普通の女子高生だと思っていたら、魔王の孫娘でした

桜井吏南

文字の大きさ
95 / 157
5章 私が目指す聖女とは

76.計画通り進行中

しおりを挟む
 相談の結果、私達は取り敢えずレジストに拠点を移すことになり、マヒナさんが寝静まった真夜中に行動開始。

 移動手段はミニバンとリュウさん達の馬車。二手に別れてレジストまで向かう。
 ミニバンには私達家族・陽・ヨハンさんの五人。
 馬車には龍くん・つよし・黒崎・リュウさん・ステーフさん・セレス姫の六人。
 順調に行けば、ミニバンは二日。馬車は三日で辿りつくらしい。ミニバンの充電に関しては、以前からパパと龍くんで電撃系魔術で充電できるよう改造。レジストまでならギリなんとかなると言っている。私には聞いても仕組みは分からなかった。

 ルーナスさんは詳しい状況を把握したいと言いって、一足先に一人ブラッケンに向かった。その時ミシャルちゃん達の様子を見てくれてるそうだ。
 ちなみに我が家はミニチュアにして持って行く。

「スピカ、本当にこれで良かったのか?」
「ええ、マヒナにはマヒナの考えがあってシノブについているのだから、あたしが何を言っても聞き耳持たずなんだと思う。万が一シノブに騙されているとしてたら、それはそれでシノブを倒せば問題解決だろう?」

 最後までパパはマヒナさんの心配をするんだけど、お母さんはもう覚悟を決めているのか揺るぎない答えだった。ただやっぱり親だから完全に切り捨てるわけでもないらしい。
 私は最初っからマヒナさんを疑っていたいたから、別に忍側であっても騙されたされとしててもどうでもいい。
 でもまぁ騙されていたとしたら、ほんの少しだけ可哀想だとは思う。

「それにしてもシノブの真の目的はなんなのかしらね? 魔王を復活させ世界征服するにしても、あの魔王はただこの世界を滅ぼしたかっただけなんでしょ?」
「最終的にはそうだった。魔族の民もお父様にしてみれは単なる駒でしかなかったから、あたしは見切りをつけ英雄候補達に合流したんだ」

 魔王は悪魔に魂を売り良心をなくしたことは聞いていたけれど、目的を初めて知りなんだかやるせない気持ちになった。
 自分の思い通りの世界を作りたいんじゃなくって、世界を滅亡させたかったんだ。つまり人間だけではなく同胞の魔族やそれからエルフを憎み世界に失望したってこと。
 一体魔王に何はあったんだろうか?

「魔王って実は可哀想だった人なんだね?」
「そうなのかも知れない。でもだとしたら魔王復活なんてしない方が良いんじゃない?」
「と言うより魔王の魂はセイヤに倒された時点で、消滅たのだから復活なんてありえない。聖女の死者蘇生の能力でさえ、いくらなんでも三十年前の死者を蘇らせるのは無理だろう」
「チュピ」

 静かに感想を呟く陽に私は頷き問うと、これまた新たな新情報が発覚しチョピも頷くもんだから、ますます忍が何をしたいのか分からなくなり全員して首を傾げる。

 忍はこの事実を知っているのだろうか?
 知らなかったとしたらただの間抜けでざまーみろと思うんだけれど、もし知っているとしたら……。

「私を器にして魔王復活したように見せかけて、自分が魔王になりすまし世界征服をしようとしている?」

 とんでもない怖ろしい予想がしてしまい、無意識に声になって出てしまう。

「確かにそれはありえるわね? だとしたらもしスピカが蘇ったことを知られたら、セイヤを倒し無理矢理手に入れようとするんじゃないの?」
「なっ、変なことを言わないでくれ」
「そうだ。例えそうだとしても俺は倒されない。星歌もスピカも俺が絶対護る」

 更なる追い打ちの予想をヨハンさんが面白半分で立てるから、パパは言うまでもなく激怒しお母さんは助手席から身を乗り上げヨハンさんをポカスカ無言で叩く。
 きっかけを作ったのは私なのに、私には何もお咎めがなかった。






 夜が明け日が昇り太陽が空高く昇った頃、川岸に辿り着きようやく休憩となった。今の所何もなく順調に進んでいる。

「パパ、大丈夫? 疲れたんじゃない?」
「まだまだ余裕だよ。それより腹が減っただろう? 父さんが魚を捕ってくるから、バーベキューコンロを出して待ってなさい」

 絶対に疲れているはずなのに、元気よくそう言い川まで走って行ってしまっう。
 見た目は元気そうで張り切っているけれど、十時間の長距離運転で休みなし。休める時に休まないと絶対に体に良くないと思う。

「セイヤはすぐ張り切り過ぎて、率先してなんでもやろうとする。極度なお人好しなんだよな? しかもそれを生き甲斐としている」
「そうなんだよね?」
「仕方がないから今夜はあたしの膝枕で子守歌を歌って寝かせよう」
「それはナイスアイデアだね」

 心配してるのはお母さんも一緒で、最早呆れ返っていた。
 だからなのか休ませる計画をすでに立てていて、そこはさすがお母さんだった。しかもその内容が微笑ましくって、パパにとっては一番の安らぎになること違いなし。
 ここに龍くんもいたら負担が半分に減って良かったのになと思うものの、ヨハンさんの思惑を聞いてしまったら賛成するしかなかったんだよね?

