悪役令嬢のバックには、歩く攻略本がついている

瑞希ちこ

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メイドはモフモフを欲している2

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 私はスキップしながら城を出て街へと向かった。ニーナの家までの道のりは簡単だったので、ちゃんと覚えている。ニーナに会うのは、城に案内してもらって以来だ。

「あらリアーヌ、今日はひとりなの?」
「はい! 薬を買いに!」
「そうなのね。気を付けるのよ。今度は別の魔法を見せてあげるわ」
「本当に? 楽しみだわ!」

 街に出ると、こうやって声をかけてもらえるようにもなった。
 完全に部外者の私を、シャルムの人たちは警戒することもなく親し気に接してくれる。これも、国王であるギルバート様が私を受け入れてくれたからこそだろう。

 薬屋に着くと、ちょうど店番をしているニーナの姿が目に入った。どうやら、今はお客さんはいないようだ。私はすぐに店内に入り、ニーナに声をかける。

「ニーナ! やっと会えた!」
「……リアーヌ!?」
「そうよ! この前は本当にありがとう! ニーナのお陰で、シャルムでもうまくやっていけそうよ!」
「よかった! 噂でリアーヌの話は聞いていたのよ。どう? 城での生活はやっていけそうなの? まさかリアーヌが使用人として働くことになるなんて思わなかったわ。あ、それに、ルヴォルツに帰る方法はわかったの?」

 私との再会に興奮したのか、ニーナは私の両肩を掴んでまくし立てる。私はニーナを落ち着かせてから、ひとつずつきちんとニーナに説明をした。

「じゃあ、しばらくはシャルムにいるのね!」
「ええ。だからこれからもよろしくね。たまに遊びに来てもいい?」
「大歓迎よ! 今はいないけど、お父さんもお母さんもまたリアーヌに会いたがっていたから喜ぶわ」

 私もおばさんとおじさんにはぜひ会いたい。近々絶対にまた、ニーナの家に来る時間を作ろうと心に決めた。

「あ! そうそう。私、フェリクスにおつかいを頼まれてたんだわ。薬、買って帰っていい?」
「え? それはもちろんだけど……待って。リアーヌ、フェリクス様と仲良くなったの? 呼び捨てで呼んでいるなんて……」
「ええ。フェリクスにはよくしてもらってるわ。ニーナが言っていたかっこいい執事ってフェリクスのことよね! たしかに、大人で独特のオーラがあって素敵な人ね」
「でしょう!? フェリクス様、国中の女性から人気があるのよ」
「ニーナはフェリクスのことが好きなの?」
「えっ!? それはないわ! 私は憧れというか、見てるだけでいいの。恋愛感情ではなくて、ファンみたいな感じね」

 そういうものなのか。と、私はひとり心の中で勝手に納得する。

「それより、薬はなにを頼まれたの?」
「えっと、熱さましと……あと……なんだったっけ」
「えぇ? リアーヌ、まさか忘れたの?」
 考えても思い出せない私を見て、呆れたようにため息をつくニーナ。

「ど、どうしようニーナ。フェリクスがよく買ってるものがなにか覚えてない?」
「フェリクス様は何度か来店されたことはあるのだけど、いつも買うものがバラバラなの。この前は……胃薬だったかしら」
「あ、それだったかも! 熱さましと胃薬をちょうだい!」
「そんな適当で大丈夫なの……? もしちがったらお店に連絡して。こっちから届けに行くから」
「ありがとう。助かるわ」

 ニーナに薬を包んでもらい、私は『またね』と告げお店をあとにした。

 城に戻り、薬が入った紙袋をフェリクスに渡す。フェリクスはギルバート様の執務室にそれを置くと、私と一緒にテラスに移動し、そこで紅茶を淹れてくれた。
 綺麗に咲いた花たちを眺めながら、私はフェリクスとのまったりとした時間を楽しむ。
 
「リアーヌ、シャルムはどうだ?」
「すっごくいい場所よ。それはもう!」

 私の返事を聞いて、フェリクスは満足そうに微笑みカップに口をつけた。
 
 シャルムは国というより、ひとつの都市のようだ。
 ここにはわずらわしい貴族階級もないし、みんなのびのびとしている。魔力が極めて高い人や、城の人たちはもちろん偉いとされてはいるけれど、その権力を振りかざし、威張っているようには見えない。

「まだ見たことない魔法もたくさんあるし、毎日が新発見で、すごく楽しいの」
「ギルに頼めば、ほとんどの魔法を見ることができるぞ。魔法は人によってできるものやできないもの、得意不得意がある。ひとつの属性の魔力しか持たないものも大勢いる。だけど、あいつはあらゆる魔法を使いこなせるんだ。ま、ギルにもできないことや、苦手なものもあるけどな」
「さすが、やっぱりギルバート様はすごいのね……」
「ひとつの魔力を極め、その属性でトップになれば称号を与えられるんだ。そういう魔法使いはレベルがちがう。こっちにいる間に、たくさんのすごい魔法が見られたらいいな」

 魔法使いの世界も、いろいろと奥が深いのね……。
やっぱりどこの世界も、なにかしら力を持つものが上に立ち、評価されるということだ。
 フェリクスに魔法について教わっているうちに、私の中にひとつの疑問が浮かんだ。

「そういえば……フェリクスは、どんな魔法を使うの?」

 城に来て一週間。私は一度もフェリクスが魔法を使っているところを見たことがない。

「俺か? 俺はちょっと特殊なんだ。ほかとちがってな」
「特殊?」
「ああ。……近いうちに見せてやろう」

 そう言って、フェリクスは妖しげな笑みを浮かべた。
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