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やっぱり、あなたを愛した
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お兄様の記憶が戻った理由を聞くと、まさかのあのよくわからない恋愛本がきっかけだったらしい。どうでもいいモブアイテムと思っていたら、実はかなり重要な役割を担っていたとは。
ご機嫌なお兄様とその後一緒に本を見ると……うん。すごかった。私への愛に溢れていたことは確かだけど、私がヤンデレフェチでなければぞっとしていたことだろう。
「ふたりとも久しぶり! ミレイユ、誕生日おめでとう!」
「帰りがアクシデントで遅れてしまいすまなかったな。屋敷に変わりはないか?」
次の日、無事に両親が旅行から帰って来た。
相当楽しかったのか、行ったときよりも服装は派手になっているし、抱えている荷物の量も凄まじい。
「平気だよ。俺達もふたりで楽しい毎日を送らせてもらってたしね」
お兄様は笑顔で返事をすると、私の肩を抱き寄せた。
べたべたとくっついている私たちを見て、お母様は言う。
「相変わらず仲良しね」
「ああ。ちょっと倦怠期はあったけど」
意味ありげなお兄様の返事にお父様とお母様は首を傾げる。そんなふたりを見て、私とお兄様は顔を見合わせて笑った。
その後は家族で食事をしながら、両親がいなかった間に起こった話、両親の旅行のお土産話など……とにかくいろんな話をした。
お兄様の怪我は完全に治っておらず、両親からもひどく心配されていたが、お兄様はネリーから受けた傷だということを話さなかった。バスキエ家にも、昨日のうちに話すつもりはないから今回のことは忘れて欲しいとお兄様から伝えていたらしい。
ネリーとの婚約破棄については、〝やはり自分とは合わなかった〟と説明していた。
お母様が「じゃあどんな人ならリアムに合うのかしらね」と言うと、お兄様は黙って私のことを見るから、また両親を呆れさせてしまった。正直、私はうれしく感じていたけど。
エクトル様から私が婚約の申し込みをされたことは、さすがに両親の耳に届いていたようだ。根掘り葉掘り聞かれたが、お兄様の機嫌がどんどん悪くなるのであまりエクトル様とのことは話せなかった。
エクトル様のほうから婚約破棄をした、ということも知っていたようで、両親は妙に納得していた。
お母様は〝こんなお兄ちゃん離れできないような子はエクトル王子も嫌でしょう~〟と笑っていた。
エクトル様との婚約破棄の裏側が、どんなにバイオレンスなものだったかを知ると、その笑顔も一瞬で青ざめることだろう。
ふたりとも結婚適齢期になりながら婚約話は白紙。それなのに焦りもせず、悲しみもせず、ただ今日も兄妹仲良く、まるで恋人のようにくっついている。
そんな姿を見て、お母様は観念したようにこう言った。
「やっぱりあなたたちが一番お似合いなのかもね」
その言葉の真意はわからない。でも、お母様には気づかれたのかもしれない。
私たちは今兄妹でありながら、恋人でもあるということを。
◇◇◇
あれから両親は旅行にハマり、定期的にどこかへ行くことが多くなった。
そのたびに私とお兄様は、ひと時の新婚生活のような気分を味わう。
使用人にはもう、私とお兄様の関係はバレているだろう。でもみんな、そんなことは気にも留めていない。私とお兄様を幼い頃から見続けている人たちだ。もしかしたらとっくに、私とお兄様がこうなることなんてわかっていたのかもしれない。
他国では義理の兄妹が結婚するなどよくある話と聞く。一歩外へ踏み出してみれば、私とお兄様の関係など、すぐに許されるものだ。
「ねぇミレイユ、いっそ国外へ行くしかないのかな? そうしたら、すぐに俺たちは結婚できるよ」
お兄様の部屋のベッドで散々愛でられたあと、お兄様は背後から私を抱き締めながら、そんなことを言ってきた。
「でも、お兄様はオベールの一人息子でしょう。お父様やお母様からすれば、この国に残っていてほしい気がするけど」
「現実的なことを言うと、ミレイユとの養子縁組を解消して、僕の妻として迎え入れるのが一番な気がするけど、それはどう?」
