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1章 再び動き始めた運命の歯車
4.優しい私の味方
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「え、黒崎くんが英雄候補で魔族って言うだけで、星ちゃんの命を狙ってた? しかも魔族の異臭って何よ? そんなのするわけないでしょ?」
「だろう? お前は他人の目を気にしすぎ。大体初対面の奴の言葉なんかを、鵜呑みにすんなよな」
少し長めの休み時間に私は太陽と屋上に訪れ今朝のことを詳しく話すと、太陽の反応は理由を知っても信じられないとばかりに軽く笑うだけ。
いかにも太陽らしい受け答えに、私の心は軽くなる。悩んでいたことが馬鹿馬鹿しいとさえ思えた。
魔王の孫娘である私を太陽が受け入れてくれたってことは、例え醜い姿でも魔族の異臭がした所で関係がない。
どんな私であっても、きっと受け入れてくれる。
「うん、そうだね。太陽はいつだって私の味方でいてくれるんだもんね」
「そんなの当たり前じゃない?」
「分かれば良いんだよ」
嬉しくて声を弾ませ太陽の手を取りそう言うと太陽は当然のように頷き、その手を強く握り返してくれ笑い合う。
「良かったな。星歌?」
「え、龍くん?」
三人の友情を深めている時入り口に視線を変えると、優しい笑みを浮かべた龍くんが私達を見ていた。
誰もいないと思っていたから少しぐらい騒いで良いと思っていたのに、龍くんが来たことにまったく気づかなかった。
それは龍くんだから?
「星歌のことが心配になって様子を見に来たんだが、太陽がいるから心配なかったな」
「師匠、星歌から黒崎のことを聞いたんだが、本当に大丈夫なのか?」
「まぁな。キツく締め上げておいたから、危害を加えることはないだろう」
「…………」
優しい笑顔を向けられたまま穏やかな口調なのに、言葉は物騒で詳しく言わなくても察しが付く。
予想してたとは言えこうやって聞くと、圧倒されて感謝の言葉さえも出て来ない。
この人を敵に回したら、死より怖ろしいのかも知れない。
味方で良かった。
「それでもやっぱり心配だから今日は部活が休みだし、星歌を家まで送り届けてやる」
「え?」
私を心配してくれているだろう太の突然の申し出は嬉しいと思いつつ、なんでそう言うことになったのか理解に苦しみ首を傾げる。
私はもう黒崎に命を狙われることはないんだよね?
太は龍くんの話を聞いて……そんなことはないか。
「それがいい。だったらついでにトレーニングさせて貰え。星夜にはオレから話しておくからな」
「やりぃ」
「なんだそう言うことか」
龍くんまで太の思いつきに便乗するけれど、やっぱりと思いちょっとだけ胸に痛みを感じる。
二ヶ月前のこと件後パパは鍛錬をするため最新式のトレーニングマシーンを買いそろえ、物置部屋になっていた地下室をトレーニング室に変えてしまった。そこで毎日時間さえあれば、黙々とトレーニングに励んでいる。
その結果腹筋バキバキのたくましい体格を手に入れ、なぜか外見も気にするようになりワイルド系イケメンパパが誕生した。
でも中身は温厚でお人好しのままだから、せっかくモテているのに困惑している。
そんなパパを見て私も少し鍛えて健康的な美貌を手に入れようと思い使って見た物の、ほとんどがパパ用に改造してあって私には使えなかった。一台だけ私用にして貰って、毎日頑張っている。
だから太もトレーニングマシーンを使いに来るようになり、その時はパパに稽古まで付けて貰っている。
以前だったらパパをさんざん馬鹿にして見下していたのに、今ではすっかり仲良くなっているんだよね?
二人が仲良くしてくれるのは嬉しいんだけれど、ほんの少しだけ面白くない。なぜなんだろう?
