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始まりの章
14.潜入
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「星歌、カマイタチでこの封印を貫いてくれ」
「え、いきなり? 後四回しか使えないのに?」
「オレの魔術じゃ外からじゃ何も出来ないって言っただろう?」
いかにもラスボスがいそうなどんよりとしたとてつもなく重たい空気を醸し出しているショッピングモールを目の前にして、見えない壁を叩いて確認するなり龍くんは開き直ったのか私の力に頼る。
四回の使い道を私なりに考えていた手前うんとは言いがたいけれど、中には入れなかったら身も蓋もない。
「俺が突破口を作る」
「お前は駄目だ。確かに今のお前ならそれも可能だと思うが、いくらなんでもここで力の大半を使ったら、忍に今度こそ殺されるぞ?」
「え、じゃぁ私やる。カマイタチ使うから、みんなちょっと離れていて」
ものすごい殺気にも似たオーラをまとったパパが出てきて名乗り出るも、龍くんに厳しく止められ私もそれは困るから手を上げ使う事を宣言。
明らかにパパはオーラだけでなく外見も別人だった。
見た目華奢でひょろりとしていて頼りない感じのパパなのに、今は服を着ていても筋肉隆々格闘家の体型に進化している。
まぁ今思えば脱ぐと結構筋肉体質で見た目より大きいサイズだったから、今でも着られない事はなかったけれどそれでも結構ピチピチなんだよね。
筋肉フェチには好感度高そう。
さらに鋭い眼光は血に飢えた獣のように見えて、戦う事に快感を持っていそう。
龍くん曰くこれは極限以上にまで気力を高め続けている戦闘モードらしい。
最早どこかのバトル漫画の登場人物で怖くて関わりたくないんだけれど、私を護るためにそうならざるを得なかった訳で、そう思うと拒絶は出来ないし申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
だからカマイタチはパパのために、ここで使わないとまったく意味がない。
言葉に出来ない文字を呼び出し読みながら、見えない壁を切るイメージを込めて打ち付ける。
バシュン
カマイタチが見えない壁を切り裂き貫く。
「よし。今度はうまく出来たな。後はオレに任せろ」
バッジャーン
と龍くんは言って解き放たれた炎球は、わずかな穴を抜けると大爆破。
見えない壁の一部は物の見事に崩壊。
「星歌も師匠も、すげぇー。これが魔術か」
「太、ちょっと落ち着いて。今どんな状況だか分かっているの?」
「だってオレにとっては初めて見る攻撃系の魔術なんだぜ? 陽は何も思わないのかよ?」
魔術に憧れを抱く少年は中二病丸出しのはしゃぎように、陽は恥ずかしそうにブレーキを掛けるも効果はなし。
「太、遠足気分はここまでだ。いくら雑魚でも本気で挑まないと最悪死ぬぞ」
「そんなの分かってるぜ? 気を引き締めていくって」
「……本当にしっかりしてくれよ。敵がごまんと……げぇ?」
忠告されても調子が良い事を言って剣を構える太に呆れつつも、先陣をきって中に入った途端後退し嫌な汗をだらだらと流す。
「どうかしたか?」
「予想していた以上のモンスター達の歓迎だったんでね。まぁそれだけ忍の容体は悪いと思えば良いんだが」
「この程度ならどうって事ない」
「星夜、お前戦闘モードになると兇変するよな? そんじゃぁここは頼む」
「分かった」
頭をかきやれやれと言った感じで今の状況を伝える龍くんなのに、パパと来たら状況を確認しても平然としたままそう言うだけ。
そんなパパに呆れきって肩を叩き任せると、自分は私達の元に戻り息を吐くかのように結界のような物を張る。
結界の先には数え切れない多くのモンスターが徘徊していて、数体は私達に気づいたのか視線を向け吠え襲いかかろうとしていた。
