オレと竜族の事情~淫紋ってどうやって消すんですか?~

ume-gummy

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誘い

 
 トントン
「サシャさんはいらっしゃいますか?」

 アルバが出かけて少しすると、宿の娘さんがサシャを呼びに来た。
 日頃から良くしてくれている少女の訪問を無下にする訳にも行かず、臥せっていたサシャだがドアのところまで赴いて話を聞いた。
 聞くと、聖女からの使いと言う人が来ていると言う。
 サシャは部屋から出たくはなかったが、聖女からの使いなら自分に関係があると思い、宿の下の階にある食堂で待っていてもらうように娘さんに伝えた。

 寝間着から着替えて食堂へ降りていくと、そこには聖女によく似た人物がいて「聖女の弟で、今は王宮魔術師をしているフロン」だと言う。
 フロンはかつてアルバの冒険者仲間だったとアルバから聞いた事があり、聖女によく似た見た目からもサシャは安心してフロンを信用した。

 外で待っていた馬車にフロンと一緒に乗り込む。
 だが、暫くして自分が大聖殿とは違う方向に進んでいるのにサシャは気付いた。

「あの、どこへ向かっているのですか?」
「お城です。 大丈夫ですよ、心配はいりません」
 聖女に似た優し気な笑顔で微笑まれたが違和感があって、サシャは不安に包まれた。


 フロンに先導され、城へは通用門から入り、裏口から城へ入らされる。
 使用人がたくさんいる場所を通って、騎士が数人いる部屋へ連れて来られた。

「あの、聖女様は?」と、フロンに問うと「ごめんね」と返された。
 そこでサシャはやっと騙されて連れて来られたことに気付いたのだ。
 部屋の中へ目を向けると、執務机に座っていた大柄な騎士が立って近付いて来た。

「A級冒険者のアルバ殿の連れのお方ですね、
 私は第二騎士団、騎士団長のエイムと申します。
 フロン様を責めないでやって下さい。
 これは王と第2王子の命なのです」
 肩に触れられそうになりサシャは一歩後ろに下がるが、直ぐ後ろには他の騎士が立って塞いでいた。

「申し訳ありませんが、我々と一緒に来て頂きます」
 エイムに先導され、騎士たちに囲まれて、サシャは部屋を通り外へと連れて行かれた。
 演習場らしき場所では大勢の騎士たちが忙しく動いて何かの準備をしているのが見えた。
 その横を通り過ぎ、フロンと一緒に外から見えないように目隠しがしてある馬車へ乗るように言われる。
「何処に連れて行かれるのですか?」
「今は言えません」
 既にフロンからは先程のような優し気な雰囲気は消えており、聞いてもそっけなく返された。
 話掛けても無駄だと察したサシャは、自ら馬車へ乗り込んだ。


 *****


「サシャ?」
 アルバが宿に戻るとサシャの姿が無かった。
 どこかに出かけているのかと、宿の者に聞いてみる。
 すると、娘が緊張した面持ちで王の印璽が押された手紙を持って来た。

「これを、サシャさんと一緒に出掛けられた方から預かりました」
 娘はアルバ以外にこの手紙を見せないようにと言われたそうだ。
 開くと『至急の要件にてA級冒険者・竜族アルバを召集する』と言う一文と、翌日の指定の時間に騎士団へ赴くようにと書かれていた。
(サシャはここにいるのか? ドナの言う通りだったが、まさかこんなに早く動くとは)
 きっとアルバが一人で出かけるのを待っていたのだろう。
 アルバはサシャを置いていった事を後悔した。
 何度も同じような目に合わせるなんて、と自分の不甲斐なさを責める。

(しかし、こんなところでモタモタしていたってサシャは帰ってこない)
 暫くは呆然としていたアルバだが、いつまでも立ち止まってはいられないと自分を奮い立たせて、ドナに連絡を取った。
 大体、ギルドを通さずに冒険者へ直接依頼するのは違反なのだ。

 しかし、ドナによるとギルドは所属する国の王の命令には逆らえず、こう言った場合は個人の指名もありうると言う。
 ついでに調べてもらったところ、城の中でサシャを見掛けた者がいたが、常に魔術師や騎士が付き添っている状態だったと言う。
 魔術師と言えば心当たりがあるのは王宮魔術師になったフロンくらいだ。

 城に行けば何か分かるかもしれないと、アルバは呼び出しに応じる事にした。
 急いで大聖殿にも行き、コーディアルに暫く出かけるので、無理は承知だがフロンに連絡を付けて欲しい事、自分がいない間にサシャが助けを求めて来たら面倒を見て欲しいと頼む。

(とにかく早くサシャに会わなくては)
 前回の発情から数日経過している。
 最近はだいぶ落ち着いて来て2週間ほど持つようになってきたが、アルバはまだまだ不安だった。
(もしも自分のいない所で発情して、サシャが他の男に抱かれるなんて事があったら、関わった奴は全員殺してやる)

 時間が経つ毎にサシャの事が気がかりになり、アルバはどうしようもなくなる。
 指定の日時の前だが、アルバは城へと向かった。
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