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しおりを挟む「あんちゃん、来たんだな。今日は有名な考古学の先生が来てるんだ。後で紹介してやるよ」
「こんにちは。それは嬉しいです」
難いの良い現場監督っぽいおじさんが気さくにレオに声をかけると、レオは笑顔で挨拶を交わし会話を始める。和気あいあいでここに通ってることがよく分かる微笑ましいシーンだ。
そんなことより有名な考古学の先生にバリバリ思い当たる私は、地味にヤバさを感じてしまい
「ヌク、フランダー教授を見つけ出して“私とレオがお忍びで来ていて、偽名を使ってる”って伝えてくれる?」
「うん、分かった。バレたら大変だもんね。偽名も教えておくね」
小声でヌクにそんな伝言を頼み、現場監督っぽい人に見つからないよう先に行かせる。
これで多分大丈夫。
「所でそのお嬢ちゃんは、あんちゃんの彼女かい?」
「はい。トモって言って、俺と同じで考古学に興味があるんです」
「よよろしくお願いします」
言葉に出して言われると気恥ずかしいと思いながら、変に思われないよう愛想良く挨拶をする。
まぁ婚約者なんだから恋人か。
「こちらこそよろしく。俺の名はパルマ。そんじゃぁしばらくいつものように好きに見てくれ。また後でな」
『はい』
この台詞でレオがどんなにここへ通いつめてるのか分かった。しかもシャーロットとではなく一人て来てるから、私にも愛想がいい。
「ねぇ有名な考古学の先生って誰だと思う?」
「え、そんなの決まってるだろう? フランダーあっ?」
パルマさんを見送りながら小声で聞いてみると、当然に答えようやく質問の意味を知ったらしい。しまったとばかりの声をあげ、罰の悪そうな表情を私に向ける。
予想がついてたのに頭が回んなかったのか。
これからもお忍びライフを楽しみたかったら、もう少し危機感を持つべき。
「ヌクに伝言を頼んだから大丈夫だと思うけれど、考古学系ならあらかじめフランダー教授と口裏を合わせるべきでしょ?」
「そうだった。すっかり忘れてた。機転を効かせてくれてありがとう」
滅茶苦茶素直だった。
「トモここにいたんだな? 試したいことがあるから、一緒に来てくれ。ライアンも」
「え、はい」
レオのマニアックな説明付きですっかり楽しみながらの見学中、いきなりフランダー教授がやってきて合意の元連行される。興奮気味のフランダー教授を見れば、何かあると一目瞭然。レオも目を更に輝かせ、私達の後をおう。
何を私で試すんだろう?
ちょっと怖い。
「これは異世界から聖女を呼び出す装置だと言われてる」
「は、そんな伝承あるんですか?」
地獄の門のような遺跡の前でフランダー教授は宣言するも、見に覚えのない私は耳を疑い聞き返す。
そんな設定私は知らな……初期設定の主人公は、異世界の女子高生にしていたんだよね? でもそれだとエミリーは悪役令嬢じゃなく姉御キャラになりかけたから、平民の特待生に変更した。
それなのにどうして?
「一冊の古文書にな。それによると女魔王を倒した聖女が異世界人と言われてる。──つまり君とアーサーのご先祖様だ──」
どうやら全部は消し切れてなく、一部だけ残っていたらしい。確かそんな設定だった。
そして私との約束を覚えていたようで、後半は耳打ちされクスッと笑う。
「なるほどですね? それでフランダー教授は私に何を触れさせたいのですか?」
「この門だ。そして異世界から聖女を召還させる」
「……は? フランダー教授あなたは馬鹿なんですか?」
とても人間とは思えない阿保過ぎる台詞に、私は軽蔑し暴言を吐き捨てる。スリッパで叩きたかったけれど、そこは一応教授なのでぐっと堪えた。
天才は人間として壊れているって言うのは有名な話ではあるけれど、まさかここまで奇天烈な発想をするなんて思わなかった。常識なんかない。
この世界はいつからギャグマンガになったんですか?
「何がそんなに気に食わないんだ?」
「すべてです。なんでこの平和な世に、異世界から聖女なんて召喚するのですか? 興味本位で気軽に呼び出された聖女様が大迷惑です」
一般常識を強い口調で教える。フランダー教授はハッと考え込み、レオは迫力に押されたのか私から視線を逸らす。
「それなら我々は監禁されたクード神の元に向かうから、もしもの時の保険だな」
「聖女を保険に使ったらいけません。そう言うことなら私は帰らせてもらいます。ヌク、レオ行きましょ?」
「うん」
「そうだな。流石に俺もそれはないと思う」
くだらない理由の上塗りに、説得するより鍵の私がとんずらすれば良いと考え冷めた口調で別れを告げる。
レオも私と同意見でドン引き寸前で、さっさとここから離れようと。
しかしここはお決まりなのか、バナナのようなヌメッとしたものに足を捉え滑って転けそうになる。とっさに近くにあった物に掴み、なんとか踏みとどまり危険を回避。
これ滑って転けたら、私死んでた?
デジャブ?
カチャ
ホッとしたのも束の間で、ボタンを押す感触がある。
「……門が光り始めたぞ」
「え、あ本当──」
レオの呆然とした言葉に私は視線を門に向けると、確かに光り輝き出している。
それはあまりにも崇高な物に見え、不思議と目が離せない。それは私だけではなく、レオとフランダー教授も同じ。
絶対これはヤバい状況なのに、そう言うことも忘れていた。
そして扉がゆっくりと開かれる。
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