それなのにパパは落ち着いていて大きく息を吸ってお腹に力を貯めゆっくり息を吐くと、きつく握りしめた拳は輝き始め鋭くそれを前に突き出す。
輝きは瞬時に解き放され
ドーカン
ガジャーン
大地が震える怒り狂う地響きにガラスが粉々に割れる音。
結界に護られているはずなのに、それでも立っている事が出来ない衝撃で龍くんにしがみつく。
「お前の父親凄いだろう?」
「凄いけれど、ちゃんと力の配分出来ているのかな?」
「確かにちょっと上げ過ぎでもあるが、お前のためだからこのぐらいならなんとかなるだろう? 護るべき者が傍にいるだけで無限に強くなれる奴だから」
「そんな適当な」
ショッピングモールは跡形もない廃墟と姿を変えていた。
残ったモンスター達も次々と倒し無双状態のパパを褒め称えるけれど、素直に喜べなくってやっぱり身体の心配の方が強くなってしまう。
いくら戦闘モードであっても数時間前の大怪我は完治してない。
なのに龍くんはあっけらかんと根拠のない理由を言うだけで親身になってくれず。
「おっさんも本当に英雄だったんだな。オレなんだか興奮する」
「……太、本当に痛い目にあっても知らないからね」
今まで静かだった太が視界に現れたかと思えば、やっぱり残念でしかない阿呆さを見せびらかして、陽だけでなく私も今度こそ太に嫌気を指す。
これが本当の太でこれを見せられたら百年の恋も目が覚める。
なんで私こんな奴に私はときめいたりしたんだろう?
いわゆる吊り橋効果みたいな物で、あれはきっと幻だったに違いない。
うん、絶対そうだ。
「太に期待したオレが馬鹿だったのか? 車の中に置いて強力な防御結界張っとくか?」
それは龍くんもだったから太なんて構っている暇があるならパパの事を考えようと視点を戻せば、モンスター達はすでに全滅していて残骸があちらこちらに散らばっている。
見た感じパパに怪我はなくって呼吸も正常で、さっきよりも荒々しいオーラをまとっているんだけれど、それ以上になんだろう瞳の奥が泣いているように思える。
いくら戦闘モードで性格が兇変していても、本質は他人を傷つける事も争いも嫌っている心優しいパパ。
モンスターであっても命を奪った事の罪の重さを感じているんだね。
「パパ、私の事ギュッとしていいよ」
「え、いきなりなんだ?」
「なんだっていいから早く」
「星歌は甘えん坊だな」
そんなパパの心の悲鳴を聞き取った私はいてもたってもいられなくなって、戻って来るパパに駆け寄って懐に飛び込む。
ただ命を奪った罪って言葉にしたら保っている戦闘モードを壊しそうだから、驚かれても理由を言わず強制しギュッとしてもらう。
屍の悪臭が漂って多少多めな筋肉がさっきと異なる居心地になっていて戸惑いはあるけれど、これは私の事を愛してくれている証だって思えばここも心地の良い場所に変わる。
パパは自分の意思を押し殺していたとしても、私を一番に考えてくれているんだもん。
今日一日でますます大好きになった。
「パパは私のヒーローだね」
「ありがとう。だったら星歌はお父さんの聖女だな。こうしているだけで何もかもが癒やされていく」
今のパパにはその称号がピッタリだから言ったのに、喜んでくれた以上に他人に聞かれたら爆笑される称号が与えられてしまう。
確かに抱きしめるだけですべてが回復するのなら私はパパだけの聖女。
そう言うことにしとこう。
「それなら良かった。そう言うことならいつでも気力補給しても良いんだからね」
「だったら手を握っててくれるか?」
「うん」
癒やし作戦は成功のようでパパの顔は和らぎ、今度は望み通り手を恋人繋ぎで手を握る。
私はこの大きな手に護られ励まされて来たから、今度は私の番。
龍くんと陽は空気を読んで触れないでいてくれるから良いとして、空気を読めない太になんか言われたらぶっ飛ばす。
と意気込み三人の元に戻れば、太はすっかりしょげていて心配は無用だったらしい。
この分だと龍くんにこってり絞られ、車に戻されていないとこを見れば今度こそ自覚した?
