オレと竜族の事情~淫紋ってどうやって消すんですか?~

ume-gummy

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回想

 
 男性体しかいない竜族は同族間では子供ができないので、他種族の女性に番相手を見つけなくてはならない。
 人付き合いの苦手なアルバも例外なく成人年齢の16歳になると、長老たちによって容赦なく里を出されてしまった。
 もう10年も前の事だ。

 しかし、引っ込み思案でほぼ引き籠りだった当時のアルバを心配した両親は里を出たアルバに、王都にいる知り合いの人間の冒険者のところへ行くように勧めてくれた。
 そこで紹介されたのがコーディアルとその弟のフロンだ。

 コーディアルは出会った時はまだ19歳。
 元々は聖職者であったが、神殿のやり方に反発して冒険者になったそうで、(はねっかえり過ぎて手に負えなくなり、追放されたのだろうとアルバは考えているが)一緒にいた成人したばかりの魔術師の弟も頼りなく、両親の知り合いの冒険者(この当時、彼は王都の冒険者ギルドの代表だった)に3人でパーティを組むことを提案されたのだ。

 その時は目的もなかったので何となく引き受けたが、コーディアルは厄介事に首を突っ込んだり、困った人を助けようとしたり、悪い事ではなかったので構わないのだが、とにかく大変だった。
 おかげで鍛えられはしたが。

 そんな冒険の日々だったが、5年ほど経ったある日、依頼中にコーディアルが女神の加護を受けたのだ。
 当然、世間は大騒ぎとなり、コーディアルは嫌がったが、無理やり神殿へ連れ戻され聖女となった。
 だが、直ぐに神殿内を掌握した彼女は自分を追放した神官たちを見返してやったと高笑いしていたな……と、アルバは思い出して遠い目になった。



(パーティを解散した時は、もうこいつの顔を見なくて済むと思って安心したのに、また世話になる日が来るなんて……)
 アルバは目の前でニヤニヤと歪な笑みを浮かべるコーディアルを見下ろす。

「で、サキュバスに淫紋を描かれちゃったんだって?
 ひと月半ももった、と言う事はあんたヤル事はやったのね。
 やるじゃない、あんたのソレを受け入れてくれるなんて、そんな子もう二度と現れないかもね。
 やだ、あの子可愛いじゃない。
 ちょっと早く紹介しなさいよ~、いいなぁ、私がもらいたい~」
「くっ、このクソ聖女め」
「あ、お礼は魔石で良いからね。 いいの持ってるんでしょ?」

 相変わらず聖女らしくない下品な事を言うコーディアルに、これとサキュバスの違いが知りたいとアルバは心底思った。
 しかも、こっちを見て頬を赤らめた、いかにも純情そうなサシャを食ってしまいそうに青い瞳をギラギラさせている。
 そんな彼女にアルバは心底サシャを紹介したくないと思った。
 アルバの知る限り、コーディアルは良い人ではあるが、決して清廉潔白な人物ではないからだ。
 そうこうしているうちにサシャが手洗いへ行きたいと言うので、コーディアルが後を追わないようにアルバは待っていることにした。


 だが、20分ほど待ってもサシャは戻っては来ない。
 流石におかしいと思ったアルバとコーディアルは神官たちにも手伝わせてサシャを探したのだが、大聖堂付近では見つけられなかった。
 匂いも大聖堂を出た辺りで途切れてしまっている。
 アルバはその日のうちに冒険者ギルドの力も借りて城下町の中も探したが、サシャはどこにもいなかった。
 だが、夜遅くに奴隷オークションの現場を押さえたと言う報告があり、藁にも縋る思いでアルバもそこへ向かった。


 数十分後、オークション会場に着く。
 そこは既に騎士たちに制圧されていた。

 物々しい雰囲気の中、売られなかった者たちは一か所に集められていて、その中にサシャはいなかった。
 ホッとしたのも束の間、その中の一人が赤褐色の髪の男の子を見たと言う。
 しかし、その男の子はオークション前に何処かへ連れて行かれてしまったらしい。
 出品目録を確認すると『10代後半 男 赤褐色の髪 緑眼 身長170㎝ 痩型 腹部に淫紋あり』と記入され、斜線が引いてある項目があった。

 それからアルバは賄賂まで使って、捕まったオークション関係者に接触し、話を聞き出した。
 その時点で既に2日経っている。

(サシャ、どこに行った?
 お前がいなくなったら俺はどうしたら良いんだ?
 サシャ……サシャ!)

 この時ほどアルバが焦った事はなかった。
 どうしてあの時、無理にでも一緒に付いて行かなかったのか?
 サシャの様子はどうだったか?
 いつも笑っていたのに、自分の気付かないところで何か思い詰めていたのだろうかと、アルバは自問自答する。

 最悪の事態を考えてしまう。
 他国に連れて行かれてしまったら、もう会えないかもしれない。
 アルバの爬虫類の瞳が今までにない程、暗い紅色に濁った。

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