「……そうなると、お兄様はもう私のお兄様じゃなくなるということ?」
「ああ。……不満そうな顔をしているな。俺が兄でなくなるのが嫌な理由でもあるのか?」
だって私、〝ヤンデレお兄ちゃん〟萌えなんだもの。
でもこの世界で、そんなこと言っていられないか……。
「ミレイユ、まさかだけど、俺が兄っていう要素に興奮してる?」
「……そんなわけないでしょ?」
「今の間はなんだ」
「……」
「はぁ。ミレイユって、本当に困った子だよね。どうしようもない女だ」
「お兄様に言われたくない」
「ふっ。怒った顔もかわいいな」
頬を膨らます私を見て、お兄様は笑いながら首筋にちゅっと音を立ててキスをしてきた。
「じゃあ、とりあえず今はまだ兄妹でいよう。期間限定でね」
「なにそれ。今度は兄妹ごっこってこと?」
「そうだな。本当は恋人だけど、兄妹のふりをしてようか。……でもいずれ、絶対君を俺の妻にする」
「……お兄様」
「いつか、結婚しよう。必ず」
そのままどちらかともなく顔を近づけ、お兄様の柔らかな唇が私の唇に重なった。
キスを終え、とろけるような感覚にぼーっとしている私を見て、お兄様は愛しそうな目をして私を見つめてくる。
「周りに反対されても、もしこの先俺から逃げたくなることがあっても、地獄の果てまで追いかけるよ」
「ふふ。安心した。そう言われると、なにかあっても安心して逃げられるわ。だって、絶対に捕まえてくれるんでしょう?」
「当たり前だろ。ミレイユがいない世界に、俺は生きている意味がないからな。……愛してる」
「あっ……」
また、首元にちくりという感覚。
お兄様から印をつけられるのは、これで何度目だろう。
でも私は、この赤い印が増えるたび、お兄様に支配された気がしてうれしくなるのだ。
私は自由に動けるし、お兄様以外の人にも会える。
望んだエンドとは全然ちがう、平和でハッピーなエンディング。
でも、私の心はお兄様という檻に常に囚われている。
そして、お兄様はその檻から、決して私を逃がしてはくれない。
私たちは、いつか夫婦になる。
だから今はまだ、この関係をめいっぱい楽しむの。
「ミレイユ、死んでも君を離さないから」
この世で一番、重い愛という塊を背負った、最狂で最高なヤンデレお兄様と共に。
END
ご機嫌なお兄様とその後一緒に本を見ると……うん。すごかった。私への愛に溢れていたことは確かだけど、私がヤンデレフェチでなければぞっとしていたことだろう。
「ふたりとも久しぶり! ミレイユ、誕生日おめでとう!」
「帰りがアクシデントで遅れてしまいすまなかったな。屋敷に変わりはないか?」
次の日、無事に両親が旅行から帰って来た。
相当楽しかったのか、行ったときよりも服装は派手になっているし、抱えている荷物の量も凄まじい。
「平気だよ。俺達もふたりで楽しい毎日を送らせてもらってたしね」
お兄様は笑顔で返事をすると、私の肩を抱き寄せた。
べたべたとくっついている私たちを見て、お母様は言う。
「相変わらず仲良しね」
「ああ。ちょっと倦怠期はあったけど」
意味ありげなお兄様の返事にお父様とお母様は首を傾げる。そんなふたりを見て、私とお兄様は顔を見合わせて笑った。
その後は家族で食事をしながら、両親がいなかった間に起こった話、両親の旅行のお土産話など……とにかくいろんな話をした。
お兄様の怪我は完全に治っておらず、両親からもひどく心配されていたが、お兄様はネリーから受けた傷だということを話さなかった。バスキエ家にも、昨日のうちに話すつもりはないから今回のことは忘れて欲しいとお兄様から伝えていたらしい。
ネリーとの婚約破棄については、〝やはり自分とは合わなかった〟と説明していた。
お母様が「じゃあどんな人ならリアムに合うのかしらね」と言うと、お兄様は黙って私のことを見るから、また両親を呆れさせてしまった。正直、私はうれしく感じていたけど。
エクトル様から私が婚約の申し込みをされたことは、さすがに両親の耳に届いていたようだ。根掘り葉掘り聞かれたが、お兄様の機嫌がどんどん悪くなるのであまりエクトル様とのことは話せなかった。
エクトル様のほうから婚約破棄をした、ということも知っていたようで、両親は妙に納得していた。