「流石星夜だな。ご苦労さん。ほらこれ飲んだらすぐに忍のとこ行くぞ。どうやら異世界起動装置は忍の元にあるらしい」
「そうか、分かった。こっちはいつでも準備は出来てる」
手を繋いだままでもやっぱり龍くんは微笑むだけで、パパに何か液体入りの小瓶を渡しこれからのことを話し出す。
パパには想定内なのか私の手を離し、小瓶を開け液体を飲み干す。
「随分急展開だね?」
「これはRPGじゃないからね。目的地さえ分かれば、最短ルートを作れば良い」
「最短ルート?」
言われて意味はなんとなく分かるも、方法が分からなく首をかしげ復唱。
するとニヤと勝ち誇った笑みを浮かばせ、私達と少し距離を取る。
「そう。こうやって作れば良い」
地面に両手をつき目を瞑り何かを念じ、力を解放する。
バリバリ
地面が割れ、穴が出来る。
「これでよし。ここを降りれば目的地だ。陽少しだけだから許せ。太はオレの後を付いてこい」
「え、キャァ?」
穴をのぞき込みそう言うと、陽をお姫様抱っこして穴の中へ。
まさかこれが最短ルートで男の部屋まで続いているとか?
そんな無茶苦茶な都合が良い展開で良いのか?
「……師匠、これはオレには無理ゲーだよ」
「え、あ確かにこれはパパと龍くんにしか無理だよね?」
続いて太も行くかと思えば穴をのぞいた途端、顔を青ざめ柄にもなく尻込みしていた。
気になり私ものぞくと真っ暗で底が見えないほど深い。
らせん階段と言う階段は一応あるにはあるんだけれど、一段一段の間隔が普通の十段ぐらいはある。
何を思ってこれを太に降りてこいと言ったのかは知らないけれど、これはいくらなんでも可愛そう。
「だったら二人は俺が連れて行く」
「パパ?」
「おっさん?」
まったくもって問題ないと言わんばかりに、パパはそう言って私達を驚かせる。
そして私達を軽々持ち上げ、楽々と三段抜かしで降りていく。
しかも急降下のジェットコースター並みの速さがあって本気で怖い。
私、あれ心臓が飛び出る感覚が嫌いなんだよね?
「え、いきなり? 後四回しか使えないのに?」
「オレの魔術じゃ外からじゃ何も出来ないって言っただろう?」
いかにもラスボスがいそうなどんよりとしたとてつもなく重たい空気を醸し出しているショッピングモールを目の前にして、見えない壁を叩いて確認するなり龍くんは開き直ったのか私の力に頼る。
四回の使い道を私なりに考えていた手前うんとは言いがたいけれど、中には入れなかったら身も蓋もない。
「俺が突破口を作る」
「お前は駄目だ。確かに今のお前ならそれも可能だと思うが、いくらなんでもここで力の大半を使ったら、忍に今度こそ殺されるぞ?」
「え、じゃぁ私やる。カマイタチ使うから、みんなちょっと離れていて」
ものすごい殺気にも似たオーラをまとったパパが出てきて名乗り出るも、龍くんに厳しく止められ私もそれは困るから手を上げ使う事を宣言。
明らかにパパはオーラだけでなく外見も別人だった。
見た目華奢でひょろりとしていて頼りない感じのパパなのに、今は服を着ていても筋肉隆々格闘家の体型に進化している。
まぁ今思えば脱ぐと結構筋肉体質で見た目より大きいサイズだったから、今でも着られない事はなかったけれどそれでも結構ピチピチなんだよね。
筋肉フェチには好感度高そう。
さらに鋭い眼光は血に飢えた獣のように見えて、戦う事に快感を持っていそう。
龍くん曰くこれは極限以上にまで気力を高め続けている戦闘モードらしい。