そんな訳だから私のことを心配してくれ家まで送るとは言っているとは思うけれど、真の目的は我が家にあるトレーニングマシーンとパパとの稽古なんだろう。
「太、トレーニングするのもいいけど、星ちゃんのモヤモヤを晴らすために、少し遊んで帰っても良いんじゃない?」
「あ、そうだな。そんじゃゲーセンで遊んで帰ろうぜ?」
そんな私の悩みを知っている陽は私のためにと寄り道を推奨すると、太は目をキラキラ輝かせいかにも楽しいプランを考える。
それは嬉しいけれど、それでいいんだろうか?
「トレーニングの時間が減るけれど、それでも本当に良いの?」
「良いに決まってるだろう? そんなことより星歌の気分を晴らす方が先決じゃん!」
念のため誤解がないように確認するも、当たり前かのように私を第一優先にしてくれる。
しかも嫌な顔なんて一切せず屈託のない笑顔のままだから、本心から言ってくれているんだと思う。
良かった。トレーニングマシーンに負けないで。
「……星ちゃん良かったね。二人で思いっきり楽しんでおいでよ」
「うん!! ありがとう陽」
作戦がうまく行きご機嫌な陽は私の耳元で囁くから、私は嬉しい気持ちを抑え小声で言葉を返す。
こうなると私も陽の力になりたくって、温かい笑みで私達を向けたままの龍くんに視線を変える。
と言っても二人っきりのデートに持って行くわけにはいかないから、ここはごく自然に龍くんとの時間を増やす方法……。
「龍くん、今夜うちに来るんだよね?」
「ああ。今夜は水曜だからな」
今夜は龍くんが来る日だと思い出し念のため確認したら、やっぱり予定は変わっていなかった。しかも黒崎のことがあるから、きっと龍くんは泊まっていくのだろうな。
「だったら太陽も一緒に食べようよ。そしたら太は夕食前と後にトレーニングできるじゃない?」
だから私はそう言う提案をする。
と言っても二ヶ月前から何かと五人で夕食をしているから、提案してもおかしくくない……と思う。
「そうだな。太陽にも黒崎について詳しく話しておくべきか」
「ああ。そしたら陽は部活が終わったら来いよ」
「うん、そうする。……星ちゃん、ありがとう」
私のためにと思って後押しする龍くんのおかげで、陽は躊躇することなく嬉しそうに頷き私同様耳元で感謝された。
「だろう? お前は他人の目を気にしすぎ。大体初対面の奴の言葉なんかを、鵜呑みにすんなよな」
少し長めの休み時間に私は太陽と屋上に訪れ今朝のことを詳しく話すと、太陽の反応は理由を知っても信じられないとばかりに軽く笑うだけ。
いかにも太陽らしい受け答えに、私の心は軽くなる。悩んでいたことが馬鹿馬鹿しいとさえ思えた。
魔王の孫娘である私を太陽が受け入れてくれたってことは、例え醜い姿でも魔族の異臭がした所で関係がない。
どんな私であっても、きっと受け入れてくれる。
「うん、そうだね。太陽はいつだって私の味方でいてくれるんだもんね」
「そんなの当たり前じゃない?」
「分かれば良いんだよ」
嬉しくて声を弾ませ太陽の手を取りそう言うと太陽は当然のように頷き、その手を強く握り返してくれ笑い合う。
「良かったな。星歌?」
「え、龍くん?」
三人の友情を深めている時入り口に視線を変えると、優しい笑みを浮かべた龍くんが私達を見ていた。
誰もいないと思っていたから少しぐらい騒いで良いと思っていたのに、龍くんが来たことにまったく気づかなかった。
それは龍くんだから?
「星歌のことが心配になって様子を見に来たんだが、太陽がいるから心配なかったな」
「師匠、星歌から黒崎のことを聞いたんだが、本当に大丈夫なのか?」
「まぁな。キツく締め上げておいたから、危害を加えることはないだろう」
「…………」
優しい笑顔を向けられたまま穏やかな口調なのに、言葉は物騒で詳しく言わなくても察しが付く。
予想してたとは言えこうやって聞くと、圧倒されて感謝の言葉さえも出て来ない。
この人を敵に回したら、死より怖ろしいのかも知れない。
味方で良かった。
「それでもやっぱり心配だから今日は部活が休みだし、星歌を家まで送り届けてやる」
「え?」
私を心配してくれているだろう太の突然の申し出は嬉しいと思いつつ、なんでそう言うことになったのか理解に苦しみ首を傾げる。
私はもう黒崎に命を狙われることはないんだよね?
