オレと竜族の事情~淫紋ってどうやって消すんですか?~

ume-gummy

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二人の旅路

 
 リーズ村から3日ほど歩き、《シリス》と言う、この辺りでは比較的大きな街へやって来た。
 そこには冒険者ギルドがあり、アルバはそこにキマイラ討伐の報告に行くと言う。

 ここへはサシャも昔、父親と一度だけ来たことがあった。
 あの頃と変わらず、村では手に入れにくい物が売っている店や、綺麗な神殿、石畳の広場、それに何だか分からない派手派手しい看板のある店などがあって面白い。
 ふらふらしていると、アルバに腕を引かれた。

「お前みたいな者が一人で歩いていると危ないぞ」
「それは田舎者という意味で?」
 少しムッとしたので頬を膨らませてサシャが言い返すと、アルバが「ふっ」と顔を歪めて笑った。
 よほど変な顔をしていたのか、そんな風にアルバが笑うのを見たのは初めてだ。
 太い指でツンツンと頬を突かれて、サシャは恥ずかしさで耳が熱くなった。
「ああ、そうじゃない。
 こう言った大きい街には奴隷商人が紛れている事が多いから気をつけろと言いたかったんだ」
「奴隷は違法でしょ?」
「いや、ここエアトベーレン王国では違法でも他国では合法のところもある。
 普通に働くより金になるからと手を染める者は少なくない。
 特にお前みたいな見た目の者は気を付けた方が良い」

 そう言われてサシャは平凡な顔の自分は大丈夫なんじゃないかと思った。
 それに誰もが畏怖する竜族のアルバも一緒にいるのだし、と。
 けれどサシャはアルバの手をぎゅっと握った。
 話をしている間に暗い表情になってしまったアルバを安心させたかった。
「こうしてれば大丈夫だよね?」
 小首を傾げてアルバを見上げれば、アルバは無表情になってコクリと頷いた。


 そのまま二人は冒険者ギルドへやって来た。
 重い木の扉を開き中へ入ると正面に受付カウンターがあり、周りには大勢の冒険者がいる。
 やはり人族が多いが、中にはエルフやドワーフらしい種族、犬やウサギが立ち上がって二足歩行しているような獣人もいる。
 サシャは初めて入った冒険者ギルドが珍しくて、アルバが受付をしている間ギルド内をうろうろしていた。

「サシャじゃないか! 久しぶりだな」
 トンと肩を叩かれて振り向くと、そこには見知った顔があった。
「ケイン」

 リーズ村出身のケインは面倒見の良い兄貴と言った感じで、サシャにもたまに話しかけてくる事があった。
 今はその時よりも気さくな感じになっているし、村の者の目もないので、サシャも気軽に返事をし返す事ができる。
 何よりも知っている者に出会えて少し嬉しかった。

 彼はサシャより数か月早く生まれていて、成人して直ぐに冒険者になると言って村を出ていた。
 聞けば念願かなって冒険者になり、今は最低ランクのEから一つ上がってDになったそう。
 二人は手近なソファーに並んで座り、お互いの近況報告をした。

「へー、ケインは頑張っているんだね。
 ところで冒険者ってどう? オレでも出来るかな?」
 サシャはここへ来て、冒険者と言う職業に興味が出て来ていた。
 一番の理由は、冒険者としてのアルバが格好良いからである。
 それに冒険者は色々な種族がいて、誰がなっても制限や差別がないのが良いと思う。
 サシャも冒険者ギルドで冒険者登録をすれば将来への選択肢が一つ増える。

「んー? まぁ、お前の弓の腕があれば大丈夫だろ」
 サシャは村の子供の中では弓が上手い方だったとケインは太鼓判を押した。
「で、お前、冒険者になりたいの?」
「ん、それも良いかなって」
「それじゃあさ、俺とパートナーになって冒険しねぇ?」
「え?」
 ケインはすいっとサシャに近付いて手を取った。

「サシャ、待たせたな」
「アルバ」
 突然のケインの行動に戸惑っていると、受付を済ませて戻って来たアルバがじっとケインを見てからサシャの肩を抱いて、さり気なく繋がれた手を外した。
「サシャ、冒険者登録しに行くぞ」
「あ、あんた竜族のAランク!
 サシャ知り合いなのか? 紹介してくれよ」
 アルバは有名らしく、ケインだけじゃなく他の冒険者も知っている様で、ギルド内がザワついていたのはアルバのせいだったとサシャは今さら気が付いた。

「アルバAランクなの凄い!」
 Aランクと言えばこの王国には数人しかいないと言う、凄腕の冒険者だ。
 アルバは自分の事をあまり話してくれないのでサシャは今まで知らなかったのだ。
「そうか? それほどでもないぞ」
「えー!?そんな事ないよ! 凄い、凄い!
 キマイラなんて一人で倒せちゃうはずだよね!」
 大きな目をキラキラさせて喜ぶサシャと、謙遜しつつ嬉しそうなアルバ。
 いつの間にか二人の世界になってしまい、ケインもいなくなってしまった。


 それからサシャの登録をしてからキマイラを納品して、酒場を併設しているギルド内で少し飲み食いしてから二人は宿へ向かう。
 それを冒険者たちは遠巻きに見ていた。

 冒険者たちは竜族が仕事も関係なしに一人の人間を守っている、と言うのは=守られている人物は『番』である可能性があり、手を出すと竜族の怒りを買ってしまうと知っていた。
『番』が男性の場合もあるのかは聞いたことが無いが、アルバはどう見てもサシャをそうやって守っている。
 しかもアルバは自分たちに近付く相手にピンポイントで魔力をぶつけてくるので恐ろしい。
 流石に一般人にはしないが、冒険者には平気でそう言う事をするのだ。
 皆、緊張して大人しくならざるを得なかった。

 だが、当のサシャだけが良く分かっておらず、冒険者って行儀のいい人ばかりなんだなと思っていた。

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