最早どこかのバトル漫画の登場人物で怖くて関わりたくないんだけれど、私を護るためにそうならざるを得なかった訳で、そう思うと拒絶は出来ないし申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
だからカマイタチはパパのために、ここで使わないとまったく意味がない。
言葉に出来ない文字を呼び出し読みながら、見えない壁を切るイメージを込めて打ち付ける。
バシュン
カマイタチが見えない壁を切り裂き貫く。
「よし。今度はうまく出来たな。後はオレに任せろ」
バッジャーン
と龍くんは言って解き放たれた炎球は、わずかな穴を抜けると大爆破。
見えない壁の一部は物の見事に崩壊。
「星歌も師匠も、すげぇー。これが魔術か」
「太、ちょっと落ち着いて。今どんな状況だか分かっているの?」
「だってオレにとっては初めて見る攻撃系の魔術なんだぜ? 陽は何も思わないのかよ?」
魔術に憧れを抱く少年は中二病丸出しのはしゃぎように、陽は恥ずかしそうにブレーキを掛けるも効果はなし。
「太、遠足気分はここまでだ。いくら雑魚でも本気で挑まないと最悪死ぬぞ」
「そんなの分かってるぜ? 気を引き締めていくって」
「……本当にしっかりしてくれよ。敵がごまんと……げぇ?」
忠告されても調子が良い事を言って剣を構える太に呆れつつも、先陣をきって中に入った途端後退し嫌な汗をだらだらと流す。
「どうかしたか?」
「予想していた以上のモンスター達の歓迎だったんでね。まぁそれだけ忍の容体は悪いと思えば良いんだが」
「この程度ならどうって事ない」
「星夜、お前戦闘モードになると兇変するよな? そんじゃぁここは頼む」
「分かった」
頭をかきやれやれと言った感じで今の状況を伝える龍くんなのに、パパと来たら状況を確認しても平然としたままそう言うだけ。
そんなパパに呆れきって肩を叩き任せると、自分は私達の元に戻り息を吐くかのように結界のような物を張る。
結界の先には数え切れない多くのモンスターが徘徊していて、数体は私達に気づいたのか視線を向け吠え襲いかかろうとしていた。
それなのにパパは落ち着いていて大きく息を吸ってお腹に力を貯めゆっくり息を吐くと、きつく握りしめた拳は輝き始め鋭くそれを前に突き出す。
輝きは瞬時に解き放され
ドーカン
ガジャーン
大地が震える怒り狂う地響きにガラスが粉々に割れる音。
結界に護られているはずなのに、それでも立っている事が出来ない衝撃で龍くんにしがみつく。
「お前の父親凄いだろう?」
「凄いけれど、ちゃんと力の配分出来ているのかな?」
「確かにちょっと上げ過ぎでもあるが、お前のためだからこのぐらいならなんとかなるだろう? 護るべき者が傍にいるだけで無限に強くなれる奴だから」
「そんな適当な」
ショッピングモールは跡形もない廃墟と姿を変えていた。
残ったモンスター達も次々と倒し無双状態のパパを褒め称えるけれど、素直に喜べなくってやっぱり身体の心配の方が強くなってしまう。
いくら戦闘モードであっても数時間前の大怪我は完治してない。
なのに龍くんはあっけらかんと根拠のない理由を言うだけで親身になってくれず。
「おっさんも本当に英雄だったんだな。オレなんだか興奮する」
「……太、本当に痛い目にあっても知らないからね」
今まで静かだった太が視界に現れたかと思えば、やっぱり残念でしかない阿呆さを見せびらかして、陽だけでなく私も今度こそ太に嫌気を指す。
これが本当の太でこれを見せられたら百年の恋も目が覚める。
なんで私こんな奴に私はときめいたりしたんだろう?
