オレと竜族の事情~淫紋ってどうやって消すんですか?~

ume-gummy

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再会


「サシャは何処にいる?」
夕刻、サシャがうつらうつらとしていると、テントの外から聞き覚えのある声が聞こえた。

慌てて外へ出れば少し離れた場所でアルバが見張りの兵士に対して怒鳴っているのが見える。
「アルバ!」
サシャが裸足のまま駆け寄ると、アルバは気付いて抱き上げてくれた。
いつもなら恥ずかしくて抵抗するところだが、今は嬉しくて子供の様に首に抱き着く。
「ごめんね、いつもごめん」
「サシャ、良いんだ。
とにかく、俺はこの戦いに参加するつもりはない。
サシャは返してもらうと上に伝えてくれ」
とアルバは新たにやって来た騎士に言い、サシャを抱いたまま大股でその場を後にした。


「アル……バ」
「何だ?」
陣営を後にして数メートル、突然サシャの様子がおかしくなる。
「サシャ?」
苦しそうに顔を歪め、身体が段々と動かなくなり、アルバに凭れたまま硬直してしまったのだ。
辛うじて息は出来ているが、顔色が蝋人形のように真っ白になっている。
アルバが慌てて調べると、サシャの首に見たことのない鎖が掛かっているのに気付いた。
そこで、それを引きちぎろうと思い力いっぱい引っ張ってみたが、細い金属の鎖は思いの外頑丈に出来ていてアルバの力でもびくともしない。
「これは魔道具か。 力ではどうにもならないのか?」
アルバはサシャを抱え直すと、走って今しがた来た道を戻った。


陣営に戻るとサシャは顔色も戻り、話す事が出来るようになった。
仕方がないのでテントまで戻ると、手前にフロンが立っている。
フロンはアルバを見ると一瞬、嬉しそうな顔をするが、アルバに睨まれて縮こまってしまった。
「フロン、お前が関わっていたのか。 この首のやつを外せ!」
言うが早いか、アルバは片手でフロンの首元の服を捩じり上げた。
「ゴホッゴホッ」
息ができなくて、フロンの顔が次第に青くなって行く。
「アルバ止めて、フロンさん死んじゃうよ!」
サシャに止められて、アルバは手を離した。

フロンは落ち着きを取り戻すと、首輪は国宝級の魔道具なので壊せない事、フロン一人では外せない事、鍵は幹部の誰かが持っているだろうが、それが誰だか分からないと言った。
この魔道具は設定された地点を離れ、遠くに行けば行くほど身体への負担が増え、最終的には息が止まってしまうそうだ。
それを聞いてサシャは青くなった。
だが、フロンは涼しい顔で作戦会議があるので1時間後に中央にある司令部へ来るように、とアルバに告げて去っていった。

サシャのテントへ入るとフロンが置いて行ったのだろう、僅かばかりだが二人分の食事が用意されていた。
アルバが調べたところ毒などは入っていなかったので、二人で向かい合って食事を取る。
流石にアルバは足りなかったので、自分の持ち物からも少し出して食べた。

けれど久しぶりの二人での食事が嬉しくて、こんな状況にもかかわらず二人は微笑み合う。
そして今分かっている事を報告し合った。
サシャはここへ連れて来られた経緯を、アルバはどうしてこうなってしまったのかを。


 ******


サシャが連れ去られた日の夕方、予定の前日であったがアルバは城の騎士団本部に行った。
とにかく事情が知りたかったのだ。

突然、現れたアルバに騎士団内は騒めいたが、第二騎士団の副団長が場を収めて話を聞いてくれた。
そこで改めて今回の呼び出しについて説明される。

明日の召集後に公表する予定であったが、今回はルナリを侵攻すると言う。
ルナリ王国は南の暖かい海に面した豊かな土地だ。
最近のエアトベーレン王国は天候不順で農産物の不作が続いていた。
王の求心力は落ちる一方で、ならば豊かなルナリの一部でも手に入れたいと兵を送り込むことにしたらしい。

そこでこの戦いの指揮を任されたのが第二王子のシュトリームだ。
正妻の子のシュトリームはここで上手くやれば、妾の子のくせに自分よりも優秀と言われている第一王子を抜いて次の王に手が届くのではと思い、二つ返事で了承した。
だが、実際にシュトリームに付いたのはシュトリームの母の弟のエイム率いる第二騎士団のみだった。
そこで、少しでも戦力を増やそうと、王命を使って冒険者にも声を掛けてきたのが真相だ。

しかし、懸念もあった。
大体、冒険者は集団行動が苦手で冒険者になったと言う者が多い。
そんな者たちが騎士団と一緒に戦えるのだろうかと。
そこで選ばれた冒険者は、騎士団とも上手くやれそうな者たちのみで、アルバの他にA級が1人、B級が4人だった。

実のところアルバは騎士団とは面識がない上に人間相手に戦った事さえない。
それを知ってか知らずかサシャを人質にすればアルバは必ず言う事を聞くと考えたのだろう。
実際、そうなってしまっている。

(こんな事でサシャを巻き込みやがって。
サシャは自分のせいで俺がこいつらの言う事を聞いていると思っているのに)
と、イライラして付近に魔力を纏わせるアルバに近付ける者はここにはいなかった。

アルバとしては直ぐにでもサシャのいる場所へ行きたかったが、その日は詳しい場所を教えてもらう事も特定することもできなかった。
次の日になって騎士団と王宮魔術師の幹部を交えて作戦会議が行われ、そこでやっと軍の展開している場所などの機密事項を知る事ができたのだ。
そこでは機密が外に漏れないように契約させられて、次の日の早朝に馬で出発すると告げられたが、アルバはその日のうちに一人で出発してしまった。
昼夜休みなく走り、たった2日でここまでやって来た。

これは完全にアルバの単独行動だったが、ちゃんと戦場に現れたので特にお咎めは無かったが、居ないうちに向こうの良いように攻撃隊が編成されていたのは知る由もなかった。


 *****


「……そっか、ごめんね。 オレの為に」
話を聞いたサシャは俯いてしまった。
「お前を無事に連れて帰れるなら構わない」
狭いテントの中に二人で身を縮こませて密着する。
近くにサシャの心臓の音が聞こえて、それだけでもアルバは安心できた。

「でもね、アルバは帰った方が良いよ。
だって、こんな侵略みたいな事に参加して欲しくないし。
第一、アルバはこの国の人じゃないんだし」
「でも、それじゃお前を守れない」
「それは仕方ないよ。
それよりアルバは帰って、オレの事は気にしないでいいから」
そんな事を言いながらもサシャは小刻みに震えている。
やはり怖いのだろうかと、アルバはサシャを抱きしめた。
「オレはアルバが戦争に巻き込まれるのが嫌なんだ。
オレだってアルバを守りたいよ」

「誰も部屋へ入れるなって言われたのに、入れたオレが悪いんだ」
サシャは自分の不甲斐なさを攻める言葉を吐いた。
それを聞いて、アルバは自分こそ不甲斐ないのにと悲しくなってしまった。


 ・・・・・・・・


ちなみにアルバは馬に嫌われているので、いつでも自走移動です。
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