オレと竜族の事情~淫紋ってどうやって消すんですか?~

ume-gummy

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 ――ここはどこかな?
 ぼんやりした頭で辺りを見回すと真っ暗だった。
 ガタガタと揺れている。
 ここは馬車の中だろうか?
 暫くすると誰かがやって来て、またあの花のような匂いがした。
 そして再びサシャの意識は深く沈んだ。



 ――次に気が付くと人が大勢で騒がしくしている場所だった。
 身体の下が固いのは多分石だ。
「……が、……とちがう」
「そう……だから……」
 転がされた位置からは足が二人分見えていて、その二人が言い合っているのは分かったが、何を言っているのかまではよく理解できなかった。
 けれど、服を剥かれて下腹部を見られたのは分かった。
 抵抗しようとしたけれど、身体が動かず、また意識が闇に中へ沈んでいった。



 ……
 ……
 ……あんたってば、なかなか優秀じゃない♪

 すぐに男にヤラれて死んじゃうかと思ったのに、良く生き残ったよねぇ。
 ホント、人間にして置くの勿体無い。
 竜族の精気なんて初めて吸ったしぃ。

 竜族をタラシ込むなんて見込みあるね♡
 このまま淫夢の仲間になっちゃいなよ♡


(うう、やだ…… そんなの知らなかったよ。
 アルバは僕の為にあんな事をしてくれているのに、それがサキュバスの為になってるなんて知ったら怒るかもしれない。
 本当に嫌われてどこかにいっちゃうかも。
 そんなの嫌だよ、オレはアルバを誑してなんかいない!)


 夢に現れたのは、あの日サシャの腹に淫紋を描いていったサキュバスたちだった。
 どうやらアルバがサシャの中に放った精は、淫紋の効力によってこのサキュバスたちの糧になっているらしい。

 以前、こうやって他人の夢に侵入して、その人物に干渉すると言うのは淫夢族の特殊能力だとアルバに教わった。
 魔力が高い竜族の夢にはさすがに入れない様だが。
 むしろこうやって夢を介して性的な事をして放たれた精気を吸うのが普通らしく、サシャのように実体に出会うことは稀なのだそう。
 あの時は運が悪かったのだ。

 早く目覚めたいのに身体が言う事をきかなかった。
 サキュバスは散々サシャをからかったり、罵倒したりしてから、自身の支配下にいる者から精気を搾り取っても糧にならないからと言ってやっと解放してくれた。
 最悪な気分で夢から覚めたサシャはせめてアルバに触れて慰められたくて、温もりを求めて隣に手を延ばした。

 だが、そこには誰もいない。
 さらさらの冷たいシーツを握って、サシャは飛び起きた。

「……ここ、どこ?」
 目覚めて最初に目に入ったのは、薄いレースのカーテンだった。
 それから美しい夜空の星座が描かれた、天蓋の内側。
 今まで使った事のない、ふかふかな掛布団に柔らかなベッド。
 しかも、自分は光沢のある絹で織られた布を使った夜着を着ている。

 何処にいるのか分からなくてパニックになったサシャは、慌ててレースのカーテンを捲って外を見たが、とたんに息を飲んだ。
 見えたのは見たこともないくらい豪奢な調度品が飾られた広い部屋だったのだ。

 青ざめて泣きそうになっていると「お目覚めですか、おはようございます」と、見ているのと反対側から声を掛けられる。
「ひゃあ!」
 びっくりしてそちらを向くと、侍従の制服らしいものをきっちりと着こなした、灰色の髪の地味な男が立っていた。
 感情の読めないブルーグレーの瞳がサシャから視線を外さない。
「私はこの家のご子息、ヴェルナー様に仕えるバルドゥルと申します。
 只今、ヴェルナー様をお連れしますので少々お待ちください」
 そう言うと、バルドゥルはローテーブルにお茶の用意をしてどこかへ行ってしまった。




「なんだ、せっかく奴隷商人から救ってやったと言うのに随分な態度じゃないか?」
 すぐに現れたヴェルナーと言う男は白銀の髪に深い青の瞳、痩身で背の高い、身なりの良い男だった。
 立派な身なりで優雅にお茶を飲む姿は誰もが見惚れる美青年だが、どこか胡散臭さがあって信用ならない。
 サシャは終始睨みつけていた。

 彼によると、奴隷商人に攫われたサシャが、知らないうちにオークションに掛けられそうになっている所に偶々居合わせて先に買ってくれたのだそう。

 どうやらサシャが街中で発情した時に淫紋の輝きを奴隷商人にしっかり見られてしまい、それが珍しいと付け狙われていたらしい。
 最後に嗅いだ匂いを思い出し、きっと大聖堂で一人になったところで薬品を嗅がせ気絶させられて攫われたのだろうとサシャは思った。

「それで何が目的なんですか? やっぱり、このまま帰してもらえないですよね。
 ええと、オレやっぱり奴隷……とかになるんですか?」
「ふふ、そうだね。
 奴隷はこの国では禁止されているから、君の事はちゃんと扱うよ」
(奴隷が禁止されている……と言う事はまだエアトベーレンの国内なのかな?)
 サシャは国内ならばアルバが助けに来てくれるかもしれないと、淡い期待を持った。
 そんな事を考えているのに気付いたのか、ヴェルナーはお茶のカップをローテーブルに置くと、今だにベッドの端に座っているサシャへずいっと近付いた。

「ところで君、妊娠できるって本当なの?」
 長い指でサシャの下腹部を指し示す。
「ここの魔方陣を調べさせてもらったんだけれど、これは発情と受胎って描いてあるんだろう?」
「……」
 余計な事を知られたくないのでサシャは黙っている事にする。
 そんなサシャをじーっと観察していたヴェルナーが、とんでもない事を言った。

「うん、君は可愛いね。
 君なら僕でも抱けるかもね」
「はぁ?」
 ヴェルナーは含みのある笑みを浮かべた。


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