いわゆる吊り橋効果みたいな物で、あれはきっと幻だったに違いない。
うん、絶対そうだ。
「太に期待したオレが馬鹿だったのか? 車の中に置いて強力な防御結界張っとくか?」
それは龍くんもだったから太なんて構っている暇があるならパパの事を考えようと視点を戻せば、モンスター達はすでに全滅していて残骸があちらこちらに散らばっている。
見た感じパパに怪我はなくって呼吸も正常で、さっきよりも荒々しいオーラをまとっているんだけれど、それ以上になんだろう瞳の奥が泣いているように思える。
いくら戦闘モードで性格が兇変していても、本質は他人を傷つける事も争いも嫌っている心優しいパパ。
モンスターであっても命を奪った事の罪の重さを感じているんだね。
「パパ、私の事ギュッとしていいよ」
「え、いきなりなんだ?」
「なんだっていいから早く」
「星歌は甘えん坊だな」
そんなパパの心の悲鳴を聞き取った私はいてもたってもいられなくなって、戻って来るパパに駆け寄って懐に飛び込む。
ただ命を奪った罪って言葉にしたら保っている戦闘モードを壊しそうだから、驚かれても理由を言わず強制しギュッとしてもらう。
屍の悪臭が漂って多少多めな筋肉がさっきと異なる居心地になっていて戸惑いはあるけれど、これは私の事を愛してくれている証だって思えばここも心地の良い場所に変わる。
パパは自分の意思を押し殺していたとしても、私を一番に考えてくれているんだもん。
今日一日でますます大好きになった。
「パパは私のヒーローだね」
「ありがとう。だったら星歌はお父さんの聖女だな。こうしているだけで何もかもが癒やされていく」
今のパパにはその称号がピッタリだから言ったのに、喜んでくれた以上に他人に聞かれたら爆笑される称号が与えられてしまう。
確かに抱きしめるだけですべてが回復するのなら私はパパだけの聖女。
そう言うことにしとこう。
「それなら良かった。そう言うことならいつでも気力補給しても良いんだからね」
「だったら手を握っててくれるか?」
「うん」
癒やし作戦は成功のようでパパの顔は和らぎ、今度は望み通り手を恋人繋ぎで手を握る。
私はこの大きな手に護られ励まされて来たから、今度は私の番。
龍くんと陽は空気を読んで触れないでいてくれるから良いとして、空気を読めない太になんか言われたらぶっ飛ばす。
と意気込み三人の元に戻れば、太はすっかりしょげていて心配は無用だったらしい。
この分だと龍くんにこってり絞られ、車に戻されていないとこを見れば今度こそ自覚した?
「流石星夜だな。ご苦労さん。ほらこれ飲んだらすぐに忍のとこ行くぞ。どうやら異世界起動装置は忍の元にあるらしい」
「そうか、分かった。こっちはいつでも準備は出来てる」
手を繋いだままでもやっぱり龍くんは微笑むだけで、パパに何か液体入りの小瓶を渡しこれからのことを話し出す。
パパには想定内なのか私の手を離し、小瓶を開け液体を飲み干す。
「随分急展開だね?」
「これはRPGじゃないからね。目的地さえ分かれば、最短ルートを作れば良い」
「最短ルート?」
言われて意味はなんとなく分かるも、方法が分からなく首をかしげ復唱。
するとニヤと勝ち誇った笑みを浮かばせ、私達と少し距離を取る。
「そう。こうやって作れば良い」
地面に両手をつき目を瞑り何かを念じ、力を解放する。
バリバリ
地面が割れ、穴が出来る。
「これでよし。ここを降りれば目的地だ。陽少しだけだから許せ。太はオレの後を付いてこい」
「え、キャァ?」
穴をのぞき込みそう言うと、陽をお姫様抱っこして穴の中へ。
まさかこれが最短ルートで男の部屋まで続いているとか?
そんな無茶苦茶な都合が良い展開で良いのか?
「……師匠、これはオレには無理ゲーだよ」
「え、あ確かにこれはパパと龍くんにしか無理だよね?」
続いて太も行くかと思えば穴をのぞいた途端、顔を青ざめ柄にもなく尻込みしていた。
気になり私ものぞくと真っ暗で底が見えないほど深い。
らせん階段と言う階段は一応あるにはあるんだけれど、一段一段の間隔が普通の十段ぐらいはある。
何を思ってこれを太に降りてこいと言ったのかは知らないけれど、これはいくらなんでも可愛そう。
「だったら二人は俺が連れて行く」
「パパ?」
「おっさん?」
まったくもって問題ないと言わんばかりに、パパはそう言って私達を驚かせる。
そして私達を軽々持ち上げ、楽々と三段抜かしで降りていく。
しかも急降下のジェットコースター並みの速さがあって本気で怖い。
私、あれ心臓が飛び出る感覚が嫌いなんだよね?
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