魔法陣は当時、医療の援助や回復系の魔法が使える者がいなかったリーズ村に聖女が来て描いてくれたものである。
 それは描かれてから3年経った今でも魔力を持ち、触れる者を癒してくれる。
 サシャも何度も世話になったものだ。

 ふと、あの時の村の皆の喜ぶ姿や、慈悲深い聖女の顔を思い出してサシャは懐かしくなった。
 心の中でお礼を言って、指を離す。
 それからルードヴィヒにもお礼を言い、少しばかりの寄付をしてから村を後にした。


「?」
「どうしたの?」
「いや、魔力の気配がしたような」
 なるべく人に会わないようにと牧草地を横切っている時、アルバは微かだが魔力の気配がしたと言った。
「ああ、きっと土の中に埋めてあるネズミ除けだよ。
 効果があるかは分かんないけど、お守りみたいなものなんだって」
「そうなのか」
 少し、引っかかることがあったが、些細な事と思いアルバはその場を後にした。


 その後、サシャとアルバは殆ど話す事なく歩いていた。
「……行きたくなくなったか?」
 今までよくしゃべっていたのに黙っているのが気になってアルバから話しかけると、サシャはもじもじいと手をすり合わせた。
「え? ううん。 そうじゃなくて」
「オレ、村ではあんまりよく思われてなかったからさ。
 アルバ、本当にオレなんかと一緒に旅に出ていいの?
 サキュバスの呪いもあるし、オレ面倒じゃない?」
「全く。
 俺は竜族だぞ、お前一人くらい余裕で面倒見れるさ」
「ありがと」
 えへへ、と恥ずかしそうに笑うサシャの頭をアルバは乱暴に撫でた。


 昼過ぎに隣村に着くと、アルバはまた村人に囲まれてしまったが、慣れているのだろう。
 無表情で通り過ぎてしまった。

 そこから暫く歩くと王都へ続く街道へ出た。
 大きい道へ出て街へ近付くに連れて、人族以外の種族も増えてくる。
 獣人、鳥人、エルフにドワーフ。
 角こそ無かったが、アルバより少し小さいくらいの爬虫類系の他種族もいて、次第にアルバを珍しそうに見る人も少なくなり、その頃にはサシャも心配が薄れて旅が楽しくなってきていた。
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