お母様は〝こんなお兄ちゃん離れできないような子はエクトル王子も嫌でしょう~〟と笑っていた。
エクトル様との婚約破棄の裏側が、どんなにバイオレンスなものだったかを知ると、その笑顔も一瞬で青ざめることだろう。
ふたりとも結婚適齢期になりながら婚約話は白紙。それなのに焦りもせず、悲しみもせず、ただ今日も兄妹仲良く、まるで恋人のようにくっついている。
そんな姿を見て、お母様は観念したようにこう言った。
「やっぱりあなたたちが一番お似合いなのかもね」
その言葉の真意はわからない。でも、お母様には気づかれたのかもしれない。
私たちは今兄妹でありながら、恋人でもあるということを。
◇◇◇
あれから両親は旅行にハマり、定期的にどこかへ行くことが多くなった。
そのたびに私とお兄様は、ひと時の新婚生活のような気分を味わう。
使用人にはもう、私とお兄様の関係はバレているだろう。でもみんな、そんなことは気にも留めていない。私とお兄様を幼い頃から見続けている人たちだ。もしかしたらとっくに、私とお兄様がこうなることなんてわかっていたのかもしれない。
他国では義理の兄妹が結婚するなどよくある話と聞く。一歩外へ踏み出してみれば、私とお兄様の関係など、すぐに許されるものだ。
「ねぇミレイユ、いっそ国外へ行くしかないのかな? そうしたら、すぐに俺たちは結婚できるよ」
お兄様の部屋のベッドで散々愛でられたあと、お兄様は背後から私を抱き締めながら、そんなことを言ってきた。
「でも、お兄様はオベールの一人息子でしょう。お父様やお母様からすれば、この国に残っていてほしい気がするけど」
「現実的なことを言うと、ミレイユとの養子縁組を解消して、僕の妻として迎え入れるのが一番な気がするけど、それはどう?」
「……そうなると、お兄様はもう私のお兄様じゃなくなるということ?」
「ああ。……不満そうな顔をしているな。俺が兄でなくなるのが嫌な理由でもあるのか?」
だって私、〝ヤンデレお兄ちゃん〟萌えなんだもの。
でもこの世界で、そんなこと言っていられないか……。
「ミレイユ、まさかだけど、俺が兄っていう要素に興奮してる?」
「……そんなわけないでしょ?」
「今の間はなんだ」
「……」
「はぁ。ミレイユって、本当に困った子だよね。どうしようもない女だ」
「お兄様に言われたくない」
「ふっ。怒った顔もかわいいな」
頬を膨らます私を見て、お兄様は笑いながら首筋にちゅっと音を立ててキスをしてきた。
「じゃあ、とりあえず今はまだ兄妹でいよう。期間限定でね」
「なにそれ。今度は兄妹ごっこってこと?」
「そうだな。本当は恋人だけど、兄妹のふりをしてようか。……でもいずれ、絶対君を俺の妻にする」
「……お兄様」
「いつか、結婚しよう。必ず」
そのままどちらかともなく顔を近づけ、お兄様の柔らかな唇が私の唇に重なった。
キスを終え、とろけるような感覚にぼーっとしている私を見て、お兄様は愛しそうな目をして私を見つめてくる。
「周りに反対されても、もしこの先俺から逃げたくなることがあっても、地獄の果てまで追いかけるよ」
「ふふ。安心した。そう言われると、なにかあっても安心して逃げられるわ。だって、絶対に捕まえてくれるんでしょう?」
「当たり前だろ。ミレイユがいない世界に、俺は生きている意味がないからな。……愛してる」
「あっ……」
また、首元にちくりという感覚。
お兄様から印をつけられるのは、これで何度目だろう。
でも私は、この赤い印が増えるたび、お兄様に支配された気がしてうれしくなるのだ。
私は自由に動けるし、お兄様以外の人にも会える。
望んだエンドとは全然ちがう、平和でハッピーなエンディング。
でも、私の心はお兄様という檻に常に囚われている。
そして、お兄様はその檻から、決して私を逃がしてはくれない。
私たちは、いつか夫婦になる。
だから今はまだ、この関係をめいっぱい楽しむの。
「ミレイユ、死んでも君を離さないから」
この世で一番、重い愛という塊を背負った、最狂で最高なヤンデレお兄様と共に。
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