太は龍くんの話を聞いて……そんなことはないか。
「それがいい。だったらついでにトレーニングさせて貰え。星夜にはオレから話しておくからな」
「やりぃ」
「なんだそう言うことか」
龍くんまで太の思いつきに便乗するけれど、やっぱりと思いちょっとだけ胸に痛みを感じる。
二ヶ月前のこと件後パパは鍛錬をするため最新式のトレーニングマシーンを買いそろえ、物置部屋になっていた地下室をトレーニング室に変えてしまった。そこで毎日時間さえあれば、黙々とトレーニングに励んでいる。
その結果腹筋バキバキのたくましい体格を手に入れ、なぜか外見も気にするようになりワイルド系イケメンパパが誕生した。
でも中身は温厚でお人好しのままだから、せっかくモテているのに困惑している。
そんなパパを見て私も少し鍛えて健康的な美貌を手に入れようと思い使って見た物の、ほとんどがパパ用に改造してあって私には使えなかった。一台だけ私用にして貰って、毎日頑張っている。
だから太もトレーニングマシーンを使いに来るようになり、その時はパパに稽古まで付けて貰っている。
以前だったらパパをさんざん馬鹿にして見下していたのに、今ではすっかり仲良くなっているんだよね?
二人が仲良くしてくれるのは嬉しいんだけれど、ほんの少しだけ面白くない。なぜなんだろう?
そんな訳だから私のことを心配してくれ家まで送るとは言っているとは思うけれど、真の目的は我が家にあるトレーニングマシーンとパパとの稽古なんだろう。
「太、トレーニングするのもいいけど、星ちゃんのモヤモヤを晴らすために、少し遊んで帰っても良いんじゃない?」
「あ、そうだな。そんじゃゲーセンで遊んで帰ろうぜ?」
そんな私の悩みを知っている陽は私のためにと寄り道を推奨すると、太は目をキラキラ輝かせいかにも楽しいプランを考える。
それは嬉しいけれど、それでいいんだろうか?
「トレーニングの時間が減るけれど、それでも本当に良いの?」
「良いに決まってるだろう? そんなことより星歌の気分を晴らす方が先決じゃん!」
念のため誤解がないように確認するも、当たり前かのように私を第一優先にしてくれる。
しかも嫌な顔なんて一切せず屈託のない笑顔のままだから、本心から言ってくれているんだと思う。
良かった。トレーニングマシーンに負けないで。
「……星ちゃん良かったね。二人で思いっきり楽しんでおいでよ」
「うん!! ありがとう陽」
作戦がうまく行きご機嫌な陽は私の耳元で囁くから、私は嬉しい気持ちを抑え小声で言葉を返す。
こうなると私も陽の力になりたくって、温かい笑みで私達を向けたままの龍くんに視線を変える。
と言っても二人っきりのデートに持って行くわけにはいかないから、ここはごく自然に龍くんとの時間を増やす方法……。
「龍くん、今夜うちに来るんだよね?」
「ああ。今夜は水曜だからな」
今夜は龍くんが来る日だと思い出し念のため確認したら、やっぱり予定は変わっていなかった。しかも黒崎のことがあるから、きっと龍くんは泊まっていくのだろうな。
「だったら太陽も一緒に食べようよ。そしたら太は夕食前と後にトレーニングできるじゃない?」
だから私はそう言う提案をする。
と言っても二ヶ月前から何かと五人で夕食をしているから、提案してもおかしくくない……と思う。
「そうだな。太陽にも黒崎について詳しく話しておくべきか」
「ああ。そしたら陽は部活が終わったら来いよ」
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