 護衛最中であったとしても、一度で良いから親子三人の時間を作らせたい。
 
 って。

 セレス姫もこれには大賛成で極力その時間を作りますと言って、太と黒崎の三人で作戦を立てていたそうだ。だからきっと今頃は何かしらの作戦を決行してるに違いない。

「私とヒナタちゃんで果実を採ってくるわね? この近くにストーゴとアップリーの木があったはずだから」
「それは実に楽しみだ。期待してる」
「気をつけてね」
「うん。いっぱい採ってくるね」

 と二人は言って、仲良く森に入って行く。何かと二人は仲が良いようで、ここん所二人行動が多くなってきている。
 ひょっとしてヨハンさんは私とお母さんの二人の時間も取れるように、陽とグルになって根回しをしているんだろうな?
 そんなことしなくてもこの一週間で私とお母さんはすごく仲良くなれたはず。

「じゃぁあたし達はセイヤの言いつけ通りバーベキューコンロを用意するか?」
「了解。そう言えばお母さん、ヨハンさんと二人だけで話をしてる?」
「セイカまであたしに気を使うな。心配しなくてもヨハンはあたしの親友だから、何かと相談には乗ってもらっている」

 私の詮索などあさ知恵ですぐに見抜かされてしまい、笑顔で交わされ心配ないと言われた。ちょっと意味深ではあるけれど、親友にしか相談出来ないことがあると知ってるからあまり気にはならない。

しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

王家を追放された落ちこぼれ聖女は、小さな村で鍛冶屋の妻候補になります

cotonoha garden
恋愛
「聖女失格です。王家にも国にも、あなたはもう必要ありません」——そう告げられた日、リーネは王女でいることさえ許されなくなりました。 聖女としても王女としても半人前。婚約者の王太子には冷たく切り捨てられ、居場所を失った彼女がたどり着いたのは、森と鉄の匂いが混ざる辺境の小さな村。 そこで出会ったのは、無骨で無口なくせに、さりげなく怪我の手当てをしてくれる鍛冶屋ユリウス。 村の事情から「書類上の仮妻」として迎えられたリーネは、鍛冶場の雑用や村人の看病をこなしながら、少しずつ「誰かに必要とされる感覚」を取り戻していきます。 かつては「落ちこぼれ聖女」とさげすまれた力が、今度は村の子どもたちの笑顔を守るために使われる。 そんな新しい日々の中で、ぶっきらぼうな鍛冶屋の優しさや、村人たちのさりげない気遣いが、冷え切っていたリーネの心をゆっくりと溶かしていきます。 やがて、国難を前に王都から使者が訪れ、「再び聖女として戻ってこい」と告げられたとき—— リーネが選ぶのは、きらびやかな王宮か、それとも鉄音の響く小さな家か。 理不尽な追放と婚約破棄から始まる物語は、 「大切にされなかった記憶」を持つ読者に寄り添いながら、 自分で選び取った居場所と、静かであたたかな愛へとたどり着く物語です。

最強お嬢様、王族転生!面倒事は即回避!自由気ままに爆走しますけど何か?

幸之丞
ファンタジー
結衣は来年大学進学を決めた高校生。 父親が幼いころに行方不明になり、母を助けるために幼いころから、祖父が営む古武道の道場のお手伝いをしていました。道場でお手伝いが出来たのは、幼い頃より、流鏑馬や剣術を祖父と父親が結衣に教えていたことが起因である。 結衣の腕前は、弓道で全国大会を制覇するほどである。  そんな、結衣は卒業旅行に仲の良い陽菜と卒業旅行に行くために、もう一つの飲食店でのアルバイトをしていた。 その帰り道、事故に合い転生してしまう。 転生先では、女王太子の長女、エリーゼとして生まれます。 女性が元首を継ぐことが多いこの国は、国を守るために防御結界があり、それは、精霊や妖精達が結界を張っています。 精霊や妖精が結界を張る条件として、聖女と呼ばれる女性たちが、聖なる湖という聖域でお祈りをして、祈りの力を精霊や妖精に捧げるのです。 その為、エリーゼは、聖女をまとめる筆頭、巫女の代表の斎王になり、女王になることを期待されるのです。 しかし、結衣は自分が国を治める能力はないと考え、どうにか女王にならないようにいろいろと考え行動に移すのですが… このお話しは、異世界転生・王族・聖女・精霊・恋愛・領地改革などの要素が絡み合う、女性主人公による成長と自立の物語です。

処理中です...