34 / 56
34
しおりを挟む「レオは、クレープが好きなのですね?」
「ああ、こんな庶民的な物を好きだなんて、おかしいだろうか?」
「あいえそう言うことではなく、殿方がこのような可愛らしいクレープ屋を真っ先にオススメするとは思いもよらなかったので」
レオとのデートでまず連れてこられたのは、なんと超ラブリーなクレープ屋だった。
あまりにも予想外な場所に固まる私にレオは悲しげに言うけれど、問題はそこではないので否定する。前世で言ったら大炎上まちがえなしの、男女差別の言い方をしてしまう。
クレープを好きな男性なんて前世では、まったくおかしくない。ケーキ食べ放題も男性のグループで行っても普通な世の中。
でもここは中世をイメージしているんだから、男性が甘いものが好きって公表しないと思ってた。
実際並んでいるのは女性ばかり。
そう言うプライドはないんだろうか?
「そう言うものなのか。確かに男性だけで買いに来る者は、俺以外見かけたことがないんだが」
だろ……え?
俺以外って、レオは一人で買いに行ってる?
「レオは一人で買いに来るのですか?」
「ああ、週に二三回」
「そうなのですね? それで何を頼むのですか?」
「一応一通り食べたが、一番食べているのは苺パラダイスだ。エミリーは何にする?」
まさかまさかのスイーツ男子極み発言に圧倒するも、ここまで幸せそうに語れるのは尊敬に値する。
手渡された可愛いイラスト付きのメニューを見て、抹茶日よりか木の実の里のどっちにしようかと悩んでいると
「ボクもクレープ食べたい」
「え、ヌク?」
ヌクが無邪気に言って飛び出し、私の肩に乗りメニューを見つめる。
勝手に出て来られるんだ。
「ボクこのチョコの森がいい」
「そう? じゃぁこれで」
ここは勝手に出てきたらいけないと叱るべきなのに、何も言えず言われるがままそれにしてしまった。
題名通りチョコクリームにチョコソース。ポッキー、チョコチップ。皮までチョコレート。見た目が残念でも、チョコ好きにはたまらない一品なんだろう。
因みにレオのイチゴパラダイスは、生クリームに苺がここぞとばかりに綺麗に盛られている。インスタ映えするクレープ。
なぜよりにもよってこんな物を選んだろうか? レオは苺が好きだってことにはしているけれど、苺をふんだんと使ったクレープは他にもある。
「分かった。俺は現金で買い物が出来るようになったから、エミリーはヌクとそこのベンチで待っててくれ」
「はい、分かりました」
皇太子だから、それは凄いこと。馬鹿にせず笑顔で頷き、言われた通りベンチに……。
「──あれは?」
大人しく座ろうとしたら、美味しそうな音がどこからともなく聞こえた。辺りを見回すとトルネードポテトののぼり旗が立っている屋台を発見。
この世界にトルネードポテトがあるのが驚きで、考えるよりも先に足が動いていた。
「エミリー待たせたな。って何を食べてるんだ?」
「トルネードポテト。レオの分もちゃんと買ってきたわ。私のクレープと交換ね」
トルネードポテトを買って二口食べた頃に、二つのクレープを持ったご機嫌のレオがやって来た。当然驚かれるも何食わぬ顔でそう答え、クレープを受け取りトルネードポテトを渡す。
「これはエミリーの好きな食べ物なのか?」
「はい。芋の揚げた物はすべて大好きです。サクサクして美味しいですよ」
「ボクも好き。エミリーちゃんと良くお城を抜け出して、城下町に行く度買ってたよね?」
え、そうなの? 初耳なんだけど。
レオよりエミリーの方が庶民的?
「エミリーは好奇心旺盛なんだな。最初っからそう言うことを知っていれば、俺は誤解をしなかった」
「ええ、そうですね。ですがこうして誤解は解けました。どうやら私達は似たもの同士のようなので、これからゆっくりお互いを知っていけば良いと思います」
「そうだな。うん、このトルネードポテトも美味しい」
「クレープもすごく美味しいです」
ほっぺが落ちホクホクと食べるレオをみて、私もクレープを一口食べる。
口の中にあらゆるチョコの味が広がり、ナッツのコリコリ感がたまらない。ちょうどいい甘さ。
ヌクも食べたそうだから、もう一口食べて渡す。
確実にいい感じの恋愛イベントになっていて、このレオがありのままなら好きになるのも分かる気がする。
産みの親なのに、こんな一面があるなんて知らなかった。
「庶民達の間ではこう言うのを食べなから、歩いてもいいそうだ。こう言うのを食べ歩きと言うらしい」
「だったら私達もそうしましょう。次はどこに連れてってくれるのですか?」
「次はこないだ古代の遺跡が発掘された現場だ。ちょくちょく行ってるから、現場の人達とは顔馴染みでな」
「面白そうですね」
考古学好きならではのスポット。私も遺跡巡りは好きだから興味津々で、レオ以上に目を輝かせているかもしれない。
遺跡の人達には皇太子と言うのを隠して偽名を使っていから、それで呼んでぼろを出さないようにと言われた。
普通に接してくれるから楽だと言ってるけれど、制服を着ている以上にそれなりの身分なんだよね? その辺分かっているんだろうか?
ちなみに偽名はライアン。
私も合わせて偽名を名乗ることにした。トモ。
…………。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
18
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる